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ぼくのコドモ時間45

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:おならの人良夫くんは、なぜか年下のコドモにも、ヨシオと呼びつけにされていた。それはまだいいので、大部分のコドモは良夫くん
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おならの人

良夫くんは、なぜか年下のコドモにも、ヨシオ……と呼びつけにされていた。それはまだいいので、大部分のコドモは良夫くんを、
「おなら」と呼ぶのだった。良夫くんが比較的ひんぱんに、おならをしたのが原因だろう。
「あ、またおならがおならした!」と言ってコドモがはやしても、良夫くんは笑っている。笑っているだけで切り返しを言ったり、ウルセェナとか凄んだりしないから、
「おなら、おなら」とコドモはさらにはやすのである。
良夫くんはボクより三つ年上で、とくに勉強ができるでもできないでもなく、相撲が弱いでもなく強いでもなく、格別軽んじられる原因はなさそうなのに、こうなったのは、ガキ大将グループの主流でも反主流でもなかったのと、何を言われてもヘラヘラ笑ってるのがいけないのだ。だからなめられるんだ、年下にと、ボクははがゆい気持だったのだ。
良夫くんとは反対に、ボクはなんだか妙に特別扱いのようなポジションにいて、ガキ大将のグループの主流からも、反主流からも、いわば大事にされていた。いま思えばガキ大将連と姉たちが同い年だったのと関係があるかもしれない。
良夫くんにボクが、じれったい思いをしたのは、きっとどこか良夫くんを気に入っていたのだろう。良夫くんは田舎っぺで、のろまで、ビッとしてないから、みんなにバカにされているが、なぜだかボクは六軒長屋のいちばん奥に「良夫ちゃん! あそぼ!」とよく遊びに行ったのだった。
良夫くんの家は、共稼ぎだったのか、それとも母子家庭だったのか、よく覚えがないが、とにかく家には大人がいないので、その六畳一間のアパートに上がって、敷きっぱなしを丸めただけのフトンに寄りかかって、話をしたり、相撲をとって、うっちゃりの稽古をしたりしたのだ。
「良夫ちゃん、宇宙ってどうなってるか、知ってるか?」と、小学二年生のボクは五年生の良夫くんに言ったのである。
「どうなってる?」と本気できくので、ボクはこの間、中学生のタケちゃんに聞いた通りに言うのである。
「えーとね、地球があって月があって、銀河系があるんだ。で、そういう銀河系みたいのがいっぱいいっぱいあって小宇宙になってる」
「へえ、どのくらいかな」
「えーとね、何万億千百!」と言うと良夫くんは、
「うへえー!」と言ってフトンにバッタリ倒れるのだ。
「それだけじゃない!」とボクはうれしくなってくるのだった。
「小宇宙がね、銀河系みたいのがいっぱいつまった小宇宙がね、いっぱいいっぱいあってね、大宇宙があるの」
「へえ、どのくらいかな」
「何億千万百!!」とボクが断定すると良夫くんは、またも大げさにおどろいて、フトンめがけて、
「うっへー何億千万百ー!」と言いながら、バッターンと倒れ込むのだ。ボクはうれしくなって、タケちゃんに聞いた話を変えたくなった。
「そんなんでオドロイてちゃダメだ! 大宇宙はね、大大宇宙っていうのに、ふくまれてて、大宇宙がいっぱいいっぱいいっぱい集まって大大宇宙になってるんだから!!」
「いくつくらいかな」と良夫くんはおどろく用意をして待っているのだ。
「何億億億億千万百!!」
「うっっへえええ〜〜バタン!」
「何億億億万千!」とボクは言って、良夫くんのように、おどろいてフトンにバッタンと倒れ込むのである。
「何億億……バッターン」と二人でそうやってるとすごく楽しいのだ。
ひょっとすると、あれは良夫くんがからかっていたのかな、といま思い出して考えたが違う。良夫くんはそういう性格じゃないのだ。
「きのうの宇宙の話してよ」と次の日には良夫くんから注文がある。良夫くんは、ボクに大宇宙の数を言ってもらって、おどろいてひっくり返るのを気に入ってしまったのだ。それを見てボクが喜んで笑うのが気に入ってしまったのかもしれない。
ボクはコドモだったが、まるでコドモみたいに同じことを何度もくり返して、ゲラゲラ笑うのが好きだった。ボクはコドモだったがそのころは自分がコドモとは思っていなかった。
良夫くんは、ひょっとすると、ボクのごきげんをとりむすんでいたのかもしれない。なんとなく良夫くんにボクがひかれていたように、良夫くんもボクを好きだったのかもしれない。いや良夫くんは、なんでもヒトが喜んでいるのが好きだったのかもしれない。
だからボクにはチクリと心の痛む思い出がある。何かつまらないことでボクがヘソを曲げてしまって、良夫くんが困っているのである。ボクは自分で、なにもこんなにおこらなくてもと内心は思っているのに、行きがかりで、素直になれないでいる、その時の気分が妙に残っているのである。
「ゴメンナ、ゴメンナ」と良夫くんはあやまって、ボクのキゲンを直そうとしているのである。
「カンベンナ、カンベンナ」とあやまりながら、
「ヤダカ? ヤダカ?」と良夫くんは言っていて、そのカンベンするのがイヤデスカ? という意味なのだろうか、「ヤダカ?」と質問している、その田舎じみた言いかたが、なんだかとてもせつないのだ。
なんで「ヤジャナイヨ」とすぐ言ってあげなかったかな、とボクはその時もきっと思ったし、それからずっと思っていた。それは下手に出られて、ついつけあがってしまった恥ずかしさだった。
下手に出てればつけあがりやがって! ってセリフは、こういう時には、きっと親切なコトバである。ボクにはこの後の良夫くんの思い出がプッツリなくて、いきなりポッと、六軒長屋の元・良夫くんちの畳に土足で立っている記憶だけがある。良夫くんは引っ越していってしまったのだった。
あの時たしかに、ボクは良夫くんを手下にした気分を楽しんでいたのだろう。せっかくあやまっても、ゆるしてやらないワガママを楽しんでいたのに違いない。そういう良夫くんを、イジメて喜んでいたのに違いない。
だから田舎くさい、なまったセリフが耳にこびりついてしまったのである。
「カンベンナ、ヤダカ? ヤダカ?」と言ってる良夫くんの顔は、情けないくらいにお人好しなのだった。
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