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日本むかしばなし集206

时间: 2020-01-30    进入日语论坛
核心提示:天狗の酒てんぐというのを知っていますか。高い高いハナ、赤い赤い顔、おそろしい目玉、それにハネがあって、羽ウチワをもってい
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天狗の酒

てんぐというのを知っていますか。高い高いハナ、赤い赤い顔、おそろしい目玉、それにハネがあって、羽ウチワをもっていて、空をとんだり、山おくでは人をかくしたり、とにかくおそろしい、人間か、神さまか、そんなものです。そのてんぐをボクは見たのです。そういうと、キミたち、
「ウソだ。ウソだ。」
と、いうかもしれないが、ホントに見たのです。だから、その話をこれからする。まあ、聞いてください。
ボクが山おくへいってたら、ナニ、ナンだって、山おくって、どこだって。山おくは山おくだよ。村でも、町でもないよ。何山のおくだって。テング山だよ。そんな山ないって。あるよ。だってボク、その山で、てんぐを見たんだもの。とにかく、山おくなんだ。いままで一どもいったことのないような山のおくの、おくの、そのまた、おくのおくなんだ。そこをある日、ボクが歩いていたんだ。すると、ワッハッハッという声が聞えてきた。こりゃ、てんぐだ、ボクはすぐ思った。この笑い声はてんぐわらいだ。ボクにはすぐわかったんだ。でね、木のかげにかくれて、そうっとうかがってみると、まったくてんぐなんだ。それも、きょうはてんぐ大会ででもあるのか、カラスてんぐ、ハナてんぐ、青てんぐ、赤てんぐ、大てんぐ、小てんぐ、たくさんのテングどもがウジャウジャあつまっておる。それが、なんと、みんな、口を空へ向けて、ワァハッハッハ、ワァハッハと笑っていた。おどろいたね。びっくりしたね。まったくおおびっくりだ。もし、その時、ボクがヒャーッとか、キャーッとか、そんなことを言っていたら、今、ここでキミたちにお目にかかることなんか、できはしない。
どうして?
どうしてだって、てんぐの|八つざき《ヽヽヽヽ》ってことを、いうじゃないか。見るまにつるしあげられて、大木の上かなんかで、バリバリバリッと、八つにひきさかれてしまうんだ。てんぐって、そんなものなんだ。それに、てんぐって、山おくで、相談していたり、会をしていたりするところを見られるの、だいきらいなんだってね。今まで、てんぐかくしにあった人なんか、みんな、そんなところを見てしまった人なんだ。そしてあまりこわいもので、こわ——いなんて大声を出した人なんだ。それでてんぐにさらわれたんだ。これを知ってるから、ボク、シッカリ口をつむって、ひとことも、ものを言わなかった。木のかげにかくれて、てんぐはおろか、神さまにだって見つからないくらいにしていた。すると、ひとりのてんぐが言ったんだ。
「フンフンフン、人間のにおいがするじゃないか。」
すると、またひとりのてんぐが、
「そう言えば、そうだ。フンフンフン。」
すると、またひとりが、
「まったくくさいな。フンフンフン。」
それで、そこにいたてんぐがみんな、あの高いハナを風のほうにむけて、
「フンフン。」
「フンフン。」
「フンフン。」
いや、その時のこわかったことといったら、いつ見つかるか。いつ、そこからひき出されるか。いつ八つざきにされることとなるか。そう思って、実はブルブルふるえていた。その時だよ。もうれつなツムジ風がおこったんだ。
「ゴーッ。」
そんな音がどっかからしてきたと思うと、そのへんの草木がザアア、ザアアと音を立てて、さわいだ。気がついたら、てんぐがいないんだ。
「あれっ。」
ボクはこう、つい言って、空をあおいだ。なんと青あおとした空いっぱいに、そのてんぐたちがハネをひろげて飛んでるじゃないか。クル、クル、そこをまわってるじゃないか。してみると、ツムジ風がおこったので、てんぐたちが空にまいあがったのか。それとも、てんぐがまいあがったので、ツムジ風がおこったのか。ボクにはわからなかった。しかし、てんぐは空高くまいあがり、そこで夕日に照らされ、カリのように、カギになったり、サオになったり、とおいかなたの空の下にある山をさして消えていった。
それから、ボクは木のかげを出た。おそる、おそる出て、てんぐたちのいたところへいってみた。すると、どうだ。びっくりしちゃった。だって、ひとりのてんぐが石に腰をかけ、そばの木にもたれ、グウグウ眠っている。やはり夕日に照らされながら、大イビキなんだよ。赤い顔を、いっそう赤くしてる。見ると、ソバに一つ、ヒョウタンがころがっている。お酒がすこしこぼれていて、いいにおいがしている。このてんぐさん、お酒によって、ほかのてんぐたちにすてていかれたんだね。そこでボク考えたんだ。
「てんぐのカクレミノっていうんだが。」
カクレミノなんか、そのへんにないものかと、考えたんだよ。見まわしても、見まわしても、そんなものはなかった。そこで、こんどは、
「てんぐの羽ウチワ。」
と、かんがえたんだ。見ると、それは、そのよっぱらいてんぐの首からヒモでぶらさげられて、ヒザの前にある。ようし。しめたぞ。しかしその羽ウチワを、てんぐさん軽く左手でにぎってるんだ。ボク、すこしそっちへ手をのばしかけたけれど、やめたねえ。もし気づかれたら、八つざきだからね。しかたなし、ヒョウタンでもちょうだいということにして、そこにころがってる、ヒョウタンをとりあげた。それからヌキ足、サシ足、もとの木のかげに帰ってきた。そこにかくれて、そのヒョウタンを見なおした。手でなでてみたり、口にはなを近づけてかいでみたり。べつに変った、ヒョウタンではない。いい|つや《ヽヽ》で、いい色で、ふってみると、ちゃんとお酒もある。
「もしかしたら、いくら飲んでも、あとから、あとから、お酒の出てくる宝ヒョウタンかもしれない。」
ボクはそう思った。で、まず、一口なめてみた。そう言っても、ぞんがいしぶい味かもしれない。てんぐの酒なんて、今まで聞いたことないからね。ところが、うまいんだ。くちびるのへんがしびれるくらい強くもあり、口のおくからツバキがわき出すくらい甘くもある。そこで一口、また一口、ゴクリ、ゴクリとやったんだ。いく口のんだか、ボクはおぼえていない。いつねむったかもおぼえていない。あのてんぐさんのように、赤い顔をして、ゴウゴウ、イビキをかいて、ねむっていたと思われる。とにかく、水ものまず、|めし《ヽヽ》も食べずに、なん日ねむっていたものか。目がさめた時、ふところへんに何かいるようなんだ。ネコといっしょにねていたんだな。ボクはまず、そう思った。しかし、よく見ると、どうやら、それが鳥らしい。キジか、山ドリか、そんな鳥なんだ。ボクはおどろいた。その鳥もおどろいたらしい。首を立てて、ひらいたボクの目を、フシギそうに見入っている。ボクはかんがえた。
「これはどうしたことなんだ。」
なんども、なんども、かんがえなおし、かんがえなおしして、やっとてんぐのことを思いだした。そこで、ここにこうしておれない。早く家へ帰らなければ——。そう思いついたんだ。家のものがしんぱいしてるだろうと思われてきたんだ。それで鳥にはきのどくだったが、そろそろ立ちあがった。すると、おどろいたことに、ボクのふところから四わか、五わか、ヒナドリがピヨピヨ、ピヨピヨとなきだしている。してみると、ボクがねているあいだに、鳥が巣をつくって、たまごをうんで、ヒナをかえしたと思われた。いや、まったく、ボクはおどろいてしまった。
 むかしのむかしの、山おくの山おくの子どものつくった話ですが、こんなこともあったかもしれません。子どものつくった話ですから、もう|とりとめ《ヽヽヽヽ》がありません。
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