*s215
□シエルの部屋
街に現れるという殺人鬼。
吸血鬼による通り魔殺人は終わったというのに、夜毎殺されてしまう犠牲者はどういう事なのか。
吸血鬼による通り魔殺人は終わったというのに、夜毎殺されてしまう犠牲者はどういう事なのか。
「……まあ、いまさらシエル先輩に訊く事じゃないんだけど、最近の夜はどうなのかな。また新しい通り魔事件が起きてるっていうけど、アレも吸血鬼の残党の仕業なの?」
【シエル】
「———あの。遠野くん、なに言ってるんですか?」
「いや、だから街で通り魔が出てるだろ。もう何人か犠牲者が出てるって話じゃないか。先輩は夜のパトロールをしてるんだから詳しい話を知らないかなって」
「———あの。遠野くん、なに言ってるんですか?」
「いや、だから街で通り魔が出てるだろ。もう何人か犠牲者が出てるって話じゃないか。先輩は夜のパトロールをしてるんだから詳しい話を知らないかなって」
先輩は答えず、しばらく真顔で俺の顔を見詰めていた。
【シエル】
「……わたし、遠野くんが言うような事件は知りません。たしかに街にはまだ死者が潜んでいますけど、彼らによる殺人行為が行われた形跡はありません。
その、失礼ですけど、それはただの通り魔事件なんじゃないでしょうか……?」
申し訳なさそうに先輩は言う。
「————————」
先輩にそう返答されると、こっちも返す言葉なんてない。
毎夜街を巡回している先輩がそういうのなら、街で起きている通り魔事件は純粋に人間の手による物だというコトだ。
その、失礼ですけど、それはただの通り魔事件なんじゃないでしょうか……?」
申し訳なさそうに先輩は言う。
「————————」
先輩にそう返答されると、こっちも返す言葉なんてない。
毎夜街を巡回している先輩がそういうのなら、街で起きている通り魔事件は純粋に人間の手による物だというコトだ。
「そっか。……いけないな、物騒な事件が起きるとすぐに吸血鬼に結び付けて考えるクセがついてる」
【シエル】
「しょうがないですよ、ちょっと前まで遠野くんもその被害者だったんですから。遠野くんは普通の学生さんなんですから、少しずつ心のリハビリしていきましょう」
……心のリハビリか。たしかに先輩の言うとおりだ。いつまでも陰惨な記憶に引きずられてたら気が滅入るだけだろうし。
「しょうがないですよ、ちょっと前まで遠野くんもその被害者だったんですから。遠野くんは普通の学生さんなんですから、少しずつ心のリハビリしていきましょう」
……心のリハビリか。たしかに先輩の言うとおりだ。いつまでも陰惨な記憶に引きずられてたら気が滅入るだけだろうし。
「……そうだね。殺人事件って単語に敏感になりすぎてるのは気をつけないといけないな」
【シエル】
「え、その通り魔事件って殺人事件なんですか?」
「そうだよ。ニュースでやってたし、誰かがそんな話もしていたから間違いないし、それに———」
それに———?
「そうだよ。ニュースでやってたし、誰かがそんな話もしていたから間違いないし、それに———」
それに———?
【シエル】
「はあ。おかしいですね、そこまでの事件でしたら話ぐらいは聞くと思うんですけど。……遠野くん、その話を知ったのは今日ですか?」
「え———いや、そうだったかな。昨日だったかもしれない」
「え———いや、そうだったかな。昨日だったかもしれない」
そう答えて、またも記憶の曖昧さを実感した。
知っている知識が何処で手にいれた物なのかさえ、明確に思い出せない。
知っている知識が何処で手にいれた物なのかさえ、明確に思い出せない。
□シエルの部屋
【シエル】
「なんにせよ物騒な話ですね。遠野くん、くれぐれも夜一人で出歩かないでください。どうしてだか知りませんけど、遠野くんってそういう人とか事件に縁があるようですから」
「はいはい、それは身に染みて分かってますよ」
「はいはい、それは身に染みて分かってますよ」
冗談半分に答えて湯呑みを口に運ぶ。
長話が過ぎたのか、お茶はすっかり冷めてしまっていた。
□アパート
そうしてシエル先輩とのゆったりとした夕方は過ぎていった。
屋敷に帰る時間になって、また明日、とおきまりの挨拶をして先輩のアパートを後にした。
そうしてシエル先輩とのゆったりとした夕方は過ぎていった。
屋敷に帰る時間になって、また明日、とおきまりの挨拶をして先輩のアパートを後にした。