ウナギが、夏のスタミナ保持によいことは、万葉のむかしから、認められていたようです。吉田石麿《よしだいそまろ》というひとは、ひどくやせこけていて、いくら食べても、いっこう太らない。そこで、大伴家持《おおとものやかもち》がひやかして、「ひどい夏やせですな。どうです、ウナギでも召し上がったら……」「ご忠告ありがとう。もっとも、やせていたって、命あっての物種《ものだね》でね。ウナギを獲るといって、無理して流されなさんなよ」
と、石麿、直ぐに歌でやり返した——という次第。
「ムナギ取召せ」と、家持の勧めたウナギは、どのようにして食べたのでしょう。おそらく、おかずとしてではなく、くすりとしてであったろうことは、想像できます。ウナギは、質のよいたんぱく質と脂の量が多く、ビタミンAを豊富にふくみ、体力の衰えがちな夏場には、ぜひ、とおすすめします。しかし、この頃のように、こうウナギが高くては、どうにもなりません。
ウナギのねだんが上がりっぱなしなのは、国内のウナギの稚魚の漁獲量が激減したからで、稚魚の安定供給源を確保することが、目下、ウナギ屋さん仲間の最大の課題になっています。
ウナギの品質は、大小、脂肪の乗り具合とともに、養殖地によっても異なります。一般に中ぐらいのものが好まれ、これを蒲焼きにしたものを俗に中串《なかぐし》といいます。東京地方では、ウナギを背開きにします。これは、江戸が武士の町のため、ハラを切るのを忌んだためだといわれます。大阪では町人の町だけにこんなことにこだわらず、腹開きにします。東京では、蒸して脂を抜くとともに、やわらかく焼き上げ、大阪では、頭のついたまま素焼《しらや》きにして、すぐタレをつけます。
鰻食ふてぬらりくらりと土用入 句仏
と、石麿、直ぐに歌でやり返した——という次第。
「ムナギ取召せ」と、家持の勧めたウナギは、どのようにして食べたのでしょう。おそらく、おかずとしてではなく、くすりとしてであったろうことは、想像できます。ウナギは、質のよいたんぱく質と脂の量が多く、ビタミンAを豊富にふくみ、体力の衰えがちな夏場には、ぜひ、とおすすめします。しかし、この頃のように、こうウナギが高くては、どうにもなりません。
ウナギのねだんが上がりっぱなしなのは、国内のウナギの稚魚の漁獲量が激減したからで、稚魚の安定供給源を確保することが、目下、ウナギ屋さん仲間の最大の課題になっています。
ウナギの品質は、大小、脂肪の乗り具合とともに、養殖地によっても異なります。一般に中ぐらいのものが好まれ、これを蒲焼きにしたものを俗に中串《なかぐし》といいます。東京地方では、ウナギを背開きにします。これは、江戸が武士の町のため、ハラを切るのを忌んだためだといわれます。大阪では町人の町だけにこんなことにこだわらず、腹開きにします。東京では、蒸して脂を抜くとともに、やわらかく焼き上げ、大阪では、頭のついたまま素焼《しらや》きにして、すぐタレをつけます。
鰻食ふてぬらりくらりと土用入 句仏