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ぼくのコドモ時間27

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:不可解なイーダボクはあがりかまちに腰かけて、ボーッとそこから続いてる細い道を見ていました。細い道は大家さんと共用の道にな
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不可解なイーダ

ボクはあがりかまちに腰かけて、ボーッとそこから続いてる細い道を見ていました。細い道は大家さんと共用の道になっているんですが、そこを大家さんのおばさんが、庭箒《にわぼうき》で掃除しているところなんです。
サッサッサッ、サッサッサとおばさんの箒の音だけがしています。あれは春のことだったのか、冬のことだったのか、それとも夏か秋かもわからなくなってしまっているのに、その時の気分だけはムヤミにクッキリと鮮明に覚えているんです。
いったいなんで、ボクはあんなことをしてしまったんだろうか? と思い出すたんびに不思議なんですが、ボクはその道を掃いてるおばさんの後ろ姿をボーッと見ているうちに、その大きなお尻に、
「イ——だ!」と言いたくなってしまったんです。言いたくなったというより、イ——だとしたくなった。コドモがよくする、イヤなやつやきらいなやつにするあの顔です。顔じゅうを中心部に寄せてシワだらけにして、その|ヤ《ヽ》な対象へ思いっきり突き出す、アレです。
ところが、そのおばさんはちっともヤなやつでもきらいなやつでもなくて、むしろ、とってもいい人だとボクが思っている人だったのです。なんでそんな気持になったのか、その時もわからずに変な気分だったんですが、ともかく、そのアイデアを実行したくてしかたなくなってしまった。
一つには、おばさんをイヤでもきらいでもないというのがキッカケでもあったのです。そうして、おばさんがこちらに気がついていないというのも一つの要因だったかもしれない。もし万一、イーだ! とこちらでやっているところを、おばさんが振り返りでもしたら〈大変なことになる〉とボクは思いました。
で、ついにやってみずにはいられなくなってしまったのでした。おばさんはサッサ、サッサとあいかわらず余念なく庭掃除をしています。時々草をむしったり、チリ取りでゴミを集めたりしながら、後ずさりしながら、こちらに近づいてきます。
声には出さず、顔だけを、軽く「イーだ」してみました。瞬時に通常の顔に戻せるように細心の注意を払っています。そしていくらもしないうちに、パッと�通常顔�に戻しました。こんどは舌を出して「ベーッ」としてみました、すぐまたパッと顔を戻します。
おばさんは何も気がつかずに、まるで何事もない様子です(もちろん、おばさんにとっては何事もないんですが)。そんなふうにしてまるでスリルを楽しむように、イーだのベーだのという顔をボクは何度もしていたんですが、その何度めかのイーだをしたとたんに、
クルリ……
とおばさんがこっちを振り向いて、たしかに、ハッキリとそれを見られてしまった! のだった。そう、万が一のことが、あっさりと、なんの前ぶれもなしに、イキナリ起こってしまったのです。この場をどうとりつくろうんだ!? とボクの頭は大汗をかいたようになりました。
なにしろボクは、その時にコドモでもなんでもないんです。もう高校も卒業して、ハタチになろうかという、大人なんですからね。何が起きたのかおばさんのほうだって信じられなかったでしょう。両方であわてているうち、おばさんは|何も起こらなかった《ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ》ことにしてクルリとまた、むこうを向いてしまったのでした。結局その後、このことのお詫びもしないままボクはそこを引っ越してしまうことになってしまうのですが、その後ボクは何度も〈いったいなんで、あんなひどいことをしてしまったんだろう〉と思い返したもんでした。おばさんの、いわれのない仕打ちをうけた不気味な悲しみや、不安を思いました。悪いことをしたと胸が痛みました。
ところがこのことで、ボクは自分の不可解さを感じることができた、とも思っているんです。おばさんに、ほんの少しでもウラミがあったり、不快な感情を持っていたのなら、それでわかりますが、何もそんなことはなかった、とてもいいアンバイのご近所関係ができていた。おばさんもボクをふつうに礼儀正しい青年として見てくれていただろうっていうのに。
コドモのころのようにしてみたかったんだろう……と最初はそのように自分の心理を説明しようと思いました。コドモというのは、たしかに、よくアカンベーだのイーだのをします。コドモのころによくしていたように、何も考えずにそんなことをしたかったんだと思おうとした。
そういえば、一人暮らしをしていたおばあちゃんをハヤして、おこったおばあちゃんが箸を持ったままどなり込んできたことがあったっけ、その前の日には、おばあちゃんのところで、庭でとれた落花生をごちそうになって、仲よしになってたっていうのに……。あの時タカコさんが平あやまりにあやまりながら、おばあちゃんが帰ると、
「コドモの言うことに……あんなに本気にならなくたって……」と小声で言ってるのを聞いて、コドモのボクが何か割り切れない不機嫌を感じていたのを思い出してしまった。
年長の友だちの家へ行って、そこの男のコを機嫌よく遊ばせているうちに、そのコがなんの前ぶれもなく、食べていたビスケットを、ボクの顔めがけて吐きつけた時のことを思い出してしまった。
コドモの気分て、なんだ? 誰彼なく、ただ単に唐突にアカンベーだのイーだのビーだのを、コドモはしていたのだったろうか? 自分でしたことも、自分がされたことも不可解だったように、コドモのアカンベーは、そんなに簡単なものではなかったのかもしれないな、と思ったのでした。
〈なぜそんなことをする!?〉と大人であるボクは思うのだ。信じられん! ボクが親であったりすればどなるだろう。頭をピタリと張るかもしれない。あやまりなさい! バカヤロウ。
大人は複雑だがコドモは純真《ヽヽ》で正直《ヽヽ》で簡単《ヽヽ》である。アカンベーはそのように簡単で正直で純真なコドモの気持の表れなのだと大人は往々まちがうが、それは大きなまちがいだろう。
とっても不可解な、それを深く考えていると�コワイ考え�になってしまうような複雑なものを、コドモは大人と同じようにかかえているのじゃないだろうか。
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