□校舎前
中庭に寄っていこう。
時間もまだあるわけだし、たまには中庭で朝の空気を堪能するのも悪くない。
時間もまだあるわけだし、たまには中庭で朝の空気を堪能するのも悪くない。
□中庭
予想通り中庭の空気は素晴らしかった。
清涼な朝の匂い、とでも言うのだろうか。
登校してくる生徒の大部分は正門から校舎に直通なので、校舎を挟んで正反対にある中庭には人気というものがない。
静かな空間。
それでいて学校の朝の喧騒が伝わってきて、なんとなく子供を見守るお父さんお母さんの気持ちが分かったり分からなかったり。
清涼な朝の匂い、とでも言うのだろうか。
登校してくる生徒の大部分は正門から校舎に直通なので、校舎を挟んで正反対にある中庭には人気というものがない。
静かな空間。
それでいて学校の朝の喧騒が伝わってきて、なんとなく子供を見守るお父さんお母さんの気持ちが分かったり分からなかったり。
……と、そんな気の抜けたコトを考えていると、近くの茂みから何か出てきた
「—————ん?」
【レン】
「……猫だ。おーい、おまえもご同行か? なら一緒にまったりしよう、まったり」
ひょいひょいと手招きをする。
ひょいひょいと手招きをする。
【レン】
黒猫は興味なさそうに顔を背けて座りこんでしまった。
「……む。なかなか気難しいですな」
まあ、猫っていうのはそういうものだ。
こっちが求愛行為をすればするほど逃げていくような生き物だから、それを嘆いても始まらない。
「んじゃあまあ、我慢比べということで」
ベンチに座ってぼんやりと時計を眺める。
何事も無理強いはよくない。朝の中庭、毛並みのいいお嬢様みたいな黒猫が側にいてくれるだけで幸運なんだ。これ以上贅沢を言ってはバチがあたろう。
黒猫は興味がないかわりに不快でもないのか、ちょこんと道に座ったままでこちらを見つめている。
……なんか。
その趣きは、見ているだけで心が和んでくる。
「……毛並みいいなあ、おまえ。なんかふわふわしてるのにしっとりしてるっていうか」
うう、触りたいっっっ!
触りたいけど、ここはやっぱり我慢我慢。
せっかくお互いのんびりしているんだから、その時間を壊しちゃいけない。
こっちは道に座った黒猫を眺めて、
あっちはベンチに座った人間を眺めている。
それだけで十分といえば十分すぎるってものじゃないか。
「———お、もう時間か」
黒猫は予鈴に驚いたのか、最後にチラッとこっちを見てから茂みにもぐってしまった。
「んじゃあまあ、こっちもこっちで自分の巣に戻りますか」
いそいそとベンチから立ちあがる。
自分の巣とは、言うまでもなくクラスメイトたちがいる二年三組の教室だ。
黒猫は予鈴に驚いたのか、最後にチラッとこっちを見てから茂みにもぐってしまった。
「んじゃあまあ、こっちもこっちで自分の巣に戻りますか」
いそいそとベンチから立ちあがる。
自分の巣とは、言うまでもなくクラスメイトたちがいる二年三組の教室だ。