八百屋の店先に、薄緑の芽を出したくわいが、水桶の中に浸《ひた》され、剃りたての小坊主頭が寄り合うような恰好でならんでいます。
曲らずにくわゐの角や春の水 巣兆
くわいは、オモダカ科の多年生草本で、沼、川、水田に自生し、また栽培もされます。漢字の「慈姑《くわい》」という名は、味が甘く、慈み深い姑(中国では母のこと)の乳になぞらえたといわれ、また「一根に毎年十二子を生じて、慈姑の諸子を乳する如きに似ているので慈姑」(『本草網目《ほんぞうこうもく》』の説)と称するようになった、といいます。その味から、一名「地栗《じぐり》」ともいいます。和名の「くわい」は、新井白石の『東雅《とうが》』(享保四年、一七一九年)の説によると、「くわ」は農具の鍬、「い」は野菜の芋の略で、すなわち「鍬のような葉の形をした芋」の義だと記されています。
秋に二、三弁の白い小さな花をつけ、これが散ると、根茎に養分を貯えはじめ、このふくらんだ根茎を食べるわけです。年末から初春にかけてがしゅんで、関東の青くわい(新田くわいとも呼ぶ)、大阪の吹田《すいた》くわい(自生種、地くわい、姫くわい、豆くわいとも呼ぶ)、京都の壬生《みぶ》くわいなどが、とくに味が優れているので有名です。どちらかといえば「古典的な野菜」といえるもので、若いひとたちの間では、くわいの味を知らずに育ったひとも多いと思います。
小さ目のものを甘煮にして、正月の重詰から八寸に。また薄く切って油でから揚げして、塩をふりかけ、洒のサカナや八寸に。だいこんおろしですって、片栗粉を加え、丸《がん》として浮しに使ったりします。くわいは蓚酸石灰をふくんでいて、渋味があるので、煮る前に一度、ゆでこぼさないといけません。
曲らずにくわゐの角や春の水 巣兆
くわいは、オモダカ科の多年生草本で、沼、川、水田に自生し、また栽培もされます。漢字の「慈姑《くわい》」という名は、味が甘く、慈み深い姑(中国では母のこと)の乳になぞらえたといわれ、また「一根に毎年十二子を生じて、慈姑の諸子を乳する如きに似ているので慈姑」(『本草網目《ほんぞうこうもく》』の説)と称するようになった、といいます。その味から、一名「地栗《じぐり》」ともいいます。和名の「くわい」は、新井白石の『東雅《とうが》』(享保四年、一七一九年)の説によると、「くわ」は農具の鍬、「い」は野菜の芋の略で、すなわち「鍬のような葉の形をした芋」の義だと記されています。
秋に二、三弁の白い小さな花をつけ、これが散ると、根茎に養分を貯えはじめ、このふくらんだ根茎を食べるわけです。年末から初春にかけてがしゅんで、関東の青くわい(新田くわいとも呼ぶ)、大阪の吹田《すいた》くわい(自生種、地くわい、姫くわい、豆くわいとも呼ぶ)、京都の壬生《みぶ》くわいなどが、とくに味が優れているので有名です。どちらかといえば「古典的な野菜」といえるもので、若いひとたちの間では、くわいの味を知らずに育ったひとも多いと思います。
小さ目のものを甘煮にして、正月の重詰から八寸に。また薄く切って油でから揚げして、塩をふりかけ、洒のサカナや八寸に。だいこんおろしですって、片栗粉を加え、丸《がん》として浮しに使ったりします。くわいは蓚酸石灰をふくんでいて、渋味があるので、煮る前に一度、ゆでこぼさないといけません。