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歌月十夜06

时间: 2019-11-27    进入日语论坛
核心提示:*s8□アルクェイドの部屋【アルクェイド】「ねえ志貴、もっとここにいようよ。学校って毎日行かなくてもいいトコロだって言うし
(单词翻译:双击或拖选)
*s8

□アルクェイドの部屋
【アルクェイド】
「ねえ志貴、もっとここにいようよ。学校って毎日行かなくてもいいトコロだって言うし、人を起こしておいて出て行っちゃうのはひどいよ」
「————う」

確かにアルクェイドを起こしておいて、それじゃあ、とすぐに学校に行くのは人としてどうかと思う。
……ま、しょうがないか。今朝はアルクェイドも調子が悪そうだし、一時間ぐらい遅刻してもなんとか誤魔化せるだろう。
「そうだな。それじゃもうちょっとだけお邪魔するコトにするか」
【アルクェイド】
「そうこなくっちゃ! うん、俄然目が覚めてきた感じ!」
 えへへ、と子供のような笑みを浮かべてガッツポーズをとるアルクェイド。
「……まあ、目が覚めてきたのはいいけど。さっきさ、何か気になるコト言ってなかったかアルクェイド」
【アルクェイド】
「え? 気になるコトって、なに?」
「学校は毎日行かなくてもいい、とかなんとか。俺、そんなコト言った覚えはないんだけど」
【アルクェイド】
「そりゃあ志貴にはないでしょうね。学校ってのは一年間で三分の二だけ出ればいいんだ、って言ってたのは志貴じゃないから」
「そう。ならいいんだけど……問題はな、そんな話を誰から聞いたんだってコトだ」
 先輩がそんなコト言う筈ないし、秋葉に至っては欠席を一日だって許しはしないだろう。
そうなると、もしかしてとは思うんだけど———
【アルクェイド】
「そんな事してないから安心して。わたし、無闇に志貴の学校には入らないし、志貴の友人に話しかけたりしてないから」
こっちの考えを先読みしてアルクェイドは先手を打つ。
ともあれ、最悪の事態——学校一悪質な性格で、アルクェイドのコトを知ったら一時間足らずで学校中に言いふらすようなお祭り男とアルクェイドが知り合いになる、という事——は避けられているようだ。
「……良かった。有彦と話していたらどうなるかと思った。けどヘンだな。それじゃ誰にそんなコトを聞いたんだよ、アルクェイド」
【アルクェイド】
「簡単だよ。日中街を歩いてたらね、志貴の学校の制服を着ていてる男の子がいたんだ。でも昼間っていったら学校の時間でしょう? ちょっと不思議に思って、どうして学校に行かないのって訊いてみたんだ」
「—————————」
一瞬、とてもよくないシーンを、頭の中で再現してしまった。
「その子、ちょうど志貴と同い年ぐらいだし話しかけてもいいかなって。そうしたら学校の三割は有休なんだって教えてくれたんだ。……えーっと、他にも“お姉さんほどの美人をほっといて授業受けてるヤツなんざ男のカミカゼにも置けない”とか言ってたかな」
うわあ。そんなたわけたコトを初対面の相手に言えて、かつ、昼間っから堂々と制服で街を歩いているなんて人物像が特定できすぎる。
「——そうか。で、そいつ他になにか言ってた?」
【アルクェイド】
「んー、志貴によろしくって。そのまま別れたんだけど、裏切り者めー、とか叫びながら走って行っちゃった」
「—————————」
……ああ、また頭痛のタネが一つ増えた……。
 
□アルクェイドの部屋
カチン、と時計の針が九時に指し変わった。
ホームルームは終わり、一時限目がとっくに始まっている時間。こうなったら午前中の授業は半分ほど諦めたほうがサッパリする。
「あ、そうだ!」
 
 唐突に後ろからアルクェイドが首ったまに抱きついてきた。
「うわ、あぶなっ! あのなアルクェイド、人が飲み物を飲んでる時はそうゆうコトはしないの!」
【アルクェイド】
「ふんだ、わたしを放っていて一人でくつろいでる志貴が悪いんでしょ」
「一人でくつろいでるって、たんにお茶してただけじゃないか。そんなコトでわざわざタックルかましてくるのかおまえは」
「志貴が構ってくれないから実力行使に出たんじゃないっ。わたしがお腹空かしてるっていうのに、一人で美味しそうにお茶を飲んでるなんてずるい!」

むー、とすぐ真横から拗ね拗ね視線を向けてくるアルクェイド。
……まあ、こういうのも、すごく悪くない。
「ああもう、何してもご不満なんだなおまえは。いいよ、分かった。なんでもしてやるから何してほしいか言ってみろ」
【アルクェイド】
「ほんと? なら朝ごはん作って、朝ごはん!」
首に絡ませていた手を離して、ぴょん、と飛び跳ねるアルクェイド。
「……朝ごはんって、朝ごはん?」
「うん、前に志貴が作ってくれたやつ! アレ、もう一度食べたいなって」
今にも爆発しそうな喜びようからしてアルクェイドは本気だ。
 ……それはいいんだけど、あんなモノで本当にいいんだろうか?
確かに以前アルクェイドが食べたい、というので作った事があるけど、アレがそんなに喜ばれるものだなんて思えない。

「———————————」
返答が浮かばず、とにかく立ちあがった。
「—————分かった。それじゃ台所、借りる」
かろうじてそれだけ口にして、キッチンへと足を向けた。
 
「はい、おまたせー」
ごとん、とテーブルにどんぶりを置く。
「わーい、いただきまーす!」
行儀良く両手を合わせて、アルクェイドは箸を手にとった。

「うん、おいしー!」
ご機嫌で箸を進めるアルクェイド。
そういう風に喜ばれるとこっちも嬉しくなってくる。
「そっか、気に入ってもらえて良かった。今日のはちょっと手を加えたんだ。この前のは出来合いだったけど、今日は時間があったし、材料も揃ってたからね」
「やっぱり? なんかこの前のより美味しいって気がしてたんだー♪」
つるつると麺を口に運ぶアルクェイド。
「基本は同じなんだけど、この前のより味を濃厚にしてみました。なんか物足りなさそうにしてたからさ、この前は」
「違うよ、この前はもっと食べたかったなって思ってただけ。なんかね、これって志貴が作ってくれたんだなあ、と思ってるうちに半分ぐらい食べ終わっちゃってて、ちゃんと味わえたのはあとの半分だけだったの。だから失敗したなあって後悔してたんだよ」
つるつるつる。
そんなコトを話しながらもアルクェイドは箸を休めない。
……ほんと、よっぽど気に入ってくれたみたいだ。
「——————まいったな、俺って元気のいい食べっぷりに弱いのかもしれない。そういう風にされると毎日朝食を作りにきたくなって、困る」
「困ってないで作りにくればいいのに。わたしね、志貴がごはんを作ってくれるなら朝だってちゃんと起きてるよー」
麺を食べ終わったのか、アルクェイドはどんぶりを両手で持ってスープを飲む。
……なんていうか、すごい絵だ。
「ん? なに、どうしたの志貴? なんかびっくりしてるみたいだけど」
「そりゃあびっくりするよ。仮にもお姫さまともあろう者がさ、なんだって中華どんぶりをこう、ぐびっと口に運んでるんだろうなーって」
「……………」
あ。アルクェイドが、ガラにもなく頬を赤くして恥ずかしがってる。
「……だって、志貴はこういうふうにしてたじゃない。だからわたしもこういうふうに飲みたかったの!」
どん、とどんぶりがテーブルに置かれる。
開き直っているんだか、それとも照れ隠しなのか、アルクェイドはそっぽを向いてしまった。
「う………これはこれで、かわいいかも」
聞こえないように呟く。
思い返してみれば、アルクェイドには前からイメージが合わない組み合わせが多かった。
ファーストフードでハンバーガーを食べたり、公園で自販機の缶ジュースを飲んだり、と。

「——————あ、れ?」
と。唐突にアルクェイドの様子が変わった。
とても辛そうというか……えっと、泣いてるんですけど……?
「し、志、貴……ちょっと、訊く、けど」
うう、と悲しそうに声をあげる。
「な、どうしたんだアルクェイド!? やっぱり朝から起きてるのは辛いのか……!?」
「そうじゃなくて、これはどんな材料を使ったの?」
小鳥のように首をかしげる。……なんか、泣き顔とマッチして妙に味がある。
「どんな材料って、当たり前の物しか使ってないけど」
とりあえず使った材料をかたっぱしから説明する。
アルクェイドは青い顔で俯いていたが、最後に俺が口にした食材を聞いて、がくん、と床につっぷしてしまった。

「アルクェイド……!? おい、どうしたんだよアルクェイド!」
「………………きゅ〜」
ぐったりと横になってしまうアルクェイド。
目も開けず、悪夢にうなされたように何かブツブツと呟いているようだ。
「……?」
なんだろう、と耳を寄せる。
————と。

「……やめてー。にんにくはやめてー。お願いだからやめてー。アレはおいしくないのー……」
 そんな、どこまで本気なんだか判らないうわごとを、ずっと繰り返しているだけだった。

□アルクェイドの部屋
「……それじゃ俺、そろそろ行くけど……」
ベッドで横になったアルクェイドに声をかける。
「……………………」
アルクェイドは答えずに、ただじーっ、と猫みたいな目でこちらを睨んでいるだけだった。
猫みたい、というのはアレだ。
こっちに関心があるんだかないんだか、敵意があるんだか何も見てないんだか、感情があるんだかないんだか判らない、そんな目だ。
「……ごめん。次からは気をつけます」
「………………………」
アルクェイドは猫化したままだ。
うう、背中に何十という剣を刺されるような重圧を受けながら、いそいそとアルクェイドの部屋を後にした。
……というか、残っていたらアルクェイドに何されるか分からないので、早々に退散するしかなかった。

□マンション入り口
 ……さて、気を取り直して学校に向かおう。
時刻は十時になったばかり。
今からならギリギリ三時限目に間に合うだろう————
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