突然だけど、『鉄拳』はもう見たかな? あたし、取材兼ねてボクシングの試合シーンのエキストラやりに行ったんだけど、面白かったー。仕上がりも、うーん、男の子がこしらえた映画だわ、って感じで、好き。「オレはこっち行きたいんやから。行ったらゼッタイあんたも面白がるはずやから。来やな、ほら!」って、好きになったばかりの強引な男の子(それも関西出身。坂本順治監督は関西の人なのよ)から手を引かれて前のめりに走っているような気分。うふふん。余談だけどあたしは主演の大和武士くんと誕生日が同じだ。試写のあとのパーティーで彼にそう言ったら、
「オレ誕生日変えよッ」
だってさ。まったくもう、そのまんまなやつなんだから。でも、いい男だし、許す。
男の子に振り回されるのは、大変だけどやっぱり気持ちいい。振り回されるってことはさ、お互いの価値観のものさしでちゃんばらやってるまっ最中ってことじゃん? これがうまく引き分けになるまで戦い続けられたら、最高だよね。でも、ことばの選び方って、ほーんと、難しい。何時間も何時間も話して、自分の言うことは言ったぞってつもりで帰ってきて、ふと一人になったら、
「どうしてあんなふうにしか言えなかったんだろう、違うわ! 私ったらなんてなんて素直じゃないのかしら、あああああああああ」
とか思って、死ぬほど後悔したりする。そんなときは、もしかしたら相手のほうもそうなのかなあと考え直したりするんだけどさ……。時間もかかるものなのね、しくしく。
そう考えたら、何度でもこっちの話につきあってくれてる男の子って、素敵ね。
今は幸運にも、「女とは真面目に話するもんじゃねえよ」なんて男は周りにいないけど、よく考えたら、昔はいた。なんでだろ。単に私が男からなめられてた(違う意味にとらないようにね。そんな人はいないか)ということなのかしらん。まあ別にいいけどね。それも現実よ。
そういえば漫画家になって間もない頃、すごく好きだった人がいてね。その人の仕事は今でも嫌いじゃないけど、その頃はもう情熱的に好きだったの。いろんな仕事してて、いろんなこと教えてくれるので、何かというと電話して相談したし、その人が何かやるたんびに、何処へでも出かけて行った。イベントとか、バンドとかね。
その日も彼があるオープンスペースで編集作業をするという仕事に取り組んでいたので、差し入れ持って行ったわけ。勿論その人のことすごく尊敬してたから、最初はそーっと離れたとこで見守っててさ。そしたら、彼のバンドのヴォーカルの人が来たので私は密かにわくわく。で、しばらくしてから、ごあいさつして、差し入れを渡したの。そしたら、彼がそのヴォーカルの人に私を紹介してくれたんだけど、
「この子ね、○○○のファンの子(○○○は彼のバンドの名前)」
って言ったのよ。そこで、舞い上がってた私は、はっと正気に戻った。
私はその頃すでに漫画家だったし、当然その前からバンドもやっていたので、紹介されるときはそういうことを言ってもらえるものだとどっかで思ってたの。でも、それは身のほど知らずというものだったわ、と現実を知った。漫画家と言っても駆け出しだったし、バンドももちろん完全無名バンドだし、そうだ、これが当然なのよそうなのよと思いつつ、それでも好きな人の仕事を少しでも見学できてよかったなっと、家に帰った。
「どうしてあんなふうにしか言えなかったんだろう、違うわ! 私ったらなんてなんて素直じゃないのかしら、あああああああああ」
とか思って、死ぬほど後悔したりする。そんなときは、もしかしたら相手のほうもそうなのかなあと考え直したりするんだけどさ……。時間もかかるものなのね、しくしく。
そう考えたら、何度でもこっちの話につきあってくれてる男の子って、素敵ね。
今は幸運にも、「女とは真面目に話するもんじゃねえよ」なんて男は周りにいないけど、よく考えたら、昔はいた。なんでだろ。単に私が男からなめられてた(違う意味にとらないようにね。そんな人はいないか)ということなのかしらん。まあ別にいいけどね。それも現実よ。
そういえば漫画家になって間もない頃、すごく好きだった人がいてね。その人の仕事は今でも嫌いじゃないけど、その頃はもう情熱的に好きだったの。いろんな仕事してて、いろんなこと教えてくれるので、何かというと電話して相談したし、その人が何かやるたんびに、何処へでも出かけて行った。イベントとか、バンドとかね。
その日も彼があるオープンスペースで編集作業をするという仕事に取り組んでいたので、差し入れ持って行ったわけ。勿論その人のことすごく尊敬してたから、最初はそーっと離れたとこで見守っててさ。そしたら、彼のバンドのヴォーカルの人が来たので私は密かにわくわく。で、しばらくしてから、ごあいさつして、差し入れを渡したの。そしたら、彼がそのヴォーカルの人に私を紹介してくれたんだけど、
「この子ね、○○○のファンの子(○○○は彼のバンドの名前)」
って言ったのよ。そこで、舞い上がってた私は、はっと正気に戻った。
私はその頃すでに漫画家だったし、当然その前からバンドもやっていたので、紹介されるときはそういうことを言ってもらえるものだとどっかで思ってたの。でも、それは身のほど知らずというものだったわ、と現実を知った。漫画家と言っても駆け出しだったし、バンドももちろん完全無名バンドだし、そうだ、これが当然なのよそうなのよと思いつつ、それでも好きな人の仕事を少しでも見学できてよかったなっと、家に帰った。
時は経ち、ある時ある所で、私は彼のバンドについて語る機会があったので、こう言った。
「私は昔から○○○のファンで、ずっと応援してました。いいバンドです」
そしたら、それを聞いた彼は何故か、
「内田さんたら、○○○の『ファンです』だなんて、すごい言い方するんだもん。ファンだなんて、言い過ぎだよ」
と、驚いていた……。
あのなあ。
私はあんたのことが大好きだったんだよーっばかやろう! いくら血液型がO型だからって(なんだろこれ)、自分の言葉にちったあ責任とれ! ばかばかばかばかーッ、もう知らないッ!
なんてね。今考えたら、最初のときは、バンドのメンバーにいいとこ見せたかったのかもしんないし、その次だって、単に照れてたのかもしんないけどさ。でも、ねえ。
私だって、余りにも違う業界の人と話するときは、ほんとはその子の仕事が大好きなんだけど、たまたま私の仕事を手伝いに来てくれてる同業者のことを、
「助手も同席していいですか?」
とか言ったこともあるけど(ごめんね、説明に時間がかかるのわかってたからめんどくさかっただけなの。愛してるわよ)、やっぱ、今考えても「ファンの子」ってのはさ、あまりにも迂闊じゃねえの? それも、「うちのバンドの」でなく「○○○の」とバンド名で言われたのがけっこうインパクトあった。そのあとも、
「君のバンドの曲書くよ、オレ」
って電話かかってきてさ。その頃彼のC調さが流石《さすが》のあたしもだいぶわかってきてたから、一応歌詞書いて渡したあと、あてにはしない気でいたんだけど、結局彼、自分の関わってる劇団のチラシに広告入れさせる(つまりはカンパ)のが目的だったのよう。だって、あたしがその広告入れたあと、連絡来ないもん。頼むから、情けない変わり身だけは、やめてくれよう! 男の子に、どんなに振り回されても構わない。からいばりでも、意地っぱりでもいい! 情けない方向にごまかすのだけは、勘弁してよ。
でも、その人は未だにその調子だけどね。もう、まっ、いいか、そういう人なんだ、という所まで、あたしも来てるけどね。こないだもどっかのパーティーで、
「バンドお互い続いてるよね」
「昔対バンやった子たちなんか、どんどん解散したり辞めてるけど、なんでだろうね」
「ね」
なんて話したけどね。ちぇっ。でももう一緒の仕事はないぞ、きっと。多分。絶対。そうあって、欲しいぞ、まったく。
「私は昔から○○○のファンで、ずっと応援してました。いいバンドです」
そしたら、それを聞いた彼は何故か、
「内田さんたら、○○○の『ファンです』だなんて、すごい言い方するんだもん。ファンだなんて、言い過ぎだよ」
と、驚いていた……。
あのなあ。
私はあんたのことが大好きだったんだよーっばかやろう! いくら血液型がO型だからって(なんだろこれ)、自分の言葉にちったあ責任とれ! ばかばかばかばかーッ、もう知らないッ!
なんてね。今考えたら、最初のときは、バンドのメンバーにいいとこ見せたかったのかもしんないし、その次だって、単に照れてたのかもしんないけどさ。でも、ねえ。
私だって、余りにも違う業界の人と話するときは、ほんとはその子の仕事が大好きなんだけど、たまたま私の仕事を手伝いに来てくれてる同業者のことを、
「助手も同席していいですか?」
とか言ったこともあるけど(ごめんね、説明に時間がかかるのわかってたからめんどくさかっただけなの。愛してるわよ)、やっぱ、今考えても「ファンの子」ってのはさ、あまりにも迂闊じゃねえの? それも、「うちのバンドの」でなく「○○○の」とバンド名で言われたのがけっこうインパクトあった。そのあとも、
「君のバンドの曲書くよ、オレ」
って電話かかってきてさ。その頃彼のC調さが流石《さすが》のあたしもだいぶわかってきてたから、一応歌詞書いて渡したあと、あてにはしない気でいたんだけど、結局彼、自分の関わってる劇団のチラシに広告入れさせる(つまりはカンパ)のが目的だったのよう。だって、あたしがその広告入れたあと、連絡来ないもん。頼むから、情けない変わり身だけは、やめてくれよう! 男の子に、どんなに振り回されても構わない。からいばりでも、意地っぱりでもいい! 情けない方向にごまかすのだけは、勘弁してよ。
でも、その人は未だにその調子だけどね。もう、まっ、いいか、そういう人なんだ、という所まで、あたしも来てるけどね。こないだもどっかのパーティーで、
「バンドお互い続いてるよね」
「昔対バンやった子たちなんか、どんどん解散したり辞めてるけど、なんでだろうね」
「ね」
なんて話したけどね。ちぇっ。でももう一緒の仕事はないぞ、きっと。多分。絶対。そうあって、欲しいぞ、まったく。