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歌月十夜240

时间: 2019-11-29    进入日语论坛
核心提示:*s523そうして。長い夢から、目を醒ました。□病室 まず第一に思ったコトは陽射しが強いというコト。その次に思ったのが、まだ
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*s523
 
——————そうして。
長い夢から、目を醒ました。

□病室
 まず第一に思ったコトは陽射しが強いというコト。
その次に思ったのが、まだ朝になったばかりというコトだった。
「——————————あつ」
 窓から入ってくる陽射しのせいだろう、額はわずかに汗をかいている。
それでもその暑さは不快なものではなくて、逆に清々しささえ感じさせた。

と、ドアの外に人の気配。
ドアノブが回って誰かが入ってくる。
【アルクェイド】
「あ、起きてる」
ドアを開けるなり、アルクェイドはなんでもない事のようにそう言った。
「よっ、おはよう」
アルクェイドに対抗して、なんでもない事のように挨拶をしてみる。

【アルクェイド】
「………………」
アルクェイドはわずかに文句がありそうな顔をしてから、
【アルクェイド】
「おはよう志貴。その様子ならすっかり回復したみいね」
と、やっぱりなんでもない事のように挨拶を返してきた。

それが現実。
こいつのこういう所を見せられると、今までのことが夢のように思えて馬鹿らしくなる。
 
「—————————ぷ」
【アルクェイド】
「むっ。なに笑ってるのよ志貴。他に言うことあるんじゃない? まったく、こっちの気も知らないで、いつまでも呑気に眠ってるんだから」
「そうなのか。で、俺ってどのくらい寝てたんだ?」
【アルクェイド】
「えーっと、三日ぐらいかな。大した怪我じゃないのに目を覚まさなくてね、妹がすっごくやかましかったのよ」
「……ああ、そっか。アルクェイドが病院の手配なんてしてくれる筈ないもんな。なんだ、それじゃあ秋葉に連絡したのか」
【アルクェイド】
「別にしてないよ。志貴を病院に運んだのは車の運転手だし、妹は呼んでもないのに飛んできたわ」
「————む。それはまた、後で色々と言われそうな展開だな」

はあ、とため息をついて額に手をやる。
……頭は包帯でぐるぐる巻きにされている。
三日間も眠っていたせいか体は思いっきりだるくて、すぐには動かせそうにない。
とどめに、実はまだ頭がぼーっとしてまともに話せる状態でもない。

「わるいアルクェイド。ちょっと水持ってきてくれないか」
【アルクェイド】
「はいはい。あ、ついでに妹たちに志貴が起きたって伝えてくるから時間がかかるわよ」
「あいよ。別に喉が乾いてるわけじゃないから、急がず慌てず騒ぎにせず、ゆっくり行ってきてくれ」
【アルクェイド】
「むっ。まだぼーっとしているクセにその減らず口は健在なのね」
「ああ、おまえにだけはいつでも頭がハッキリしてるんだ、俺」
「———————」

お、なんか思わぬ効果があったのか、アルクェイドは大人しく飲み物を調達しに行ってくれた。
□病室
「——————はあ」
途端、意識が朦朧としてきたりする。
時計の針がよく見えない。
あれだけ深い眠りの中にいた後遺症か、まだ時間を感じる機能が麻痺しているようだ。
その証拠に、なんていうか。

【シエル】
「もう、相変わらず目が離せない人なんですから遠野くんは。たまには心配するこっちの身にもなってください」
シエル先輩は心底呆れながらも、ほう、と安堵の吐息を洩らしてくれた。
【シエル】
「けど遠野くん、良かったですねー。怪我で期末試験受けられませんでしたけど、夏休みに補習を受ければ大目に見てくれるそうですよ?」
「……うわ。それ、先輩が言い出した事じゃないだろうな」
【シエル】
「ほうほう。寝ぼけているようで勘は鋭いんですね遠野くん」
なんて、悪魔みたいな事を言ってくるシエル先輩も。

□病室
【秋葉】
「兄さん、お体の具合はどうですか……?」
不安そうに声をかけてくる秋葉。それにヒラヒラと手をふって健在ぶりをアピールする。
【秋葉】
「……そう、その様子なら安心ですね。お医者さんは目が覚め次第退院しても構わないと言っていましたから、さっさと退院の手続きをしてきましょう。ここにいると色々と来客が多いようですからっ!」
「ああ、そうだな。早く屋敷に帰らないと。やらなくちゃいけないことが溜まってる」

【秋葉】
「? 兄さん、やらなくちゃいけない事ってなんですか?」
「えーっと、そうだな。ほら、まずはフトンを干さなくちゃ」
こんなにいい天気なんだから勿体ないだろ、と秋葉に諭す。
納得がいかない顔をしつつ、まあ兄さんが言うのでしたら……と退室していく秋葉とか。

□病室
【琥珀】
「おはようございます志貴さん。何かご用はございませんか?」
アルクェイドばりに平静な琥珀さんは相変わらずだ。
「……そうだなあ、屋敷に戻ったら琥珀さんの料理が食べたいかな。三日間点滴ばかりだったから、体が食べ物を欲しがってる」
おもに肉。しかも焼肉。なにしろさんざん食いっぱぐれたから。
【琥珀】
「はい、かしこまりました。けどあんまり重いものはダメですよ志貴さん。病み上がりなんですから、胃に優しいものにしましょう。あの、なにかご要望はありますか?」

……ふむ。
胃に優しくて、食べやすくて、食べたいものといったら——�
「ウメサンド」
「は?」
「ウメ干しのサンドウィッチが食べてみたいんだけど、いいかな」
「————————」
琥珀さんはちょっと考え込んで、
【琥珀】
「はいっ、腕によりをかけてお作りさせていただきますね!」
と弾けるような笑顔で言ってくれたり。

□病室
【翡翠】
「———志貴さま、お目覚めになられたのですね」
緊張の糸が切れたのか、ほう、と大きく胸を撫で下ろす翡翠。
……にしても、病院にそのカッコウでくるのはどうかと思う。
「————やっ」
と、挨拶をしようとして少し眩暈がした。
まだ一人で体を動かせる状態ではないようだ。
【翡翠】
「志貴さま……? あの、まだお体の具合がよろしくないのでしょうか……?」

「ん……いや、ただの眩暈だから気にしないでくれ。だいたい三日も寝てたんだから、体のほうはずっと調子がいいよ。ただ筋肉が怠けてるだけで、しばらくすればすぐに動けるようにもなるし」
【翡翠】
「あ———それでしたら夏祭りには参加できるのですね?」
その声には期待が満ちていた。
……夏祭りって———ああ、もうじき神社でやる恒例のお祭りのことか。
秋葉たちは行った事がないっていうから今年は行こうって誘ったんだっけ。

「ああ。それまでにはきっちり回復してると思う」
【翡翠】
「————良かった。わたしも姉さんも、お祭りなんて初めてですから」
そう、滅多に笑ってくれないけど笑えばこんなにも優しい顔をする翡翠も。

□病室
 もう、誰が誰の後にやってきたか分からなくなるぐらい、頭はいまだ夢の余韻に酔っていたりするワケである。

「むぅ—————」
いかんなあ、と軽く頭を叩いた。
もう夏も間近。
陽射しはこれから一日ごとにもっともっと暑くなって、毎日はもっともっと忙しくなる。
だから呆けているのはこれぐらいにして、今すぐにでも起きあがらなくっちゃいけないだろう。
 
【アルクェイド】
「あれ? 妹たち帰ったの?」
両手いっぱいに抱えきれないほどのジュースを持ってアルクェイドが帰ってきた。
「ああ、色々と手続きがあるからってさ。まあ、あと一時間ぐらいはここでこうしているみたいだ」
【アルクェイド】
「そうなんだ。それじゃわたしも一度帰るわ。日中に出歩いていると余計に体力使うもの」
「なに言ってるんだ。これからもっと暑くなるんだから、これぐらい我慢できるようになっとけよ。その、夏になったら色々と連れまわすんだからさ」

さすがに照れくさいので視線を逸らしてぼやく。

「———そうね。楽しみにしてるよ、志貴」
これまたあっさりと返答してアルクェイドはドアへと歩いていく。
その背中へ、アルクェイド、と呼びかけた。
【アルクェイド】
「なに?」
「———心配したか?」
それは一瞬の事だったと思う。
アルクェイドは何を悩むのでもなく、それこそ心から、
【アルクェイド】
「うん、心配した!」
なんて、笑顔で言ってくれた。
 
□病室
白いカーテンが揺れている。
「—————さて」
そうして一人になって、ようやくさっきからこっちを見ていた彼女と目を合わせてみた。
「とまあ、以上が大まかな事情です」
窓際の棚の上。
陽射しを浴びながら丸まっていた黒猫は、こくん、とかすかに頷いたようだった。

「俺が運び込まれてからずっとそこにいたんだ。よく看護婦さんに見つからなかったなぁ」
いや、見つかる筈もないか。
秋葉や先輩でさえ気付かなかったんだから、もしかするとアルクェイドでさえ気付いていなかったかもしれない。

「———ところでさ、そこ暑くない? 俺はもう大丈夫だから、一足先に屋敷に戻っててもいいよ」
確か中庭の椅子の下が彼女のお気に入りだった筈だ。
黒猫は無関心なままで頭をあげて、からり、と前足で窓ガラスを開ける。実に器用だ。
「じゃあね。また後で会おう」
黒猫は頷きもせず窓から外へ飛び出した。
こっちのことなんて見てもいない、という無愛想さは健在という所か。

「———はあ。相変わらずなんだなレンは」
彼女が飛び降りた窓の外に視線を送る。
————陽射しはどこまでも白く、
じりじりと肌を焼くようだ。
 秋はまだまだずっと先。
彼女はずっと眺めていただけの世界へ飛び出して、おそらくは初めての夏を迎える。

「——————あつ」
額に浮かんだ汗を拭う。
窓の外は霞むような陽気で、アスファルトはゆらゆらと陽炎を吐き出している。
「さて、それじゃあ起きるとしましょうか!」
まだ満足に覚醒していない手足を無理やり動かして、思いっきり伸びをした。
ばきばきと鳴る背骨。
その痛みも今は始まりの合図のようで心地よい。

暦はじき八月へ。
際限なく暑くなっていくこの季節、今年も負けじとエンジンをいれなくちゃ。
命短し恋せよなんとか、のんびりかまえている暇なんてありゃしない。
「———ああ、今年は特に忙しそうだ」
 たるみきった手足を運動させながら青い青い空を見た。
 
 窓の外には白い雲。
ほんの少し眠っている間に、一度きりの暑い夏がもうそこまでやってきていた———
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