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愛人の掟 63

时间: 2019-10-18    进入日语论坛
核心提示:scene 24 恋の年越し今、ダンボール箱に囲まれながらこの原稿を書いている。お引っ越しなのだ。わたしは自他ともに認める
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 scene 24 恋の年越し

今、ダンボール箱に囲まれながらこの原稿を書いている。お引っ越しなのだ。
わたしは自他ともに認める引っ越しマニアで、同じ部屋に長く暮らすことが出来ない。家で仕事をしているせいもあると思うが、別に不満があるわけでもないのに何となく、環境を変えたくなってしまうのだ。だから二十三歳からひとり暮らしをはじめてこれまで引っ越すこと七回。平均一年ちょっとで引っ越していることになる。もちろん更新なんて一度もしたことがない。ここまで来るともう、立派な引っ越し病である。
引っ越しというのは、考えただけでもぞっとするくらい、とてつもないパワーがいる。苦手な書類や手続き関係がいっぱいあって面倒だし、第一、お金がかかる。今までこんなに引っ越しをしていなければもうちょっと貯金があっただろうに。絵に描いたような引っ越し貧乏である。それでもわたしは引っ越しが好きなのだ。ふだん活動的とか積極的とかいう言葉とは縁のない生活をしているくせに、引っ越しだけは好きだ。
安住型の人には絶対理解出来ないと思うが、引っ越しには、ほかにたとえようのない魅力と麻薬性がある。それは、その部屋に住んでいた年月を、ひとりそっと振り返る絶好の機会だからだ。住んでいるうちに知らず知らず増えた荷物を整理するとともに、その部屋にまつわる様々な思い出に思いきり浸ることが出来る。そう、年末とかに「ああ、今年も終わりだなあ、今年はどんな年だったんだっけ」と振り返る、あれに似ている。私の場合はいつも年末ばたばたして気がつくとお正月、というかんじだから、その代わりが引っ越しになっているのだろう。
だから今流行りの「おまかせらくらくパック」みたいな引っ越しは駄目で、全部ひとりできちんと荷造りをしないと気がすまない。服や本や雑誌、書いた原稿、撮った写真、もらった手紙やカードにいたるまで、ひとつひとつの思い出をえいっと気合いを入れて整理する。大切なものは大切にしまい込み、そうでないと判断したものは潔く捨てる。これを何日も何日もくり返していくうちに、今の自分が見えてくるのだ。
さて現在の部屋は、一昨年のクリスマスに越してきたから二年弱、わたしにとっては長いほうだった。この部屋に住んでいた間は厄年|真《ま》っ直中《ただなか》だけあって仕事ではまさに転機、つらいことも嬉しいこともいっぱいあった。初めての長編小説を書き上げたのもここだし、この連載を書きはじめたのもここだった。そして、この部屋で育くまれた恋は大きく成長して、無事、次の部屋まで持ち越しとなった。とりあえず、めでたし、めでたし。
これから楽しい冬休みが待っているという人も、寂しい年末年始を耐えなければならない人も、一年の終わりはじっくり今年の恋愛を振り返って、もう一度今の自分を見つめてみる絶好の機会だよ。別にわざわざ荷造りまでしなくても、彼との楽しいデートや幸せな夜、また、死んでしまいたいくらいせつない涙の思い出などが蘇《よみがえ》ってくるはずだ。そのどちらもちゃんと冷静に受け止めて、この恋が本当に自分にとって大切なものなのか考えてみてほしい。
ここで大事なのは、頭で考えるのではなく、心と身体で感じること。理性や常識をとっぱらって、純粋に恋愛と向き合うこと。そこでもし迷ってしまうぐらいなら、潔く捨ててしまおう。たとえばそれがつらい恋でも、やっぱり彼が必要と結論したら、もう泣かないで。明るく笑顔で新しい年を迎えに行こう、ね。
わたしもこれまで数々の引っ越しを機に、いろんな恋を見つめ直してきたような気がする。だけどわたし、新しい部屋に引っ越す度に「これが独身最後の部屋、ここを出るのはヨメにいくとき」と心に誓うんだけど、残念ながらまたも果たされなかった……今度こそ。
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