□教室
……貸衣装屋、だろうか。
一番準備に手間取った出し物だし、全学年中貸衣装屋を企んでいるのはうちだけだし。
……ただちょっと、このイベントには思わぬ盲点があったというか、始めの女子の思惑とはズレてしまったというか———
一番準備に手間取った出し物だし、全学年中貸衣装屋を企んでいるのはうちだけだし。
……ただちょっと、このイベントには思わぬ盲点があったというか、始めの女子の思惑とはズレてしまったというか———
「あ。まさか遠野くんも貸衣装屋をするっていうの!?」
「はんたいはんたーい! 貸衣装屋はんたーい!」
「そうだ、ヘンタイ男子をぶっつぶせー!」
「………………む」
まずい、とてもじゃないけど貸衣装屋にする、なんて言える状況じゃなくなってきた。
言える状況じゃなくなってきたんで、とりあえず投票用紙に書いて箱に入れた。
「はんたいはんたーい! 貸衣装屋はんたーい!」
「そうだ、ヘンタイ男子をぶっつぶせー!」
「………………む」
まずい、とてもじゃないけど貸衣装屋にする、なんて言える状況じゃなくなってきた。
言える状況じゃなくなってきたんで、とりあえず投票用紙に書いて箱に入れた。
「はい、最後の投票は貸衣装屋に一票。したがって当クラスの出し物は貸衣装屋に決定しました」
素早く投票結果を読み上げる国藤担任。
「えぇえええええええ! 遠野さいてー!」
うわあ、女子の大部分からブーイングが嵐になって! ……って、これぐらいは覚悟の上だったけどさ。
素早く投票結果を読み上げる国藤担任。
「えぇえええええええ! 遠野さいてー!」
うわあ、女子の大部分からブーイングが嵐になって! ……って、これぐらいは覚悟の上だったけどさ。
【有彦】
「ふ。本性見たぜこの女の敵めー」
「……ちっ、死人が生き返ったか」
「……ちっ、死人が生き返ったか」
【有彦】
「ああ生き返りますとも。普段は女になんて興味ありませんよー、などとスカしている遠野がついに本性を現したんだからな。うむ、よきかなよきかな。この一件はこのオレに有利に働いてくれるだろう!」
ふははは、と楽しそうに笑う有彦。
ふははは、と楽しそうに笑う有彦。
一方、俺の前にはかわるがわる“同志よ!”とばかりに握手を求めてくるクラスの男子ご一行さまがいたりする。
「はい、それでは女子は指定された制服に着替えてください。混雑が予想されますので、スタッフの交代時間の確認はしっかりしておくこと。
それと男子、なんらかの不慮の事故で着替え中を覗いてしまった場合、この出し物は中止となります。いいですか、くれぐれもそのような事故で出店停止などおこさないように」
テキパキと指示を出す国藤担任。
担任に仕切られては女子も従わざるをえないのだろう。ぶー、という抗議の声をあげつつも支度を始めている。
それと男子、なんらかの不慮の事故で着替え中を覗いてしまった場合、この出し物は中止となります。いいですか、くれぐれもそのような事故で出店停止などおこさないように」
テキパキと指示を出す国藤担任。
担任に仕切られては女子も従わざるをえないのだろう。ぶー、という抗議の声をあげつつも支度を始めている。
「……うわあ、あんなにイキイキとした国藤見んの初めてだよオレ」
「だなー。貸衣装屋の案が出た時、男子はみんな反対だったけどなー。いつのまにか店員は女子のみ、制服はメイド服か袴って規則が出来て、逆に女子が反対しだしたんだっけ」
「集めてきた貸衣装もさー、野郎のはそれこそ千差万別だけど女子のだけアレだろ? 時代がかったドレスしかなくて、他にあるといったら……」
うん。ドレスはドレスでもチャイナドレスだけだ。
「だなー。貸衣装屋の案が出た時、男子はみんな反対だったけどなー。いつのまにか店員は女子のみ、制服はメイド服か袴って規則が出来て、逆に女子が反対しだしたんだっけ」
「集めてきた貸衣装もさー、野郎のはそれこそ千差万別だけど女子のだけアレだろ? 時代がかったドレスしかなくて、他にあるといったら……」
うん。ドレスはドレスでもチャイナドレスだけだ。
「付き合ってるヤツは絶対彼女つれてやってくるって豪語してたもんなー。国藤のヤツ、うちが貸衣装屋になったら指導教員としてクラスに残るらしいぜ」
「わかりやすい人だね、うちの担任も」
「いやいや、オレは国藤の名前がたきふじに似ている時点でそういうヤロウだってわかってたけどなー」
「……………………」
そ、そうだったのか。企画当初、女子が期待していた可愛い服集めて撮影かーい!という思惑からズレてきた、という話は聞いてたけど、まさかそこまでズレでいたとは。
「わかりやすい人だね、うちの担任も」
「いやいや、オレは国藤の名前がたきふじに似ている時点でそういうヤロウだってわかってたけどなー」
「……………………」
そ、そうだったのか。企画当初、女子が期待していた可愛い服集めて撮影かーい!という思惑からズレてきた、という話は聞いてたけど、まさかそこまでズレでいたとは。
「あー、もうむかつくー! 遠野のヤツ、あとで縛り首にしてやるからねっ……!」
……うわ。ゾッとする捨て台詞を残して、時代錯誤な制服着用を余儀なくされた女子たちはぞろぞろと着替え用の更衣室へと消えていった。
……うわ。ゾッとする捨て台詞を残して、時代錯誤な制服着用を余儀なくされた女子たちはぞろぞろと着替え用の更衣室へと消えていった。