□教室
……そうだな、何かを急ぐ必要もないし、まったりと日向ぼっこをするのも悪くない。
命名、帰宅部ならぬ日向ぼっこ倶楽部。
命名、帰宅部ならぬ日向ぼっこ倶楽部。
□教室
日向ぼっこ、終了。
遠くの街並みを燃やすように、赤い夕日が地平へと落ちていく。
「————さて、帰るか」
鞄を持って教室を後にする。
……しかし、考えてみると。こんなのんびりとした生活をしていれば、そりゃあ昨日のコトなんて思い出せなくなるってものだ。
日向ぼっこ、終了。
遠くの街並みを燃やすように、赤い夕日が地平へと落ちていく。
「————さて、帰るか」
鞄を持って教室を後にする。
……しかし、考えてみると。こんなのんびりとした生活をしていれば、そりゃあ昨日のコトなんて思い出せなくなるってものだ。
□校門前
□分岐路
街の中間地点である交差点を過ぎた頃、ばったりと有彦に遭遇した。
□分岐路
街の中間地点である交差点を過ぎた頃、ばったりと有彦に遭遇した。
【有彦】
「お? なんでここにいるんだおまえ」
「顔を合わせていきなりそれか、有彦」
むっ、と有彦を睨む。
が、向こうも思う所があるのか訝しむようにこっちを睨んでいた。
「顔を合わせていきなりそれか、有彦」
むっ、と有彦を睨む。
が、向こうも思う所があるのか訝しむようにこっちを睨んでいた。
「……なんだよ。何か言いたい事がありそうじゃないか有彦」
「…………………」
じー、と有彦はこちらを観察した後、おもむろに。
「…………………」
じー、と有彦はこちらを観察した後、おもむろに。
「うりゃ」
と、人のほっぺたを掴み、それだけでは飽き足らず掴んだまま全力疾走をはじめた。
「———————!!!!!!!!」
い、いたいいたいいたいいたいいたいいたい!
い、いたいいたいいたいいたいいたいいたい!
□分岐路
「ひゃ、ひゃにするんなきになり………っ!」
【有彦】
【有彦】
「————む、本物と確認。そうだよな、こんな街中で狐狸のたぐいが出るワケねーか!」
疑いが晴れたのか、有彦は嬉しそうにブンブンと手を上下させる。もちろん、人のほっぺたを掴んだままで。
「ほ、ほみゃえは————!」
疑いが晴れたのか、有彦は嬉しそうにブンブンと手を上下させる。もちろん、人のほっぺたを掴んだままで。
「ほ、ほみゃえは————!」
【有彦】
閃光の右ストレート。
ぐわあ、と断末魔の声を上げてたわけた男は倒れ去った。
経験値もお金も持っていないあたり、そこいらのモンスターより始末が悪い。
ぐわあ、と断末魔の声を上げてたわけた男は倒れ去った。
経験値もお金も持っていないあたり、そこいらのモンスターより始末が悪い。
□分岐路
「で。一体なんのつもりなんだ、おまえ」
「で。一体なんのつもりなんだ、おまえ」
【有彦】
「いやなに、街中で狸にでもバカされたかな、と思ったわけですよこれが」
「だから、どうしてそこで狸が出てくるんだ。人のほっぺたを伸ばしまくってくれただけの理由を言え」
「だから、どうしてそこで狸が出てくるんだ。人のほっぺたを伸ばしまくってくれただけの理由を言え」
【有彦】
「いやなに。どうしても何も、ついさっき大通りの方で遠野を見かけてさ。人目につかない物陰に立っていたおまえさんに声をかけたら、人を捜してるから気にするなって答えてきたもんだ」
「街中でって……俺、学校から帰ってきたばっかりだけど」
「街中でって……俺、学校から帰ってきたばっかりだけど」
「そんなのは見れば判る。だいたい最短距離でここまでやってきた俺を追い越せるワケねーだろ。
だからこう、さっきの遠野とここにいる遠野、どっちかが狐狸妖怪のたぐいに違いないって思ったワケ」
「……有彦。その時点で街にいたのは俺に良く似た誰かだって思わなかったのか」
だからこう、さっきの遠野とここにいる遠野、どっちかが狐狸妖怪のたぐいに違いないって思ったワケ」
「……有彦。その時点で街にいたのは俺に良く似た誰かだって思わなかったのか」
「あー、実を言うとオレもそう思ったんだがね。これが最近ちょっとな、オカルトっての? そういうの信じざるえない状況になっちまって困ってる」
ガリガリと頭を掻く有彦。こいつもこいつで何やら大変な生活を送っているみたいだ。
ガリガリと頭を掻く有彦。こいつもこいつで何やら大変な生活を送っているみたいだ。
「ま、他人の空似ってヤツか。ああ、そういえば前に遠野っぽい雰囲気のヤツが夜の街をうろついてたって話、したっけ?」
「————いや。おまえからその話を聞いた事はないよ」
「そっか。もう随分と前の話だから忘れてたぜ。ありゃー単にヤバイって雰囲気が似通ってただけなんだが、さっきのヤツは外見がおまえにクリソツだったな。……いや、どっちかっていうとガキの頃のおまえに似てたか」
ぶつぶつと呟く有彦。
……と、よく見ればコイツ、ビニール袋にあふれんばかりの人参をつめこんでいる。
「————いや。おまえからその話を聞いた事はないよ」
「そっか。もう随分と前の話だから忘れてたぜ。ありゃー単にヤバイって雰囲気が似通ってただけなんだが、さっきのヤツは外見がおまえにクリソツだったな。……いや、どっちかっていうとガキの頃のおまえに似てたか」
ぶつぶつと呟く有彦。
……と、よく見ればコイツ、ビニール袋にあふれんばかりの人参をつめこんでいる。
「有彦。おまえ、キャロットケーキでも作るのか?」
「バカ言うな、こりゃあ生で食うんだ」
「—————————————」
まあ、人様の趣味嗜好に口を出すほど野暮ではないので反論はよしておこう。
「バカ言うな、こりゃあ生で食うんだ」
「—————————————」
まあ、人様の趣味嗜好に口を出すほど野暮ではないので反論はよしておこう。
【有彦】
「じゃあな、たまには家に遊びにこいよ。姉貴が会いたがってたぜ」
夕焼けに溶けるように去っていく悪友の背中を見送って、こちらも自分の家に帰る事にした。