□屋敷の物置
————————あ」
思わず声があがる。
古ぼけた写真に映っているのは、間違いなく幼い自分とあの子の姿だった。
……それは木漏れ日に包まれた中庭。
今のような関係ではなく、ただ仲の良い友人としてを毎日を過ごしていた少年と少女。
それでも、自分には彼女に対する特別な気持ちがあった筈だ。
幼い遠野志貴に手を差し伸べてくれて、
いつも笑顔で、強引に外へと連れ出してくれた赤い髪をした少女の姿。
思わず声があがる。
古ぼけた写真に映っているのは、間違いなく幼い自分とあの子の姿だった。
……それは木漏れ日に包まれた中庭。
今のような関係ではなく、ただ仲の良い友人としてを毎日を過ごしていた少年と少女。
それでも、自分には彼女に対する特別な気持ちがあった筈だ。
幼い遠野志貴に手を差し伸べてくれて、
いつも笑顔で、強引に外へと連れ出してくれた赤い髪をした少女の姿。
「———————————」
……何もかも懐かしい。
たった一枚の古ぼけた写真。
けれどこれは、あの頃の思い出をカタチにした唯一つの写真だった。
「—————————あ」
けどこれが琥珀さんが探していた物なんだろうか? どっちかっていうと、これは俺が欲しかったりする物だと思うし……
「————琥珀さん、これ」
貰っていいかな、と言いかけて言葉を呑みこんだ。
……何もかも懐かしい。
たった一枚の古ぼけた写真。
けれどこれは、あの頃の思い出をカタチにした唯一つの写真だった。
「—————————あ」
けどこれが琥珀さんが探していた物なんだろうか? どっちかっていうと、これは俺が欲しかったりする物だと思うし……
「————琥珀さん、これ」
貰っていいかな、と言いかけて言葉を呑みこんだ。
□屋敷の物置
【琥珀】
琥珀さんは、確かに、瞳に涙を湛えていた。
「———————!」
琥珀さんは咄嗟に顔を逸らして、何事もなかったかのように笑みを浮かべる。
「————琥珀さん、あの」
【琥珀】
「あ、申し訳ありません。少しボウとしてしまいした」
「—————————」
そんな、琥珀さんらしくない誤魔化し方をされて、鈍感な自分でもようやく悟った。
この色あせた写真が、琥珀さんがずっと探していたものなんだって。
「あ、申し訳ありません。少しボウとしてしまいした」
「—————————」
そんな、琥珀さんらしくない誤魔化し方をされて、鈍感な自分でもようやく悟った。
この色あせた写真が、琥珀さんがずっと探していたものなんだって。
「……琥珀さん。この写真、預かっていてくれないかな。俺じゃなくしちまいそうだし、アルバム持ってないから」
【琥珀】
「え……いえ、それは、出来ません。これは志貴さんと翡翠ちゃんの写真なんですから、お二人のどちらかが持っているべきものです。わたしが、その、受け取るわけには参りません」
「だから、俺がアルバムを買うまで預かってくれないかってコト。あ、それと恥ずかしいから秋葉と翡翠にも内緒にしてくれ。……うん。できればずっと、二人だけの秘密にしておこう」
「え……いえ、それは、出来ません。これは志貴さんと翡翠ちゃんの写真なんですから、お二人のどちらかが持っているべきものです。わたしが、その、受け取るわけには参りません」
「だから、俺がアルバムを買うまで預かってくれないかってコト。あ、それと恥ずかしいから秋葉と翡翠にも内緒にしてくれ。……うん。できればずっと、二人だけの秘密にしておこう」
【琥珀】
「————————」
琥珀さんは何も言わない。
……こんな方便を重ねたって、琥珀さんは受け取らないかもしれない。
琥珀さんにとって、これは翡翠の大切な思い出だ。だから受け取るべきは翡翠なんだって分かっている。
けれど、それと同じぐらいに、これは彼女の見ていた夢だった。
子供の頃。
叶わないと悟りながら、ずっと翡翠を見つめていた彼女の、ずっとなりたかった姿なんだから。
琥珀さんは何も言わない。
……こんな方便を重ねたって、琥珀さんは受け取らないかもしれない。
琥珀さんにとって、これは翡翠の大切な思い出だ。だから受け取るべきは翡翠なんだって分かっている。
けれど、それと同じぐらいに、これは彼女の見ていた夢だった。
子供の頃。
叶わないと悟りながら、ずっと翡翠を見つめていた彼女の、ずっとなりたかった姿なんだから。
「琥珀さん。これ、預かってくれないか」
もう一度言って、古ぼけた写真を差し出した。
「—————————」
琥珀さんはまた、少しだけ泣きそうな顔をしたあと、
もう一度言って、古ぼけた写真を差し出した。
「—————————」
琥珀さんはまた、少しだけ泣きそうな顔をしたあと、
【琥珀】
「—————はい。それでは大切にお預かりしておきますね」
おずおずと両手で写真を受け取る。
そうして、抱きしめるように彼女は写真を胸に添えた。
「—————はい。それでは大切にお預かりしておきますね」
おずおずと両手で写真を受け取る。
そうして、抱きしめるように彼女は写真を胸に添えた。
「それじゃ俺はここで。夕食になったら居間に行くから」
「……はい。ありがとうございます、志貴さん」
「……はい。ありがとうございます、志貴さん」
琥珀さんの声に手を振って部屋を後にした。