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笑う茶碗11

时间: 2019-12-05    进入日语论坛
核心提示:長瀞のロウ石長瀞へ臘梅を見にいったのである。臘梅はロウバイ科の落葉灌木で、中国の原産。高さ約三メートル、葉は卵形で両面と
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長瀞のロウ石

長瀞へ臘梅を見にいったのである。臘梅はロウバイ科の落葉灌木で、中国の原産。高さ約三メートル、葉は卵形で両面ともざらざらしている。冬、葉に先だって香気ある花を開く。外側の花弁は黄色、内側のは暗紫色で、蝋細工のような光沢を有し、後、卵形の果実を結ぶ。観賞用。唐梅《からうめ》、南京梅。
というのは辞書に書いてあったのを引き写したのである。まァ、そういう花がいま咲いてる。
「香気あるってさ」
とツマがいった。わが家は全員、香りのある花が好きだ。梅、沈丁花、くちなし、泰山木、蓮、咲いたら「嗅ぎにいく」。
ロウバイについては、話には聞いていたが、まだ、嗅いだことがない。「是非いかなくては」というので、計画が進行しているという。
「温泉つきだ」
もちろん、私に反対はない。こうした計画のあるおカゲで、私は時々、骨休めができるのである。
毎日、仕事に追われていて、貧乏性ときてるから、だまっているとのべつまくなしに仕事をしてしまう。現に今だって、三連休を仕事でつぶしているのだった。
当日は、仕事のキリがつかず、出発をだいぶ遅らせてしまった。といっても、長瀞といえば、池袋から東上線か西武線にのってスグだろ、と思っていたらそうでもなかった。
長瀞、けっこう奥なうえに、外の景色の雪がどんどん深くなっていく。けっきょく第一日は宿について、温泉に入り、めしを食って寝るダケということになった。
もっとも、第二日目だって、アレコレする予定はない。臘梅の咲いてる山に登って、匂いを嗅いでくる、ダケである。
長瀞には、小学校の三年生のころにだか来たことがある。岩畳といわれている名所で記念写真を撮った。撮り終って「ハイじゃあバスに戻るー!」と先生にいわれている時に、岩の上から、少し身を乗り出して、川を見たと思う。
深い緑色をしていた。すると、川の向う側を、全員、笠をつけた舟客を乗せて、細長い和舟が通り過ぎていくのが見えた。
長瀞の思い出といったらそれだけである。あとは何を見たのか、なにをしたのか、まるで記憶がない。
いや、ひとつだけあった。おみやげに、ロウ石の置き物を買ってきたのだ。が、買ったところの記憶はない。
しかし確かにロウ石の置き物は、しばらく机の上におかれていた。山があって、水車小屋のあるような、山があって蓑笠つけたような人物が彫られてあるようなそんなヤツ。
何が彫ってあったのか、アイマイなのは、いくらもしないうちに、石にぶつけて、小さくして、ロウ石として実用に供してしまったからである。
ツマは長瀞に来たことはあるが、一切合切、何も覚えていないという。記念写真もない、来なかったも同然だという。
「長瀞って、つまり何?」
と聞いた。オレに聞かれても……。
埼玉県秩父郡東北部の名勝地。荒川の峡流に沿い、灰緑色の結晶片岩の垂直の節理が水蝕によってあらわれ、特有な峡谷風景を形成している。
と、辞書には載っている。
ロープウェイの客は、全員、我々より年上だった。だったがみんな、あたかも遠足の小学生のように陽気だった、というかヤカマシかった。
ロープウェイに乗った途端に「臘梅の香りがする!」と主張する超能力者のおばさん、とか、ロープウェイを作る人は、こんな山の上まで、ワイヤーとか持ち上げて大変だ、
「ヨーイなこっちゃないぞコレ」
と何度も主張するオジイちゃんとかだが、私たちも遠足気分であるから、オジイちゃんも、オバアちゃんもカワイイのである。
ロープウェイを降りると、そこはもう、ほぼ山頂である。山道が、あと少しだけあって、それを登っていく途中に、臘梅が植わっている。
快晴の青空をバックに、黄色のつぼみと花が美しい。が、香りの方は期待が大きすぎたせいか、今ひとつ。山頂で敷物をひろげて、用意の酒を塩豆をアテに飲む。
日なたぼっこをする感じで、なかなかいい。のんびりする。写真撮影が趣味の老夫婦、登山好きの老夫婦、おしゃべり好きの婦人会、などが通りすぎ、あるいはそばで、同じように敷物を敷いて坐り込んだりする様子をみながら、だらだらと一時間ばかり過ごした。
下山する時、嗅ぎおさめに、いくつか思いっきり鼻から吸い込む、たしかに芳香があるが、ツマも私も、白梅の香りの方が好みだという結論に達した。
駅前で、昔ながらのおみやげ屋さんを見つける。ウィンドウに飾ってあった、箱の印刷が褪色してしまった「きせかえエミちゃん」対象年齢三歳以上、というのにツマは興味を示して購入。八〇〇円。
私はビニール袋に入った、不定形のロウ石のかけらを買った。一袋一〇〇円。
電車の中でツマが主張した。
「暴走族は、スプレーでいたずら書きをやめて、ロウ石で書けばいい」
そりゃいい考えだと、私は賛成した。
そのへんで拾ってつめたような(枯葉が一枚混入してる)一袋一〇〇円のロウ石は、まだ未開封で机の上に置いてある。
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