□教室
……こうなったら、茶道室に行って先輩にお弁当を分けてもらおう。
行く前に購買で菓子パンを二つ買うだけでお腹いっぱいになるという、まさに法の網をかいくぐる税金対策。
行く前に購買で菓子パンを二つ買うだけでお腹いっぱいになるという、まさに法の網をかいくぐる税金対策。
「……決めた。茶道室いって、お茶飲んでくる」
【有彦】
「そっすか。んじゃまあ、オレは一人淋しくパン食ってるかな!」
「……?」
有彦は今こそ好機!とばかりに走り去っていった。
「……なんだアイツ。てっきり一緒に行くかと思ってたのに」
まあ、おすそわけを狙うライバルは少ないほうが好ましいし、アイツの気が変わる前に茶道室に行ってしまおう。
□廊下
「お、先輩もう来てるな」
茶道室の鍵は開いている。先輩以外に茶道部の部員はいないので、開いているという事は先輩が中に居るというコトだ。
茶道室の鍵は開いている。先輩以外に茶道部の部員はいないので、開いているという事は先輩が中に居るというコトだ。
□茶道室
「ちゃーす」
声をかけて茶道室へと入る。
声をかけて茶道室へと入る。
【シエル】
「あ、遠野くん……!? な、なんですか今日はいきなり!」
「いや、いきなりってお昼ご飯を一緒にいいかなって来たんですが」
「いや、いきなりってお昼ご飯を一緒にいいかなって来たんですが」
【シエル】
「え———あ、そうですよね、そういえばお昼だったんです」
ほう、と疲れたように肩を落とす先輩。
ほう、と疲れたように肩を落とす先輩。
「……先輩。もしかして、何か事件でもあった?」
【シエル】
「な、ないです! 事件なんてこれっぽっちもないですから、このままお昼ご飯を食べちゃいましょう!」
……なんなんだろう、このあからさまな怪しさは。
たいていのコトはさらっと冷静に流すシエル先輩がこれだけ取り乱すなんてよほどの大事だと思うんだけど……。
「な、ないです! 事件なんてこれっぽっちもないですから、このままお昼ご飯を食べちゃいましょう!」
……なんなんだろう、このあからさまな怪しさは。
たいていのコトはさらっと冷静に流すシエル先輩がこれだけ取り乱すなんてよほどの大事だと思うんだけど……。
【シエル】
「ほら遠野くん、のんびりしてたらお昼休みなんてすぐ終わっちゃいますよ。おかずを差し上げますから、楽しく仲良くごはんにしましょう!」
まるで誰かに聞かすような大声。
それに反応したように、
まるで誰かに聞かすような大声。
それに反応したように、
—————ゴトゴトゴト!
なんて、押し入れの中から物音がした。
「……ちょっと、先輩」
【シエル】
「ネズミです。あ、それともおっきなネコでしょうか。ま、どちらにしてもわたしたちには関係のないコトですから、決して襖を開けたりしないようにお願いします」
そうして強引に座らされた。
そうして強引に座らされた。
ゴトゴトゴト。
押し入れの物音はさらに強くなっていく。
よく見れば先輩の腕には引っかき傷が無数にあって、畳には綺麗な金髪が落ちていたり。
よく見れば先輩の腕には引っかき傷が無数にあって、畳には綺麗な金髪が落ちていたり。
「先輩。もしかして、アルクェイドが来て———」
【シエル】
……うっ……なんか、それ以上口にするとひどい事をされそうな予感が、する。
「———いえ、なんでもないです。お昼ごはんにしましょうか」
「———いえ、なんでもないです。お昼ごはんにしましょうか」
【シエル】
「はい。今日はですね、唐揚げがうまく出来たんですよー。それと押し入れの中には何もありませんから、今後一切気にしないでくださいね。もし開けたりしたら代わりに遠野くんに入っていてもらいますから」
はいどうぞ、とお弁当のフタを開けながら先輩は言う。
はいどうぞ、とお弁当のフタを開けながら先輩は言う。
「……はあ。もし代わりに入ってしまったらどのくらい閉じ込められるんでしょうか」
「当然、わたしの気が済むまでです」
にっこりと笑う先輩。
……はあ。どうしてアルクェイドが押し入れに閉じ込められているか知らないけど、アイツ一生出て来れないんじゃないだろうか……。
「当然、わたしの気が済むまでです」
にっこりと笑う先輩。
……はあ。どうしてアルクェイドが押し入れに閉じ込められているか知らないけど、アイツ一生出て来れないんじゃないだろうか……。