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無花果少年と瓜売小僧05

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  5 でも磯村くんは、それとなく木川田くんに言いました。あんまりそれとはなさすぎて、自分でもなんで言ってるのかよく分ら
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 でも磯村くんは、それとなく木川田くんに言いました。あんまりそれとはなさすぎて、自分でもなんで言ってるのかよく分らないような言い方でした。
「僕……やっぱり、君|家《ち》に電話すんのって、いやなんだよね」
それは、何段かは知りませんけども、でも、少なくとも二段目よりは上の方にある階段を見ての言葉ではあったのです。
「僕……やっぱり、君家に電話するのって、いやなんだよね」磯村くんは、電話口の向うから聞こえて来る、木川田くんのお母さんの暗ァい、暗ァい「はい……、木川田です……」という声を思い浮べてそう言いました。
木川田くんのお母さんは「源一くんをお願いします」と言うと、「どなたですか?」とも「お待ち下さい」とも言わずに、黙って受話器を置いて木川田くんを呼びに行ってしまうのです。
それで木川田くんがいたらいいのですが、いなかったらもっと大変です。まるで足音を立てないで受話器のところまでそっとやって来たかのように、いきなり唐突に「いません」とだけ、木川田くんのお母さんは言うのです。
「いません」と言ったきり、それ以外なんにも言ってくれません。伝言もへったくれもなくて、磯村くんはその沈黙がこわくなって、「すいません」と言ってその電話を切ってしまうのです。一遍なんか、うっかり黙って受話器を置いたら、木川田くんのお母さんの背後霊が後に立ってるみたいな気がして、死ぬかと思いました。
 それぐらい、木川田くんのお母さんの声は暗かったのです。
 木川田くんは磯村くんに言われて、自分のお母さんが美人じゃないという烙印《らくいん》を押されたみたいな気がしました。「そりゃァ、ウチのオカヤン、美人じゃないもんなァ……」とか思って、木川田くんは「うん」と言ったのです。
「みんな俺が悪いんだ」と思って、「うん」と言った木川田くんは、「もう死んじゃおうかなァ」とか、思いました。
ほとんど、口癖になっているモノローグです、この木川田くんの「死んじゃおうかなァ」は。
ちょっとでもメンドクサくなると、すぐ木川田くんは「死んじゃおうかなァ」と思うのです。時々は口に出しても言います。まァ、木川田くんにしてみれば、磯村くんは生きてるテープレコーダーみたいなもんですから、口に出して言おうと言うまいと、大した差ではないのですが、でも磯村くんは、木川田くんの「死んじゃおうかなァ」を聞くと、やっぱりまだドキッとするんです——「僕がいたらなくてごめんね」と思って。(もう少ししたら慣れますけど、慣れて「死んじゃえば」って言いますけど、でもそれはまだ先の話ですね)
 木川田くんは、自分が死んだら、絶対に滝上くんが悲しんでくれると思ってるんですね(まだ)。死んだら絶対に悲しんでくれるけど、でも今はイマイチそれが確信出来なくて、「それが確信出来るまで死ぬの待ってよう」と思うんですね。だから、木川田くんの「死んじゃおうかなァ」は、「とりあえず当分は生きてよう」の合図だったりはするのですね。「そんで、先輩が俺のこと好きだって分ってから死んじゃおう」って、木川田くんは思ってるんです。�質屋�が焼けても、�質屋の焼け跡�には�質屋の親父さん�ぐらいはいるんじゃないか、それを確めてからゆっくり死んじゃおうと思ってたんです。�質屋の親父さん�は、ほとんど木川田くんの胸にある�ロマンチックな砦�とおんなじ意味ですが、さすがにこうなって来るとどういう比喩を使っているのか神様《わたし》にも分らなくなって来ます。神様にも分らない比喩なんか使うんじゃないと思いますが、人間というのは存外、そんなムチャクチャを抱えて平気で生きて行くんですね。
当人は一向に構いませんけど、それに付き合わされる相手は大変です。
普通そういうことを�惚れた弱味�というのですが、そういう言葉をウチの主人公達は知らないもんだから、困ってしまいます。
もっとも、知ってたって使わないとは思いますけど——。
潔癖という無知にも困ってしまいます。
木川田くんに黙られちゃった磯村くんも、だからそれでウジウジしてました。
 木川田くんにうっかり黙られちゃったもんだから、「どうしてあのおばさんの暗い声に耐えて僕は木川田とこに電話しちゃうのかな……」なんてことを考えさせられて、「やっぱり僕は|スケベ《ヘンタイ》なのかな」っていういつもの結論に、磯村くんは達しさせられちゃっていました。
磯村くんの場合は、�スケベ�にいつも�ヘンタイ�というルビを振らなければならないので大変でした。何が大変かというと、その困惑が大変だったというだけですが、人間うっかり、�スケベ�なんていう全く個人的な深みに落ちこんでしまうと情勢が見えなくなってしまうのです。こんなに話が先に進まないのは、みんな磯村くんのせいなのでした。
これで磯村くんが、出ッ歯で鼻ペチャでいかにもスケベェがふさわしい男の子だったら話は簡単だったでしょうが、そうしたら私が「そんな話面白くねェや」と投げ出していたので、そういう話にはならないのでした。
�スケベェ�という要素を取り外してしまえば話は簡単なのです。初めての�スケベェ�に足をとられていた�抽象的な磯村くん�には分りにくかったのかもしれませんが、磯村くんはただ「溺《おぼ》れるものはワラをもつかむ」で、木川田くんを求めていただけでした。何に溺れていたのかは分りませんが、木川田くんを求めていたということが磯村くんの溺れている証拠なのでした。
�抽象的な磯村くん�はなんでも理屈で割り切って行きましたが、人類というのは長い間、訳の分らない泥沼を振り切った後、それを回顧する為に理屈を編み出すという、磯村くんとは逆の行動パターンで人類そのものを成り立たせていたのですから、磯村くんは間違えていたのです。
それでいったら、溺れているからワラをつかむのであって、ワラをつかんで初めて、自分は何に溺れていたのかが分るということになるのでした。
だからとりあえず、磯村くんは�一人暮し�というワラをつかまえたかったのです。
それが大変だから、今度は木川田くんというワラをつかまえようとして、スケベの泥沼に追いこまれてしまったのです。
それだけなのです。
木川田くんに黙られてしまった磯村くんは、ようやくそのことに気がつきました。どうやら自分は溺れているらしいけど、それをした元凶は、目の前にいる木川田くんだということに。
だから木川田くんに訊いても無駄なんだと、磯村くんは思いました。
「僕が一人で暮したいんだから、僕は一人でその�一人暮し�の理由を考えよう」と、磯村くんは思いました。
木川田くんに足蹴《あしげ》にされて溺れたのか、木川田くんに引きずりこまれて溺れたのか、よく分らない�水の中�でした。
両方のような気もするし——だとすると、水の上にはまた水があるのかなァという、ヘンな世界に、磯村くんは気がつくと、いました。
比喩が情景描写に変ります——
 天井の高いガラス張りの喫茶店は、水族館のようでした。水族館の中にいるのか、水族館の外にいるのか、高層ビル街の喫茶店にいる磯村くんには、よく分りませんでした。
木川田くんは、外を見ています。「落ちこんだのはお前のせいだって言いたい訳じゃないんだぜ」と、そっぽを向いた木川田くんはそう言ってるんだと磯村くんは思いました。でも、木川田くんの見ている風景に、磯村くんはなんの感動も覚えませんでした。「つまんない顔した人間がつまんないとこをつまんない顔して歩いてる」としか、磯村くんには思えませんでした。
「こいつはなんでこんなとこが好きなんだろう」と、磯村くんは、いかにも「似合ってるだろう」と言わぬばかりの恰好で外を見ている木川田くんを見て思いました。
木川田くんのありさまは、まるで海にいられなくなった人魚姫のようでした。人魚のままで海に上って来たら陸にだっていづらいだろうに——そういう高級な比喩の使えない磯村くんは、使えないまんま、そんなことを考えていました。
「じゃァ、僕はなんなんだろう……?」
磯村くんはそれだけを考えていました。
荒涼とした海岸に立っていれば、一行のヘッドコピーだけでサマになるんだっていうことだけは、とりあえずマスターしてしまった磯村くんです。
 海から逃げて来たけど僕は人魚じゃない。ひょっとしたら、「自分は半魚人かもしれない」と思って海を憎んでいる人間なんだろうか?
だとしたら、あのガラス窓の向うにいる人は、みんな人間じゃないということになる。
だとしたら、このガラス窓のこちら側にいる人間はなんなんだろう?
ドア一つで、アッチとコッチをやすやすと行き来しちゃう人間というのはなんなんだろう?
僕だっておなじ人間なんだけど……。
 磯村くんはまだ何に�溺れている�のかは分りませんでしたが、空気と水がイコールになってしまった、そのことに溺れているだけなのでした。
空気は水になって、水は空気になって平気で存在しているのに、まだ人間達は水と空気を分けて生きてる——その意味のない区別に、磯村くんは混乱していただけなのでした。
 もうすぐ世界は濡れて行きます。
「あ、雨だ……」
なんにも言うことのなかった木川田くんが、そのことを発見して、ホッとしたように言いました。
「あ、ホントだ」
「ねェ、磯村、お前、傘持ってる?」
「ううん……。濡れてけばいいじゃない。ね?」
「うん」
ともかく一緒に何かすることが出来てよかったなァと、磯村くんは思いました。
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