仕事の途中、深夜の渋谷にアシスタントとマネージャーとの三人で軽食《かるメシ》しに行ったら、ある店の前に二十歳前後の女の子が落ちてる。
「おいおーい、こんなとこで寝るなよう。風邪ひくぞう」
と体をぽんぽん叩いたけど、ぐったりしてて起きない。なおも声をかけると、少しして目だけ開けた。
「家どこ?」
と聞いたら、何かふにゃふにゃ言ったけど、よく聞き取れない。どうしたものかと思っていると、道のむこうからもう一人女の子が走り出てきた。彼女の連れらしい。
「あっすいません。電話かけに行ってたんです。ご心配かけました」
そうかそうかと彼女にまかせてその場を離れたが、あれがもし男の子だったら、いくら私がもの好きでも声をかけなかったと思う。やっぱり道に倒れてるなら女の子のほうがいいよね、なんとなくだけど。