□教室
……こうなったら、茶道室に行って先輩にお弁当を分けてもらおう。
行く前に購買で菓子パンを二つ買うだけでお腹いっぱいになるという、まさに法の網をかいくぐる税金対策。
行く前に購買で菓子パンを二つ買うだけでお腹いっぱいになるという、まさに法の網をかいくぐる税金対策。
「……決めた。茶道室いって、お茶飲んでくる」
【有彦】
「そっすか。んじゃまあ、オレは一人淋しくパン食ってるかな!」
「……?」
有彦は今こそ好機!とばかりに走り去っていった。
「……なんだアイツ。てっきり一緒に行くかと思ってたのに」
まあ、おすそわけを狙うライバルは少ないほうが好ましいし、アイツの気が変わる前に茶道室に行ってしまおう。
□廊下
「お、先輩もう来てるな」
茶道室の鍵は開いている。先輩以外に茶道部の部員はいないので、開いているという事は先輩が中に居るというコトだ。
茶道室の鍵は開いている。先輩以外に茶道部の部員はいないので、開いているという事は先輩が中に居るというコトだ。
□茶道室
「ちゃーす」
声をかけて茶道室へと入る。
声をかけて茶道室へと入る。
【シエル】
「いらっしゃい遠野くん。今日はここでお昼ですか?」
「うい。お茶をいただきつつ、先輩のお弁当のおかずをいただきに参上しました」
ひょい、と購買部で買ってきた菓子パンを差し出す。
ソーセージパンとカレーパン。ソーセージパンは自分用で、カレーパンは物々交換をするための物である。
「いらっしゃい遠野くん。今日はここでお昼ですか?」
「うい。お茶をいただきつつ、先輩のお弁当のおかずをいただきに参上しました」
ひょい、と購買部で買ってきた菓子パンを差し出す。
ソーセージパンとカレーパン。ソーセージパンは自分用で、カレーパンは物々交換をするための物である。
【シエル】
「あ、今日は事務所前のカレーパンですね?」
「うい。食堂前のカレーパンは食べ飽きた頃かなって思って」
「うい。食堂前のカレーパンは食べ飽きた頃かなって思って」
【シエル】
「ははあ、遠野くんは気が利きますねー。けどカレーパンに飽きるなんてコトはないですから、そんな心配はしなくてけっこうですよー」
「うい。まあ、薄々そんな気はしてたけど」
「うい。まあ、薄々そんな気はしてたけど」
【シエル】
「はい。それじゃあお茶を淹れてきますから、座っていてください」
先輩はきびきびした動作でお茶を淹れに行く。
こっちはこっちで座布団を出し、風が入るように窓を開けて正座した。
□茶道室
そんなこんなでいつもの昼食が始まった。
先輩のお弁当は今日もビッグサイズで、こっちにハンバーグやら唐揚げやらを分けてくれてもようやく一人前、といった量だ。
それでいてカレーパンまでぺろりと平らげるんだから、先輩の胃はどうかしている。
そんなこんなでいつもの昼食が始まった。
先輩のお弁当は今日もビッグサイズで、こっちにハンバーグやら唐揚げやらを分けてくれてもようやく一人前、といった量だ。
それでいてカレーパンまでぺろりと平らげるんだから、先輩の胃はどうかしている。
【シエル】
「食欲の秋ですねえ……」
はあ、とため息をつきながらごはんを食べるシエル先輩。
……けど、そんなのはこの人の食欲には関係ないと思うんだけど、それは言わぬが華だろう。
はあ、とため息をつきながらごはんを食べるシエル先輩。
……けど、そんなのはこの人の食欲には関係ないと思うんだけど、それは言わぬが華だろう。
【アルクェイド】
「そんなの関係ないと思うにゃー、でぶシエル」
「—————ぶっ!」
思わず、湯呑みを落としそうになった。
【シエル】
「……何か言いましたか、遠野くん。小さくてよく聞き取れなかったんですけど」
「い、いや、俺は何も言ってないっ……!」
「あ、そうですよね。よかった、もし今のが空耳じゃなかったらどうしたものかって思ったところです」
先輩はいつもの笑みをうかべてはいるが、心なしか声が恐い気がする。
「い、いや、俺は何も言ってないっ……!」
「あ、そうですよね。よかった、もし今のが空耳じゃなかったらどうしたものかって思ったところです」
先輩はいつもの笑みをうかべてはいるが、心なしか声が恐い気がする。
【シエル】
「それより遠野くん、お弁当のほうはもういいんですか? おなかが空いているのでしたら、どうぞ遠慮なく食べてください」
「あー、いや、そんなに先輩のお弁当を横取りしちゃまずいだろ。俺はハンバーグと唐揚げを分けてもらえればそれでいいって。先輩の方こそ、俺が食べちゃった分足りないんじゃないか?」
「そんなコトないですよ。遠野くんに貰ったカレーパンがありますから、食べきれなくなる事はあっても足りなくなるなんて事はありません」
……ふうん。そのわりに箸が休むような事はないけど、それこそ言わぬが華だろう。
「それより遠野くん、お弁当のほうはもういいんですか? おなかが空いているのでしたら、どうぞ遠慮なく食べてください」
「あー、いや、そんなに先輩のお弁当を横取りしちゃまずいだろ。俺はハンバーグと唐揚げを分けてもらえればそれでいいって。先輩の方こそ、俺が食べちゃった分足りないんじゃないか?」
「そんなコトないですよ。遠野くんに貰ったカレーパンがありますから、食べきれなくなる事はあっても足りなくなるなんて事はありません」
……ふうん。そのわりに箸が休むような事はないけど、それこそ言わぬが華だろう。
【アルクェイド】
「そんな見栄はっちゃっても仕方ないのにねー。大食いシエルが二人前ぐらいで満足するわけないじゃーん」
————————ビキ!
先輩の湯呑みに亀裂が走った。
【シエル】
「あはは。遠野くん、今度はなんて言いました? やっぱり小さくて全然聞き取れなかったんですけど」
「いいい、言ってないっ! 俺は何も言ってないってば!」
「いいい、言ってないっ! 俺は何も言ってないってば!」
【アルクェイド】
「栄養が全部お尻にいっちゃうのにバクバクバクバクとよく食べるコト。こんなんじゃ冬には六十の大台に突入するにゃー」
ビキビキビキ。
先輩は笑顔を崩さないまま、木っ端微塵になりそうな湯呑みを置いた。
「………………………」
無言で立ちあがるシエル先輩。
「あ———あの、先輩?」
「………………………」
返事はない。
先輩はツカツカとまっすぐに俺の前に立つと、
無言で立ちあがるシエル先輩。
「あ———あの、先輩?」
「………………………」
返事はない。
先輩はツカツカとまっすぐに俺の前に立つと、
【シエル】
「もしもーし。そうゆう悪いコト言う口はこの口ですかー?」
そのまま真顔で、俺のほっぺたをぐいぐいと広げてきた。
「もしもーし。そうゆう悪いコト言う口はこの口ですかー?」
そのまま真顔で、俺のほっぺたをぐいぐいと広げてきた。
「ひ、ひひゃい! せんぱい、いひゃいって……!」
「はーい、どうして遠野くんがわたしの体重を知ってるんですかー? ちゃんと答えないとタイヘンですよー」
「ひらないっ! そんなのひらないってば!」
必死に抗議するも、先輩には聞こえていないようだ。
「あんまりあてずっぽうで女の子の体重を口にしちゃいけませんよー。もし、万が一にも当たってたりしたら女の子が可哀相でしょうー?」
「ひらないっ! そんなのひらないってば!」
必死に抗議するも、先輩には聞こえていないようだ。
「あんまりあてずっぽうで女の子の体重を口にしちゃいけませんよー。もし、万が一にも当たってたりしたら女の子が可哀相でしょうー?」
ぎゅるり。ぐいぐいと引っ張る指にひねりが加わった。
「いっ………! せんぱい、さける、口がさけるってば……!」
「はい。うそつきさんの口は裂けていたほうがちょうどいいですから。人の体重が六十に近いだなんて、そんなデタラメ言う遠野くんはこうです」
ぎりりり。
ますます力が籠っていく先輩の指。
そこへ。
「あはは、シエルの体重なんて一目で判るに決まってるじゃんー。デタラメ言ってるのはどっちだっていうのよー。まったく、うそつきはどこかにゃー?」
なんて、明らかに第三者の声が響き渡った。
【シエル】
「…………遠野くん」
ぴたり、と止まる先輩の指。
「…………はい。聞こえましたね、確かに」
「…………なるほど。茶道室に化け猫が出る、という噂話は本当だったんですね」
先輩は目を伏せて呼吸を整える。
そうして、はあ、と一際大きく息を吸った後。
「出てきなさい、この天然化け猫吸血鬼………!!」
鼓膜を塞ぎたくなるぐらいの大声が茶道室を蹂躙した。
「うにゃー」
ぽてん、と音をたてて落下してくる謎の物体。
ぽてん、と音をたてて落下してくる謎の物体。
【アルクェイド】
「……っ、油断したわ……まさかそんな古典的な方法でくるなんて予想外よ」
……何が苦しいのか、アルクェイドはつらそうに立ちあがる。
……何が苦しいのか、アルクェイドはつらそうに立ちあがる。
【シエル】
「貴方、何のつもりなんですか一体。ここは人間の学舎です。貴方のような規格外の、およそヒトとの共存なんて冗談としか思えないほど馬鹿馬鹿しい生き物がいていい場所ではありません」
「貴方、何のつもりなんですか一体。ここは人間の学舎です。貴方のような規格外の、およそヒトとの共存なんて冗談としか思えないほど馬鹿馬鹿しい生き物がいていい場所ではありません」
【アルクェイド】
「む。ふーんだ、シエルに言われるまでもないですよーだ。わたしだってこんな、シエルのテリトリーみたいな部屋に来るのは願い下げってもんなんだから」
【シエル】
「……そうですか。なら無理をせずにさっさと出ていってください。もちろん茶道室だけでなく、学校の敷地はおろかこの街からも離れて故郷に戻れと言っているんですよ、わたしは」
「……そうですか。なら無理をせずにさっさと出ていってください。もちろん茶道室だけでなく、学校の敷地はおろかこの街からも離れて故郷に戻れと言っているんですよ、わたしは」
【アルクェイド】
「へえ。不死ではなくなった身で言うじゃない、代行者」
「———不死身の体など。そのようなもの、わたしたちにはもとより不要です」
バチバチ、と火花を散らしてにらみ合う二人。
「———不死身の体など。そのようなもの、わたしたちにはもとより不要です」
バチバチ、と火花を散らしてにらみ合う二人。
————やばい。
なんだって茶道室にアルクェイドが現れたかは知らないけど、こんな所で二人に本気でケンカをされるとタイヘンまずい。
「ちょっと待った。二人とも、ここが学校だって分かってるか?」
一応、やんわりとドクターストップをかけてみる。
【シエル】
「わたしは分かっています。まあ、この吸血鬼にそんな常識は期待していませんが」
「わたしは分かっています。まあ、この吸血鬼にそんな常識は期待していませんが」
【アルクェイド】
「あ、大丈夫大丈夫。わたしはシエルと殺し合いにきたわけじゃないもの」
殺気立つ先輩とは対照的にアルクェイドはのんびりしている。
「……?」
首をかしげる俺と先輩。
アルクェイドはきょろきょろと部屋を見渡した後、
「あ、大丈夫大丈夫。わたしはシエルと殺し合いにきたわけじゃないもの」
殺気立つ先輩とは対照的にアルクェイドはのんびりしている。
「……?」
首をかしげる俺と先輩。
アルクェイドはきょろきょろと部屋を見渡した後、
目にもとまらぬ早さで先輩のお弁当箱を横取りしてしまった。
□茶道室
【シエル】
「な、なにするんですか貴方はっ!」
「な、なにするんですか貴方はっ!」
【アルクェイド】
「いただきまーす」
呆然とする先輩をよそに、アルクェイドはごっくんと先輩のお弁当を一口で食べてしまった。
……無論、お弁当箱まで食べたわけではない。
「あ、あ、あ、あ……!」
ふるふると震えるシエル先輩。
アルクェイドはもぐもぐと咀嚼した後、やはり一息で呑み込んだ。
ふるふると震えるシエル先輩。
アルクェイドはもぐもぐと咀嚼した後、やはり一息で呑み込んだ。
【シエル】
「た、食べちゃった……わたしの、わたしのお昼ごはんを食べましたね……!」
ごおお、と先輩の背中に気炎が昇る。うわあ、今までにない程の怒りっぷりだ。
ごおお、と先輩の背中に気炎が昇る。うわあ、今までにない程の怒りっぷりだ。
一方アルクェイドはと言うと……
【アルクェイド】
「うわ、まず」
などと火に油をそそぐような感想を言ってお腹を押さえていたりする。
などと火に油をそそぐような感想を言ってお腹を押さえていたりする。
「ま、まずいですって……!? 人のお弁当を盗み食いしておいて、言うに事欠いて不味いだなんて、なんなんですか貴方は!」
ぐわー、と叫ぶシエル先輩。
ぐわー、と叫ぶシエル先輩。
「…………………」
……こうなっては俺に出来る事なんて一つぐらいだ。
いそいそと部屋の隅に移動して、事の顛末を眺めることにする。
【アルクェイド】
「ふう、落ちついた。やっぱりシエルの作った物なんてロクなものじゃないわね。無駄に量が多くて無駄にカロリーが高いんだもの。いい志貴? そういうワケだから二度とシエルの作った物なんて食べないでよね。あんなもの食べさせられたらシエルみたいにふとっちょになっちゃうんだから」
【シエル】
「あ———はは。あはははははははははは!」
あ。先輩が切れた。
【シエル】
「この、誰が太ってるっていうんですか、誰が!」
「この、誰が太ってるっていうんですか、誰が!」
豪腕一閃、先輩の右ストレートがアルクェイドの顔面へと炸裂———�
□茶道室
「ちょっ、ちょっと本気!?」」
びっくりして後ろに跳ぶアルクェイド。
先輩のストレートは避けられたが、先輩は依然としてやる気満々だった。
びっくりして後ろに跳ぶアルクェイド。
先輩のストレートは避けられたが、先輩は依然としてやる気満々だった。
【アルクェイド】
「む? 学校で地を出すなんて大人げないぞシエル?」
【シエル】
「聞く耳もちません。今日という今日こそ決着をつけてあげます、アルクェイド・ブリュンスタッド」
「うわ、シエルったら本気だー。ホントのコト言われちゃって怒るなんて大人げないなー」
「——こ、この化け猫ぉ……!」
「聞く耳もちません。今日という今日こそ決着をつけてあげます、アルクェイド・ブリュンスタッド」
「うわ、シエルったら本気だー。ホントのコト言われちゃって怒るなんて大人げないなー」
「——こ、この化け猫ぉ……!」
□茶道室
先輩の左ジャブが繰り出される。
先輩の左ジャブが繰り出される。
【ネコアルク】
「うにゃ」
【ネコアルク】
「シエルあまーい」
【ネコアルク】
「シエルはっずれー」
【ネコアルク】
「シエルへたくそー」
ひょいひょいと軽いステップで先輩を翻弄するアルクェイド。
「—————フッ、そこです!」
だがそれも長くは続かなかった。
だがそれも長くは続かなかった。
ぱん、という軽い音。
先輩のジャブが確実にアルクェイドの腕にヒットした音だ。
【アルクェイド】
「……むっ。やるにゃ、知得留」
【シエル】
【シエル】
【シエル】
【シエル】
「いつまでも貴方に遊ばれるわたしではありません。そのネコっ面、今度こそ潰れたまんじゅうに変えてさしあげます」
おお、あれはヒットマンスタイル! 先輩、確実に殺る気だなあ。
【シエル】
「いつまでも貴方に遊ばれるわたしではありません。そのネコっ面、今度こそ潰れたまんじゅうに変えてさしあげます」
おお、あれはヒットマンスタイル! 先輩、確実に殺る気だなあ。
「……むー。それはちょっと不利かも。専用の立ち絵を用意してもらうなんて卑怯にゃー!」
【シエル】
【シエル】
【シエル】
【シエル】
「……ふん、減らず口を。貴方の動きは捉えました。次に踏みこんできた時が最後です」
ヒュンヒュンと左手を振り子のように揺らすシエル先輩。
あそこから左手がムチのようにしなってアルクェイドを襲うのだ。———ああ、あんないかにも悪役な構えが似合うなんて、シエル先輩も芸達者だなあ。
【シエル】
「……ふん、減らず口を。貴方の動きは捉えました。次に踏みこんできた時が最後です」
ヒュンヒュンと左手を振り子のように揺らすシエル先輩。
あそこから左手がムチのようにしなってアルクェイドを襲うのだ。———ああ、あんないかにも悪役な構えが似合うなんて、シエル先輩も芸達者だなあ。
「んー、しょうがないにゃー。それじゃこっちも奥の手を出して対抗するかにゃ」
アルクェイドがシエル先輩へと踏みこむ。
【シエル】
「………殺りました!」
勝利を確信してパンチを繰り出す先輩。
ムチのようにしなる左拳が無慈悲にアルクェイドの顔面を貫く————!
勝利を確信してパンチを繰り出す先輩。
ムチのようにしなる左拳が無慈悲にアルクェイドの顔面を貫く————!
□茶道室
【ネコアルク】
【ネコアルク】
「にゃ」
が。それは、あっけなくアルクェイドにかわされた。
【ネコアルク】
「にゃ」
が。それは、あっけなくアルクェイドにかわされた。
「!?」
驚きつつ、すばやく第二撃を放つ先輩。
パンチをかわして隙だらけのアルクェイドの顔面を、今度こそ死神のカマが襲う!
【ネコアルク】
【ネコアルク】
【ネコアルク】
「にゃにゃ」
「————っ!」
さらに三撃、矢のように繰り出される先輩の拳。
「————っ!」
さらに三撃、矢のように繰り出される先輩の拳。
【ネコアルク】
【ネコアルク】
【ネコアルク】
「にゃにゃにゃ」
さらにかわすアルクェイドの怪しい動き。
「こ、このぉ…………!」
ヒュンヒュンヒュン。
マシンガンのように繰り出される先輩のパンチパンチパンチ。
さらにかわすアルクェイドの怪しい動き。
「こ、このぉ…………!」
ヒュンヒュンヒュン。
マシンガンのように繰り出される先輩のパンチパンチパンチ。
【ネコアルク】
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ………!」
それをどこがで見たような円運動で回避するアルクェイド!
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ………!」
それをどこがで見たような円運動で回避するアルクェイド!
「くっ——!」
【シエル】
ザッ、と咄嗟に間合いを離すシエル先輩。
アルクェイドは深追いせず、スウェーやらウェービングやらパリーの練習やらを繰り返して様子を見ている。
「……………………」
アルクェイドは深追いせず、スウェーやらウェービングやらパリーの練習やらを繰り返して様子を見ている。
「……………………」
忌々しげにアルクェイドを睨む先輩。
アルクェイドはじりじりと先輩へと近寄っている。
【ネコアルク】
「ふふふ、そのフリッカーは見きったのだ。んにゃあゃそろそろ決着をつけて志貴と遊びにいかせてもらうかにゃー」
「……………………」
先輩には言葉がない。
アルクェイドの変幻自在な動きを捉えられず、自身の敗北を悟ったのだろうか。
「ふふふ、そのフリッカーは見きったのだ。んにゃあゃそろそろ決着をつけて志貴と遊びにいかせてもらうかにゃー」
「……………………」
先輩には言葉がない。
アルクェイドの変幻自在な動きを捉えられず、自身の敗北を悟ったのだろうか。
「トドメにゃ! 死ねでかしりシエルー!」
【ネコアルク】
突進するアルクェイド。
「————————シッ………!」
走る先輩のジャブ。
が、アルクェイドは回ったり回ったり回ったり止まったりする動作でそれをかわした。
が。
瞬間、先輩の口がにやりと釣りあがり——�
瞬間、先輩の口がにやりと釣りあがり——�
【シエル】
「知ってます、止まるんでしょう……!」
————振り上げた右拳が、無防備なアルクェイドの顔面へと炸裂する……!
ごぎゃ、という激しい打撃音が響く。
それもモノラルではなくステレオで。
まったく同じタイミングで、両者の拳は相手の顔面へ炸裂していた。
それもモノラルではなくステレオで。
まったく同じタイミングで、両者の拳は相手の顔面へ炸裂していた。
「…………壮絶だな」
俺の呟きなんて聞こえていないだろう。
見事に腕が伸びきった、教科書に載せてもいいぐらいのクロスカウンターだ。とくに先輩のパンチが素晴らしい。アルクェイドのデタラメな腕力に対抗するべく、ひねりを加えて打撃力を増している。
俺の呟きなんて聞こえていないだろう。
見事に腕が伸びきった、教科書に載せてもいいぐらいのクロスカウンターだ。とくに先輩のパンチが素晴らしい。アルクェイドのデタラメな腕力に対抗するべく、ひねりを加えて打撃力を増している。
まさに力のアルク、技のシエル。
ここまでタイミングが一緒だと、実はこの二人、とてつもなく気が合うんじゃないかと勘ぐりたくなるほどだ。
「……く、さすがにやりますね、アルクェイド——」
「オマエモニャ———」
「オマエモニャ———」
ふふふ、とにらみ合う二人。
そのまま、ずめりとマット……じゃなくて、畳の上に倒れこむ。
そのまま、ずめりとマット……じゃなくて、畳の上に倒れこむ。
□茶道室
「あ、そろそろ時間か」
気が付けば昼休みも終わろうとしている。
二人はお互いの頬をつねったまま気絶している。
「さ、帰ろ帰ろ」
後の処理も面倒だし、ここは何も見なかった事にして教室に帰るのだ。