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ぼくのコドモ時間44

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:タケシくんの恋人タケシくんはボクより五歳も年上でしたから、もちろん「くん」づけで呼んだりはしてなかった。コドモのころは「
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タケシくんの恋人

タケシくんはボクより五歳も年上でしたから、もちろん「くん」づけで呼んだりはしてなかった。コドモのころは「タケちゃん」でした。アレ?「ちゃん」も「くん」も別に年上呼ぶのにふさわしくはありませんね。
コドモ同士の上下関係って、そういえばそんなにちゃんとしてなかったかもしれない。ボクは「ボーヤ」と呼ばれてて、それはヨチヨチ歩きみたいな、ほんとにモノスゴイ年下のコにも「ボーヤ」と呼ばれてたんで、コドモは敬語とか敬称と縁がなかったな。
「お前、言葉に気をつけろよ」とかあんまり言わなかった。もう少し年かさになって�不良�なんかになると、こういうことにとても律気《りちぎ》になりますね。
「コラ、俺を誰だと思ってんだァ。えーっ口のききかた知らねえのか」ってスゴんだりしますね。で、これもいつまでもやってると�コドモっぽい�ことになってしまいます。それはまァいい。コドモのころの話です。
で、ボクはタケちゃんとよく遊びました。タケちゃんがボクと遊びたがったからだ。
「ボーヤ遊びに来いよ」と言われてタケちゃんのところへ行く。タケちゃんのお父さんは大工さんで、お母さんも昼間はいないようだったから、どこかへ働きに行ってたかもしれない。
タケちゃんの家のアルバムを見せてもらったことがあって、それがけっこうおもしろかったのもある。呼ばれるとちょくちょく、そうやって遊びに行きました。アルバムっていうのは、タケちゃんのお父さんが若いころに撮った鼠小僧の扮装でキメてたりするっていうヤツで、お父さんは役者さんだったわけじゃないんですが、ちょっとまァ、オチャメだったんでしょうね。千両箱持つかわりに大工道具の箱しょったりしてる。そんな写真が貼ってあって、ボクはけっこう気に入っていた。
タケちゃんにしたら、もう中学一年ですから、小学生をからかったりするおもしろさもあったかもしれない。宇宙の秘密を教えてくれることもあるが、生命の神秘について質問をしたりもします。
「ボーヤさァ、赤ん坊はどうして生まれるか知ってるか?」とタケちゃんは、二つ年下で五年生のカッちゃんと二人でニヤニヤしながら質問します。タケちゃんは、こういう話を�科学的�な顔ではできなくて、すごくダラシナイ笑い顔になってしまうタイプです。そのせいで、姉チカコや同い年のイトコの純子ちゃんには、
「タケちゃんてちょっとヤラシイから|ヤ《ヽ》」と言われていることをタケちゃんは知らない。
「そりゃあケッコンをするからだ、親が」とボクは答えます。
「ホー!!」と二人は顔を見あわせて感心してます。
「知ってるんだ……」
「そんなのジョーシキだよ」とボクは得意です。年上が感心してるからね。カッちゃんはあまりニヤニヤしません、マジメな顔をしていて、
「でもさァ、結婚の意味がわかってるのかなボーヤは。ボーヤ、じゃあ結婚って何だ?」
「ケッコンはケッコンだ、ケッコンシキしてフーフになる」
「で?」
「ケッコンしてコドモができる」
「なんでケッコンするとコドモができるの?」とカッちゃんはあくまで科学的。
「それは、ケッコンして、お父さんとお母さんが寝るからさ」
「オオーッ!!」と、二人はまた感心したのである。実は、ボクはここのところが本当はよくわかっていないのだ。大人の話かなんかで「寝るとコドモができる」という話は聞いている
が、どうもナットクがいかない。なんで、寝るとコドモなんだ? と思っているがわからない。
「ボーヤさァ、寝るってどういうふうに?」と言ってタケちゃんは、さらにだらしない笑いかたになってしまっている。どうもこれは、ヤラシイ話らしいなとは気がつくからくやしいけれども、わからないのである。
「ねえ、どうやって寝るの」
「どうって、ふつうにさ、ふつうに寝る」
ここで、タケちゃんとカッちゃんは大笑いする。あはは、まだわかってないんだ。ヤッパリな。ボクは意地っぱりだから、それじゃあどういう寝かたをするのか二人にはきけないのだった。
「ハハハ、まだ二年生だもんな、まだ知らなくてもいいだろう」とバカにされたみたいなので、
「わかってるよ、そんなこと」と言ってしまうのだ。だから生命の神秘は五年生になるまで結局わからなかった。五年生の学校帰り、アパート住まいのムラマツくんが、犬がさかっているのを指さしてポツリと、
「人間のマネしてる」と言うのでショックだったのだった。
タケちゃんが、しばしばボクを呼んで、プロレスごっこをしたりするのには、目的があった。もちろんプロレスごっこも楽しんではいたのだが、実は寝技にもちこむと、断然ボクが強くて、タケちゃんは必ず「まいった」になってしまうのだ。足をヘビみたいにからませて締めると、ものすごくきくらしくて、大騒ぎして、まいってしまう。中学生をまいったさせるのは気持いいから、タケちゃんが呼ぶとボクは必ず遊びに行ったのだった。
プロレスが終わると、おせんべなど出しながらタケちゃんは、なにげなくキリ出すのだ。
「純子ちゃんどうしてる?」
タケちゃんはどうも純子ちゃんが好きなのだ。どうしてるといったって、立ち入ったことを知ってるワケじゃない。チカコと純子ちゃんはタケちゃんがヘラヘラ笑ってる顔が、スケベったらしくて「ヤ」と言ってるのだが、そんなことカワイソウだから言えない。
「こんど、純子ちゃんに、タケちゃんが好きだって言っといてやろうか?」と言うと、タケちゃんはあわてて笑って、
「いいよお、そんなんじゃないよお」と言うのである。タケちゃんはテレかくしにレコードを持ってきてきかせてくれるのだった。いま思うと、その歌詞はあまりにも心境にピッタリしていたと思う。
※[#歌記号]心で好きと叫んでも 口では言えず……
島倉千代子の歌謡曲だった。小学生のボクは〈こんな女の歌……〉と吐き捨てるように思っていて、ものすごく硬派なのだった。
「こないださァ、まちがっちゃってさァ、タンスの段まちがってさ、サチコのパンツはいちゃったんだよ、女のパンツってツルツルしててヘンなんだよな」
サッちゃんはタケちゃんの妹でボクより三つくらい年上だった。いま思うと、タケちゃんをもう少し尊敬してたら、ボクもかなり軟派少年になってたかもしれない。ヤラシイ関係にもう少し早いとこ明るいコドモになっていたのになァ、と思う。
ボクが中学生になったころ、タケちゃんは信用金庫に勤めるサラリーマンになって、ポマードつけて通勤していた。「マジメな顔して窓口に座ってたよ」とオバさんたちがうわさしてるのを聞いたりした。そのころはもうプロレスも流行らなかったし、タケちゃんに声をかけられることもなくなっていて、ボクはいよいよ硬派っぽい中学生だった。
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