□公園
ゆっくりと時間が流れる。
いつものベンチに座って、けど隣にアキラちゃんがいる、というのはなんだか新鮮だ。
二人して他愛の無い話——好きな食べ物とかマンガとか、旅行に行くのならどこがいいのかとか秋葉の恐い所とか、笑いが絶えない話を続ける。
いつものベンチに座って、けど隣にアキラちゃんがいる、というのはなんだか新鮮だ。
二人して他愛の無い話——好きな食べ物とかマンガとか、旅行に行くのならどこがいいのかとか秋葉の恐い所とか、笑いが絶えない話を続ける。
と、そんな時だった。
「———————あれ」
行き交う人波の中で、彼女の姿を見つけたのは。
「志貴さん?」
アキラちゃんの声もよく聞こえない。
……黒一色の服装をした、幼い少女。
迷子のような目をして、いつも独りでいる彼女。
「……あの子」
どうして今まで忘れてたんだろう。
あの娘に会ったら、今度こそ訊かなくちゃいけない事があったのに。
「ごめんアキラちゃん。ちょっとここで待ってて」
「はい?」
戸惑うアキラちゃんをベンチに残して、噴水へ近づく。
アキラちゃんの声もよく聞こえない。
……黒一色の服装をした、幼い少女。
迷子のような目をして、いつも独りでいる彼女。
「……あの子」
どうして今まで忘れてたんだろう。
あの娘に会ったら、今度こそ訊かなくちゃいけない事があったのに。
「ごめんアキラちゃん。ちょっとここで待ってて」
「はい?」
戸惑うアキラちゃんをベンチに残して、噴水へ近づく。
□公園の噴水前
【レン】
「———————————」
間違いない、あの子だ。
「君、また迷子なのか?」
「———————————」
話しかけても答えはない。
少女は相変わらず無口だった。
「俺の事、分かる? 何度か会ってると思うんだけど……」
「———————————」
少女は答えない。
……ただ、心なしかいつもより哀しげというか、何か怒っているような、そんな気配が伝わってくる。
「———————————」
間違いない、あの子だ。
「君、また迷子なのか?」
「———————————」
話しかけても答えはない。
少女は相変わらず無口だった。
「俺の事、分かる? 何度か会ってると思うんだけど……」
「———————————」
少女は答えない。
……ただ、心なしかいつもより哀しげというか、何か怒っているような、そんな気配が伝わってくる。
「……?」
なんで怒っているのか、その理由が解らない。
じっと俺を見詰めてきている以上、その原因は俺にあるみたいなんだけど———�
【アキラ】
「志貴さん、どうしたんですか?」
「あ、アキラちゃん。それが、その———」
なんて説明したらいいんだろう?
この子とはもう何度も会っているんだけど、俺はまだこの子の名前さえ知らなかったりする。
そんな俺が迷子っぽいこの子のコトをどう説明すればいいんだろう……?
「あ、アキラちゃん。それが、その———」
なんて説明したらいいんだろう?
この子とはもう何度も会っているんだけど、俺はまだこの子の名前さえ知らなかったりする。
そんな俺が迷子っぽいこの子のコトをどう説明すればいいんだろう……?
「えっと———ああ、とにかくアレだ。あの、この子は瀬尾アキラちゃん。俺の知り合いだから恐がらなくていいよ」
黒い女の子にアキラちゃんを紹介する。
【レン】
———と。
女の子は、今まで見たこともない目でアキラちゃんを見詰めていた。
女の子は、今まで見たこともない目でアキラちゃんを見詰めていた。
【アキラ】
「あ、あの……志貴さん、わたし睨まれちゃってます……?」
助けを求めるように寄ってくるアキラちゃん。
「え?」
「———————————」
と。そのアキラちゃんを、女の子は必死にぐいぐいと押し出そうとしていた。
「———————————」
と。そのアキラちゃんを、女の子は必死にぐいぐいと押し出そうとしていた。
【アキラ】
「あ、あの……もしもし? わたし、何かしちゃってますか……?」
体を押してくる女の子に話しかけるアキラちゃん。
「———————————」
女の子は無言で、ともかく必死にアキラちゃんを押している。
けれど体格差のせいか、アキラちゃんはビクともしない。
体を押してくる女の子に話しかけるアキラちゃん。
「———————————」
女の子は無言で、ともかく必死にアキラちゃんを押している。
けれど体格差のせいか、アキラちゃんはビクともしない。
「……あの……もしかして、志貴さんに近づいちゃダメなのかな?」
「———————————」
女の子は何も言わず、アキラちゃんから手を離してこちらに振り向く。
【レン】
……また、その顔。
哀しげというか、拗ねているというか、ともかく放っておけなくなりそうな、表情。
哀しげというか、拗ねているというか、ともかく放っておけなくなりそうな、表情。
「あ———ちょっと待って!」
「————————————」
女の子は何も言わず、人波に紛れるように走り去って行ってしまった。
【アキラ】
「志貴さん……? 今の女の子、志貴さんのお知り合いなんですか?」
「あ———いや。知り合いといえば知り合いなんだけど、まだお互いの名前も知らない。……けど、見知らぬ他人ってわけじゃないんだ」
「名前も知らないのにですか?」
アキラちゃんは不思議そうに首をかしげる。
「あ———いや。知り合いといえば知り合いなんだけど、まだお互いの名前も知らない。……けど、見知らぬ他人ってわけじゃないんだ」
「名前も知らないのにですか?」
アキラちゃんは不思議そうに首をかしげる。
……ああ、まったくその通りだ。
遠野志貴はもう何度も彼女と出会っていて、彼女が何者なのか気が付いている。
なのにどうして、こうも毎回すれ違ってしまうんだろう————
———そうして、三時になってアキラちゃんと別れた。
アキラちゃんと別れた後女の子を捜したが見当たらず、夕方になって屋敷に戻る事となった。