タクシーに乗ると、たまに運転手さんの名前に目が行く。名前のそばの顔写真も、なんか、いいしね。こないだふと見たら、名字が「丹間」ってなってる。「丹波」じゃなくて、何度見ても「丹間」。思わず「これ、たんまさんって読むんですかあ?」と聞いてしまった。すると、その運転手さんは静かに、
「ああ、そうですよう。よく聞かれますけどねえ。東京二十三区内で私んとこだけみたいですよ」
「はあ、そうですかあ」
私はなんだか楽しくなってしまった。どうしたって、どっかのおじさんが、
「運転手さん、ちょっとタンマ。なーんちゃって」
なんて嬉しそうに言ってるところを想像してしまう。そのあと丹間さんは、もう数えきれないくらい同じことを聞かれてるだろうに、ご出身はどちらですかだの、タンマくんて漫画ありましたよねだのという私の質問に快く答えつつ、目的地まで送ってってくれたのだった。