和歌山の毒物カレー事件も天下を騒がせた犯罪だった。この事件もまだ係争中であるから軽々しい結論を出すわけにはいかないが、特に事件の主役である林真須美なる女性に、世人の関心が集まったのも当然であろう。
和歌山市の毒物カレー事件と保険金詐欺事件で、殺人と殺人未遂罪などに問われた元保険外交員の主婦・林真須美被告(四十歳)と、詐欺罪に問われた夫の健治被告(五十六歳)の初公判は、一九九九年(平成十一年)五月十三日に開かれた。
検察側は、ヒ素混入直前に真須美被告が「近所の主婦らの対応に反感をいだき、激昂した」と指摘し、またカレーに混入されていたヒ素は最大で一〇〇〇人分の致死量に当たる一〇〇グラム以上で、夏祭りに参加した住民すべてを対象にした無差別殺人だったと判定し、事件当日の地域の主婦らとのやりとりを契機に、地域住民に対する恨みが噴出した衝動的な犯行とした。
犠牲者四人と被害者六三人を出したこの大事件に対して、彼女は「私は全く関係ありません」と述べたとき、報道関係者や傍聴人席から大きな反応がわき上がった。
法廷で七カ月ぶりに夫婦が再会したとき、夫の健治被告が懐かしそうに真須美被告に視線を向けたにもかかわらず、彼女は目を合わせようともしなかったという。
夏祭りのカレーの調理に自宅のガレージを提供した飲食店主は、真須美被告が「やっていません」と言うのを聞き、「この野郎」と怒りをあらわにしたという。
一方、保険金詐欺に関してはあっさりと認めている。彼女は大手生命保険会社の保険外交員として勤めていたが、九七年、同社を退職してからは無職となり、夫健治もシロアリ駆除業を廃業して無職となった。
以後、二人の収入は保険金詐欺に頼るようになり、夫婦、家族のほか、知人、健治の従業員やマージャン仲間の名義を無断借用して保険契約を結び、真須美被告が主役となり、巨額の保険金をだましとっていた。健治被告が下半身マヒで入院したときは一億七三〇〇万円、ヒ素中毒で入院したときには一億六一〇〇万円、実母が死亡した翌年には一億七一〇〇万円をだましとっていた。すべて真須美被告の悪知恵が働いていたのである。
真須美被告にはうそが多いことは万人が認めるところで、ヒ素に関しても実兄に口止めの電話をかけ、隠ぺい工作をしていたこともわかっている。彼女は、逮捕前の取材者に「ヒ素なんて知りません」と言ったり、実兄に電話して、「警察の人が来て、『前にヒ素を使っていたか』って聞いてきたけれど、私は見たことも聞いたこともない言うたら、すぐ帰った」とうそをついた。
実兄はヒ素を隠していると警察に疑われると思い、ドラム缶のヒ素などを和歌山東署捜査本部に任意提出。預かった衣装ケース内にもヒ素があることに気づき、これも任意提出している。
逮捕されるまでに、彼女の言動はさんざんテレビなどの画面に登場しているが、絶えず報道陣にとり巻かれているのをむしろ楽しんでいるように見えた。すぐわかるうそを平気でついている。ニコニコと笑い、自己を誇張しているかと思うと態度がガラッと変わり、報道陣にホースで水をかけたりする。怒ると自分をコントロールできないようであった。
言動がすべて自己の感情にそのまま支配されているかのように見えた。すべてが自己を中心に動いていると、彼女は無意識のうちに思っているのだろう。
自己の利益のためには夫を平気で捨て去るような女性であった。夫に対して「死ね」などという言葉を発して、良心の呵責を感じない女性であった。
和歌山市の毒物カレー事件と保険金詐欺事件で、殺人と殺人未遂罪などに問われた元保険外交員の主婦・林真須美被告(四十歳)と、詐欺罪に問われた夫の健治被告(五十六歳)の初公判は、一九九九年(平成十一年)五月十三日に開かれた。
検察側は、ヒ素混入直前に真須美被告が「近所の主婦らの対応に反感をいだき、激昂した」と指摘し、またカレーに混入されていたヒ素は最大で一〇〇〇人分の致死量に当たる一〇〇グラム以上で、夏祭りに参加した住民すべてを対象にした無差別殺人だったと判定し、事件当日の地域の主婦らとのやりとりを契機に、地域住民に対する恨みが噴出した衝動的な犯行とした。
犠牲者四人と被害者六三人を出したこの大事件に対して、彼女は「私は全く関係ありません」と述べたとき、報道関係者や傍聴人席から大きな反応がわき上がった。
法廷で七カ月ぶりに夫婦が再会したとき、夫の健治被告が懐かしそうに真須美被告に視線を向けたにもかかわらず、彼女は目を合わせようともしなかったという。
夏祭りのカレーの調理に自宅のガレージを提供した飲食店主は、真須美被告が「やっていません」と言うのを聞き、「この野郎」と怒りをあらわにしたという。
一方、保険金詐欺に関してはあっさりと認めている。彼女は大手生命保険会社の保険外交員として勤めていたが、九七年、同社を退職してからは無職となり、夫健治もシロアリ駆除業を廃業して無職となった。
以後、二人の収入は保険金詐欺に頼るようになり、夫婦、家族のほか、知人、健治の従業員やマージャン仲間の名義を無断借用して保険契約を結び、真須美被告が主役となり、巨額の保険金をだましとっていた。健治被告が下半身マヒで入院したときは一億七三〇〇万円、ヒ素中毒で入院したときには一億六一〇〇万円、実母が死亡した翌年には一億七一〇〇万円をだましとっていた。すべて真須美被告の悪知恵が働いていたのである。
真須美被告にはうそが多いことは万人が認めるところで、ヒ素に関しても実兄に口止めの電話をかけ、隠ぺい工作をしていたこともわかっている。彼女は、逮捕前の取材者に「ヒ素なんて知りません」と言ったり、実兄に電話して、「警察の人が来て、『前にヒ素を使っていたか』って聞いてきたけれど、私は見たことも聞いたこともない言うたら、すぐ帰った」とうそをついた。
実兄はヒ素を隠していると警察に疑われると思い、ドラム缶のヒ素などを和歌山東署捜査本部に任意提出。預かった衣装ケース内にもヒ素があることに気づき、これも任意提出している。
逮捕されるまでに、彼女の言動はさんざんテレビなどの画面に登場しているが、絶えず報道陣にとり巻かれているのをむしろ楽しんでいるように見えた。すぐわかるうそを平気でついている。ニコニコと笑い、自己を誇張しているかと思うと態度がガラッと変わり、報道陣にホースで水をかけたりする。怒ると自分をコントロールできないようであった。
言動がすべて自己の感情にそのまま支配されているかのように見えた。すべてが自己を中心に動いていると、彼女は無意識のうちに思っているのだろう。
自己の利益のためには夫を平気で捨て去るような女性であった。夫に対して「死ね」などという言葉を発して、良心の呵責を感じない女性であった。