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暗鬼08

时间: 2019-11-23    进入日语论坛
核心提示:     8「待って、待って、待って」息をついだ瞬間、目の前で知美がひらひらと手を振った。法子は、息を吸い込んだまま、正
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     8
「待って、待って、待って」
息をついだ瞬間、目の前で知美がひらひらと手を振った。法子は、息を吸い込んだまま、正面から知美を見つめた。
「落ち着いてよ、法子の言ってること、めちゃめちゃよ」
法子は苛立《いらだ》ち、泣き出したい衝動に駆られながら、恨めしい気持ちで「だって」と顔をしかめた。だが、もう一度何か言おうとする前に、知美はさらに「待って。ね?」と言う。そして、小さなポーチから煙草とライターを取り出すと、わざとらしいくらいにゆっくりとした、慣れた手つきで煙草を取り出した。
「だって──」
「だから、待ってったら」
虎《とら》ノ門《もん》の、ビルの地下にある喫茶店だった。法子は、斎場で話しかけてきた女を適当な言葉ではぐらかして、その足で駅に急ぎ、朝から決意していた通りに知美に連絡を取った。結婚前には、やっかみ半分とも取れる感想を述べていた彼女は、職場にかかってきた突然の電話に驚いた様子だったが、それでも法子が会いたいと言うと、あまり長い時間はとれないが、と言ってくれた。
「気持ちは分かるけど、法子、自分が何を言ってるか分かってるの? あんたの言ってること、ただごとじゃないのよ」
地下鉄の何番の出口から外へ出て、何銀行の角を曲がり、どういう看板の出ているビルの脇《わき》の階段を降りれば良いか、彼女は電話口で要領よくてきぱきと指示してくれた。それに従ってようやく見知らぬ街《まち》にたどりついた法子は、そこに自分とはまるで縁のなかった生き方をしているたくさんの若い女性たちを見た。
「つまり、こういうこと? その、氷屋の一家は、実は無理心中なんかじゃなくて、法子の旦那《だんな》の家族が殺したっていうことで」
法子は「しいっ!」と鋭い音を歯の隙間《すきま》から出し、慌てて周囲を見回した。だが知美は「分かってる」と言うように小さく頷き、表情を変えずに言葉を続ける。そんな仕草も、いかにもこの街に馴染《なじ》んでいるようで、法子はつい気後れしそうになった。
「その家族の中でも、九十八歳のひいおばあちゃんが特に怪しいっていうことなんでしょう? 全ての指示はその人が出してて、しかも、麻薬だか覚醒《かくせい》剤だかの密売をしてる可能性がある」
法子は下唇を噛《か》みしめたまま頷いた。知美はそれを確かめるように頷き返す。
「──その上、旦那の妹と、十八になる知恵後れの弟は、姉弟以上の関係だって。そういうこと?」
再び健晴の寝姿が蘇《よみがえ》る。全裸で、二組の布団にまたがって。そして、深夜の廊下で耳にした家族の声と「法子は知らない」という言葉。つい昨晩のこととも思えないくらい、それらの印象は朧気《おぼろげ》で、ひどく現実離れした曖昧《あいまい》なものだという気もする。
「本当なの?──本当だとしたら──どういうところに嫁にいったのよ、もう」
煙草の煙をふうっと吐き出し、知美は小さく舌打ちをした。それから少しの間、親指の爪を噛んで、しきりに考えをまとめようとしている。その仕草は、法子が机を並べて勉強していた高校の頃と変わらなかった。
「──証拠は?」
顔を上げた時、彼女は落ち着いた顔で言った。法子は彼女のコンタクトレンズを入れた瞳《ひとみ》に見つめられ──何しろ、度の強い眼鏡をかけている彼女ばかりを、法子はずっと見てきている──力なく頭を振った。
「その──ひいおばあちゃんのことと、妹達のことは、この際置いておきましょうよ。一つずつ考えなきゃね」
コンタクトレンズを入れていると、こんなに瞳は煌《きらめ》くのだろうかと、法子はつい無関係なことを考えた。それくらい、彼女の瞳はきらきらと輝いて、何かとても素敵なことを考えているようにさえ見える。法子はふいに、奇妙な淋しさが湧《わ》いてくるのを感じた。
「とにかく、いちばん問題なのは、その氷屋? 無理心中した一家のことよ。もしも本当なら、法子の旦那の家族は、一家|揃《そろ》って人殺しっていうことになっちゃう」
背筋が冷たくなる。法子は、張りつめた神経を休める方法も分からないまま、さっきから数え切れないくらいに深呼吸を繰り返していた。寝不足の上に、この暑さの中を動き回ったせいか、どくどくと鼓動が速まっていた。
「──確かに聞いたのよ。昨日の夜中、皆でひいおばあちゃんの離れに集まって、警察も手を引いたからとか、私には気付かれてないからとか、相談してたの!」
「でも、警察は無理心中だって言ったんでしょう? それで落ち着いたんでしょう?」
「そうだけど!」
知美は憂鬱《ゆううつ》そうに口をとがらせ、ちらりと周囲に目配せをした後で「落ち着いて」と囁《ささや》いた。
「じゃあ、どうして? どうして、法子の旦那の一家が、その氷屋を殺す必要があるの?」
「──分からないけど」
「普通に考えて、ねえ。家を貸してやってて、しかも家賃を滞納してる一家を、大家が殺して、何の得がある? 生命保険でもかけてあったとか?」
「────」
その辺りになると、法子には何も分からない。だが、法子には確信があった。人々が寝静まる時間に、いつもは八時過ぎに休むはずのヱイまでも起きていて、一家全員が揃って何かを相談するなんて、それだけでも普通のことではない。法子さえいなければ、彼らはもっと早くそのことを話せたはずだ。だが、法子に知られたくなかったからこそ、彼らはあんな時間に起き出したのに違いない。
「いい人達なんでしょう?」
「そうよ──いい人達だわ──よすぎるくらい。明るくて優しくて楽しくて」
「法子の目から見て、そういう人達が、皆で人殺しなんかすると思う?」
そう言われてしまえば、法子はノーと言わざるを得ない。いや、出来ることならはっきりと、ノーと言いたかった。この三ヵ月、法子は一日も早く彼らに馴染むことばかりを念じてきたし、それは、考えていたよりもずっと楽しく、素敵なことに思われていた。それくらい、法子は和人の家族が好きだった。
「あんた、疲れてるんじゃないの? そうじゃなかったら、久しぶりに実家に帰って、おばさん達に会って、里心がついたとか」
「そんなんじゃないわ。私だって、出来ることなら信じていたいのよ」
法子は泣くに泣けない気持ちで知美を見た。恥ずかしい話を聞かせてしまっているのかも知れない、自分の惨めさを見られるだけかも知れないと思う。だが、今、この広い東京で信じられそうな相手は、目の前の知美以外にいないのだ。
「本当にね、この三ヵ月間、嘘《うそ》みたいにうまくやってきたのよ。大家族に嫁ぐなんて大変に決まってるって、皆に言われたけど、こんなに素敵じゃないかって、私、嬉しかったの。それなのに、もう、何が何だか分からなくなりそうで──」
つい、俯いてしまうと頭の上で知美のため息が聞こえた。それから「だったら、信じたら」という声がした。
「警察だって馬鹿じゃないのよ。ちゃんと調べた上で、無理心中だって断定したんでしょう? 法子が家族の内緒話を聞いた程度で疑うよりも、ずっと確かなはずよ」
知美の声は落ち着いて、冷静だった。法子は相変わらず速まっている鼓動を耳の奥で聞きながら、彼女の冷静さを羨《うらや》ましく思った。
「いい? 完全犯罪となったら、人一人殺すのだって、そう簡単じゃないと思わない? それを、一家皆殺しにするなんて、毒薬でも飲ませない限りは──」
「それよ! そうしたら、大ばばちゃん──ひいおばあちゃんは、何か怪しい物を売りつけてる可能性があるってことになったわけでしょう? ほら、つながるじゃない。氷屋は、その秘密を握ってたのよ、それで、口を封じる為に──」
知美は難しい表情で考え込み、視線を宙に浮かせて一人で頷いている。それから、一つため息をついて、小首を傾《かし》げて法子を見た。
「でも、氷屋の死体は解剖してるはずでしょう? 死ぬ毒を飲ませたっていうんなら、解剖して分かるはずじゃない。第一、死因だってガス心中だったんだし」
「────」
「しっかりしなさいよ。どうも、あんたの言うことの方がおかしい気がするわ。どうかしちゃったんじゃないの? 何の不満もないお家にお嫁にいって、幸せぼけ?」
法子は、情けない気持ちで知美を上目遣いに見た。彼女は相変わらずきらきらと輝く瞳で、幼い子をたしなめるような表情でこちらを見ていた。
「どうしてもおかしいと思うんなら、確固たる証拠を掴《つか》まなきゃ。もしも、法子の言う通り、ひいおばあちゃんや妹さんたちがおかしいっていうんなら、たとえば、秘密を握った氷屋に、それをネタに強請《ゆす》られてたっていうことなんか、考えられるとは思うわね。だから殺されたっていうんなら、説明もつく。でも、だったら、その秘密を探るなり、証拠を掴まないことには、ね? いい加減な当て推量で警察になんか行ったら、それこそ大変なことになるわよ」
知美の言うことは、いちいち筋が通っている。それは、法子も頭ではよく分かっていた。
「第一、法子の勝手な誤解だったら、どうするの? 大切にしていたお嫁さんに疑われたなんていうことになったら、せっかくうまくいっていたものが、全部駄目になっちゃうのよ」
だが、頭では分かっていても、法子の本能が告げているのだ。危ない、おかしいと、あの家は何かが変だと告げている。
「──信じてくれないの?」
絶望的な気分で知美を見ると、彼女は柔らかく微笑んで軽く頭を振った。
「だから、そうじゃないってば。慌てたら駄目っていうことよ。もしも、法子がもう少し調べて間違いないって思ったら、その時は私も協力する。氷屋のことでも、ひいおばあちゃんのことでも、もっとはっきり分かったら、その時は二人で考えよう、ね?」
「調べてって──どうすればいいのか、分からないよ」
「とにかく、観察することよ。一つ屋根の下に住んでるんだもの、おかしいところがあれば、すぐに気がつくはずよ。向こうがどんなに隠そうとしたってね」
結論を急ごうとする心は、疲れも手伝ってぐずぐずと崩れ始めていた。和人が、公恵や武雄が、ふみ江やヱイまでが、皆で一緒に本庄屋を殺害するなんて、所詮《しよせん》は馬鹿げた妄想かも知れない。あまりにも現実離れし過ぎている。
「とにかく冷静になること、ね?」
最後に、知美はそう言って微笑んだ。法子は力なく頷き、必ず近いうちに連絡をすると約束させられた。もう一時をだいぶ回っていた。昼休みを利用してきたのだという知美は、腕時計を見てから「また怒られちゃう」と笑って会社に戻っていった。
──冷静になること。証拠を掴むこと。
初めて利用する駅には、不思議な匂《にお》いが満ちている。地下鉄特有の、埃《ほこり》と鉄錆《てつさび》と湿気と、それに乗り降りする人々の体臭や疲れ、人々が靴音を響かせた年月などの全てが混ざっているような匂いだった。法子は、生ぬるい風に吹かれながら切符を買った。まずは銀座《ぎんざ》線を赤坂見附《あかさかみつけ》で丸《まる》ノ内《うち》線に乗り換え、新宿に行く。そこから中央線に乗れば、やっと小金井に帰り着くというわけだ。
──一つ屋根の下にいるんだから。きっと気が付く。
ついさっき、知美に言われたことが頭の中で渦巻いていた。けれど、もしも法子の懸念が的中しているとすると、法子は殺人者に混ざって生活しなければならないということだ。目の奥が痛む。瞬きをすると、涙が目に沁みた。
──とんでもない家に嫁いでしまったんだろうか。
今日、知美はそんなことは言わなかった。だが、法子はいつ彼女が「だから、言ったじゃない」と言いはしないかと、内心でひやひやしていた。自分がひどく愚かで惨めに思えてならなかった。
電車は、生ぬるい空気を巻き上げながらホームに滑り込んできた。法子は人に背を押されながら、混雑する電車に乗り込んだ。さらに赤坂見附で電車を乗り継ぎ、プラットホームの反対側に滑り込んでくる丸ノ内線を待つ。
──証拠を握るまで、私はあの家から出られないんだろうか。
だが、何の証拠を握れというのだろう。ただでさえ、法子の頭は既に相当混乱している。電車を待つ人の最前列に並んで、法子は鈍く光る線路を眺めていた。ヱイの力、綾乃と健晴のこと、本庄屋のこと、全てが絡み合って、まるで整理がつかない。
新宿に着いたら、そこから中央本線に乗って、そのまま実家まで戻ってしまいたい。つい、そんな気にもなった。頭の片隅には、和人の柔らかい笑顔が思い浮かんでいる。こんなに愛しく思っている、こんなに好きな笑顔の裏に何が隠されているのかと思うと、もう絶望しかないとさえ思った。
──でも、誤解だったら? 要らないいざこざを起こすだけ。そんな馬鹿げた誤解をする嫁を、あの人達は許してはくれないかも知れないのよ。
荻窪《おぎくぼ》行きの丸ノ内線が滑り込んできた。法子は一つ息をつき、顔を上げた。結局は、あの大きな家に帰るより他にない。知美の言う通り、確固たる証拠を掴《つか》むより他にないのだ。
減速し始めている電車に向かって、一歩踏み出そうとした時だった。突然、強い力が背中を押した。
「────!」
どん、という衝撃を感じた瞬間、身体のバランスを崩し、法子は思わず悲鳴にならない声を上げた。心臓が縮み上がり、次の瞬間には張り裂けそうになった。頬《ほお》にかかった髪をかき上げる余裕もなく振り返ると、目の前に綾乃がいた。
「驚いた。喪服の人がいるなぁと思ったら、お義姉《ねえ》さんなんだもの。どうしたの? お葬式は?」
綾乃は、不思議そうに小首を傾げ、にこにこと笑っている。法子は頭のてっぺんから汗が吹き出すのを感じながら、その笑顔を見ていた。
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