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歌月十夜155

时间: 2019-11-29    进入日语论坛
核心提示:*s191□繁華街「あれ?」気が付くと大通りへ足を運んでいた。「交差点に行くつもりだったのに、なんで?」はて、と首をかしげて
(单词翻译:双击或拖选)
*s191
 
□繁華街
「———————あれ?」
気が付くと大通りへ足を運んでいた。
「交差点に行くつもりだったのに、なんで……?」
はて、と首をかしげてみる。
……自分でもよく分からない。
なんとなく体の方があの場所に行くのを拒否した感じだ。
そりゃあ交差点になんて行っても仕方がないけど、それにしたって————
 
□繁華街
「——————」
待て。今、人込みの中に、いてはならないモノがいなかったか。

「ヤツ、は————」
心臓がミキサーに放りこまれたような感じ。
ドクドクと脈打つ赤い器官が、プラスティックの容器の中で狭苦しいと喘いでいる。
 
「—————そんな、馬鹿な」
だが今のは目の錯覚なんかじゃない。
この俺が、あのヤツの姿を、見間違える事などできない。

「—————待て」
足が動く。
ヤツはこちらに気が付いている。
気付いていて、これみよがしに俺の前に現れて誘っている。

「—————は」
口の端が、歪なカタチに攣りあがった。
いいだろう。あっちがこちらを誘うのなら、ためらう事なく乗ってやる————
 
□裏通り
ヤツはニヤニヤと笑いながら路地裏へ滑りこんで行く。
……ああ、つまりはそういうこと。
ヤツが現れる理由なんてただ一つなのだし、だとしたら出会うに相応しい場所はここ以外ない。
さあ————

□行き止まり
———あの続きを始めようじゃないか、殺人鬼。

【殺人鬼】
「————————」
ヤツはこちらを睨んでいる。
「————————」
なんてイヤな姿。こんな、血に飢えたような姿になんか、俺はならない。
「———————フン。それはどうかな」
ヤツは笑う。こちらの心を読んでいる。
「その怖れはつねに孵る事を望んでいる。———ここに、この俺がいるという時点でな」
「貴様———————」
ナイフ。ナイフはポケットの中か。
構える。
ヤツも逆手にナイフを構える。
「それで、その先はどうする遠野志貴」
「その先、だと————?」

この後……?
何を言っているんだコイツは。ナイフを構えたら、あとは敵を仕留めるだけだ。
 他にしておく準備なんてない。
他にしておく準備なんてない。
他にしておく準備なんてない。
他にしておく準備なんてない。
他にしておく準備なんてない。
他にしておく準備なんて———————
□志貴の部屋
□行き止まり
「————————」
待て。
今の、奇怪な線はなんだ。
俺は、何を忘れている—————?

【殺人鬼】
「———やはりな。お互い、真世界でなければ自らを行使できぬようだ」

「な———にを」
吐き気がする。頭痛がする。眩暈がする。
蘇る貧血。————ああ、どうして忘れていたのか。
この、不安定な体と、忌まわしい死のカタチを。

「……ここも時間切れか。世界が完全に崩壊する前に貴様を仕留めなければならない。おまえも、俺を殺人鬼と呼ぶのなら相応しい場所を選べ」
 
——————今宵、影絵ノ世界デ君ヲ待ツ。
 ……ヤツは唐突に消え去った。
同時に。
 
        メガネを外し。
 
 絵の具が溶けるように、路地裏は溶解した。
「————————っ!」
しまった、ここも行き止まりだ。
この先はない。ああ、そりゃあ場所的に行き止まりではあるが、もっと深刻な問題としてここは行き止まりなのだ。
何故なら、ここにはこれ以上時間がない。
つまりここも世界の果て。
これ以上踏みとどまっていれば“一日の終わり”に巻きこまれる—————
 
□繁華街
———そうして、時刻は夕方になろうとしていた。
「いやー、遊んだ遊んだ」
向こう一年間分は遊んだかもしれない。
たまには一人っきりで気ままに街を出歩くっていうのもいいもんだ。
何をしたかというとゲームセンターに行って、お気に入りの本屋を巡って、冬物の下調べに洋服店をはしごして、公園で日向ぼっこをして、最後に喫茶店で買った文庫本に目を通して。
「……あれ?」
文庫本なんていつ買ったんだっけ?
「……むむむ?」
そういえばゲームセンターに行く前に、何か見逃せない事があったような無かったような。
「———ま、いっか。思い出せないってコトは些細なことだろ」
そんな事より、実際問題としてじき夕食である。
そろそろ屋敷に戻らないと行けないだろう————
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