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歌月十夜05

时间: 2019-11-27    进入日语论坛
核心提示:*s5□遠野家1階ロビー そうだな。ちょっと周り道になるけど、寄っていって一緒に登校するのも悪くない。まあ、そんなシーンが
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*s5

□遠野家1階ロビー
 ……そうだな。ちょっと周り道になるけど、寄っていって一緒に登校するのも悪くない。
まあ、そんなシーンが秋葉や有彦に見つかったらゴングが鳴ってしまいそうだけど、その時はその時なのだ。

□屋敷の門
 秋葉より一足先に屋敷を出る。
【翡翠】
「志貴さま、忘れ物はありませんか?」
見送りに来てくれた翡翠が、珍しくそんな事を尋ねてきた。
「忘れ物……? いや、準備は万全だと思うけど」
一応鞄を開けて中を確認する。
筆記用具と学生証、今日の授業分のノートと、ちゃっかりナイフを忍ばせているあたり自分らしい。
「忘れ物はないみたいだ。それじゃ行ってくるよ。もしかしたら帰りは遅くなるかもしれないから、その時は心配しないでくれ」
【翡翠】
「はい、文化祭の準備ですね。お泊まりになられるようでしたらお電話をいただければ助かります」
「オッケー。それじゃ行ってくる……!」
【翡翠】
 丁寧に送り出してくれる翡翠に背を向けて、いつもの坂道へと駆け出した。
□アパート
 余裕を持って先輩のアパートに到着した。
「シエル先輩、ちょうど朝ごはんってところかな」
 
 コンコン、とドアをノックする。
「はい、どちらさまですかー?」
すぐさま丁寧で元気のいい声が返ってくる。
「遠野です。ちょっとお邪魔しますけど、いいですか?」
「いいですよー。いま手が離せないんで勝手に入ってきてくださーい」
調理中なのか、先輩の声は台所から聞こえてくる。
「それでは、ちょっくらお邪魔しまーす」
□シエルの部屋
 先輩はキッチンで朝食の支度をしている。
なんでも昨夜は遅くまで起きていたらしく、今朝は寝坊してしまったとのコトだ。
 がらり、と戸を開けて先輩がやってきた。
 
「おはよう遠野くん。今日は一緒に遅刻すると思ってたのに、遠野くんったら早いんですね」
「え? あ、はい、なんか早くに目が覚めちゃったもんで、今日はいつもより余裕があるんです」
「そうなんですか。すごいなあ、わたしなんてもう眠くて眠くて、今日は学校休んでもいいかなー、とか思ってたところです」
 小さな手で口元を押さえて、ふわぁ……、と可愛いあくびをするシエル先輩。
 ……先輩は今でも夜のパトロールを続けている。
一度吸血鬼に汚染された街を完全に浄化するまでは三ヶ月から一年を必要とするそうで、先輩は一人でこの街を任されているのだそうだ。
「先輩、そんなに眠いなら少し休んで行けば? 俺と違って先輩は大切なコトをしてくれてるんだし、少しぐらい学校を休んでもバチは当たらないと思うけど」
「そのつもりだったんですけど、もちょっと頑張ることにしました。文化祭の準備もありますし、遠野くんの顔を見たら元気が出ちゃいましたし。……そうですね、一粒で五キロメートルぐらい走れちゃうぐらい元気が出ました」
にこっ、と朝日にも負けないぐらいの笑みを浮かべる先輩。
……う、ちょっと、朝からそれは反則だって。
□シエルの部屋
「……まあ、こんな顔で元気がでるんだったらどうぞ。言ってくれればいくらでもやってきます、はい」
照れ隠しに頬を掻く。照れくさいので目線も先輩ではなく天井に向けていた。
「あ、けど先輩って生徒会の手伝いしてるんだっけ。運営委員長任されたっていうけど、ほんと?」
【シエル】
「はい。ほんとは役員にはなるべきではないんですけど、生徒会の出し物に参加するには役員でないとダメなんです。だから無理やり役員に登録されちゃたんです」
……生徒会の役員でないと出し物には参加できない……?
「———あ、そっか。たしかに正体不明、疾風のようにやってきて疾風のように去っていく人を生徒会の出し物に参加させられない。有志っていう曖昧な立場じゃ生徒会の一員とは思われないってコトか。
たしか生徒会長の槙先輩だっけ? シエル先輩のことすごく頼りにしてるんだってね」
【シエル】
 あれ? 先輩、急に塞ぎこんじゃった。
「先輩、槙先輩となんかあったのか?」
【シエル】
「え……? いえ、別に槙会長とは何もありませんよ。ただ、会長の方からお付き合いしたい、と再三にわたってお誘いを受けただけです」
————————んにゃ?
「———お付き合い、したい、って、誰が、誰に」
「はあ。槙会長が、わたしとお付き合いしたいそうなんです」
「な————なんだってぇぇぇぇぇえ!?」
がばちょ、と勢いよく立ちあがる。
「せ、せせ先輩っ……! それっ、それで槙先輩にはなんて答えたんだ……!?」
【シエル】
「そんなの決まってるじゃないですか。わたしには普通のお付き合いをする時間はありませんから、きっぱりと断っています」
「—————————」
はあ、と胸を撫で下ろす。
そっか、断ってます、か。
それなら安心だ……って、なんで過去形じゃなくて現在進行形なんだ?
「あの、先輩」
「はい。申し込まれるたびにきっぱりと断るんですけど、会長は気にしていないようですね。今では挨拶代わりにデートしよう、と言われる毎日です」
「い、言われる毎日って、先輩はなんとも思ってないんだろう!? なら槙先輩、ちょっとしつこいんじゃないのかソレ……!」
「そうなんですけどねー。そのうち、会長の前向きな所って凄いなあって感心しちゃったりします。そうなるとわたしも人の子ですから、“はっきりとしてくれないわたしが好きな人”より“はっきりとしているわたしを好きな人”を憎からず思ってしまうのも人情かな、と」
「—————————!」
しれっと、先輩はとんでもないセリフを口にする。
「…………先輩。えっと、その」
「はい? なんですか、遠野くん」
「…………今度、どこかに遊びに行きましょう。出来る範囲で、先輩の好きなところへ連れてきますから」
あー、すっごく顔が熱い。
先輩はそんな俺をニマニマしながら見上げている。
【シエル】
「はい、よろこんで。けどなんか悪いですねー、催促しちゃったみたいで」
「……………………………いじわる」
ぼそりと呟く。先輩は聞こえないフリで笑みを浮かべたままだ。
……あーあ。こうなったらまた、秋葉の目を盗んで日雇いのバイトをしなくちゃいけないな……。
 
□シエルの部屋
————っと、そんな話をしているうちに時間が押し迫ってきた。
「先輩、そろそろ出ないと学校に間に合わない」
鞄を持って先輩に呼びかける。
【シエル】
「うーん、それは困りましたね。わたし、まだ朝ごはん食べてないです」
「————————」
言われてみればそうだった。
……って、俺がやってきたから朝食どころではなかったのか。
「ごめん先輩、やっぱり邪魔しちまった。……けどどうする? 朝ごはん、抜いていく?」
【シエル】
「それは駄目です。わたし、朝ごはん食べないと倒れますから」
……いや。真顔でそう言われても。
【シエル】
「あ、そうだ。せっかくだから遠野くんも食べていきませんか? 朝ごはん、ちょっと作りすぎちゃったんです」
「……先輩。それはつまり、俺にも遅刻しろっていうコトですか?」
【シエル】
「はい、二人一緒に遅刻していきましょう」

……う、その流し目も反則だってば。
くそ、このまま先輩の誘惑に押しきられていいものなのか……!?
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