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無花果少年と瓜売小僧04

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  4 それでも磯村くんが悩んでいたことは、実は、とっても簡単なことでした。磯村くんは、実は、木川田くんが自分のことを愛
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 それでも磯村くんが悩んでいたことは、実は、とっても簡単なことでした。磯村くんは、実は、木川田くんが自分のことを愛してくれているのかどうかがよく分らなくて、それで悩んでいたからでした。
「ねェ、木川田さァ、僕、一人で住みたくって」——磯村くんはそう言いました。そしてそう言った磯村くんは、実は、木川田くんが「じゃァ一緒に住まない?」って言ってくれるのを待ってたんです。
 待ってたけれども、でも磯村くんは別に、木川田くんと一緒に暮したい訳ではなかったんです。
木川田くんが「じゃァ一緒に住まない?」って言ったら、そしたら、「やだよォ、木川田と同棲するのなんてェ」って、そう言おうと思って、磯村くんは「ねェ、木川田さァ」と言い出したのです(実は)。
磯村くんは、木川田くんの�支配�から脱け出したいと思っていました。そして磯村くんは、「俺も一人で住みてェなァ……」と木川田くんが言い出した時、やっぱり「なァ、磯村ァ、一緒に住まない? 俺が部屋探してくっから」と、木川田くんが言い出してくれるのを待っていたのです。
 男の子は面倒なことに、プライドというような残酷なものを持っていたりはしたものなのです。
 もしも木川田くんが部屋を借りるんなら、「僕は堂々と住んでやる」と磯村くんは平気で同居人になったでしょう。
でも、もし磯村くんが部屋を借りるんだったら、「時々は来てもいいよ」とだけ言って、磯村くんは木川田くんを同居人にはしなかったでしょう。
磯村くんは、他人の出方を見て、その時に自分の決断を下せばいいと思っていたのでした。「そうじゃなくちゃ僕には分らない(分りたくない)」と、磯村くんは、勝手に一人で決めていました。
磯村くんはやっぱり、木川田くんをどこかで見下したままにしておきたかったのです。
 男の子は別に他人が自分と違っているからといって、それだけで�差別�なんかはしたりはしません。でも男の子は、自分に自信がない分だけ他人を見下していなければ、自分自身のバランスが取れないのです。
プライドというものは、実に厄介なもので、厄介なものを厄介なままぶら下げて、それで人を好きになったり嫌いになったりするものだから、すべての人間関係はややこしくなって行ってしまうのですね。
「もしも木川田が僕のことを好きだっていうんなら、僕もそれとおんなじ分だけ木川田のことを愛して上げよう」——磯村くんはそういう風に思っていました。いましたけれども、木川田くんが磯村くんのことを愛しているのかどうか、磯村くんには分らなかったのです。
分らないから、愛しようがありません。
愛しようがないから、磯村くんはどうしたらいいのか分らなくなって、「ひょっとしたら僕は、木川田のことが好きなのかな?」って、そんなことを考えていました。
�好き�という言葉が一つしかないのにもかかわらず、磯村くんの中にはどうやら、いろんな意味の�好き�という言葉がつまっていたようなのです。
いろんな種類の�好き�から�好き�へと、目をつぶって辿って行くと、磯村くんはいつも、一番ヤバイ�好き�へと行き着いてしまうのです。それがどういうものかというと、�誰かが好き�というのではなく、�それをするのが好き�というような種類の�好き�です。
いつの間にか磯村くんは、一番ヤバイ、�スケベ�という種類の�好き�に行き着いてしまうのです。
「そういう訳じゃないのに、でも、僕だって�人間だから�」というような、まるで一ミリの距離を測るのに一キロメートルの物差しを持ち出して来るみたいなヘンな感じになって、磯村くんはいつも、自分の中のその�不思議な回路�をもてあますのです。
「誰かが何かを言ってくれたら、ここんところで迷う必要なんかないんだけどなァ……」とかは思うのですが、誰かに何かを言ってもらう為には自分の方からその相手に何かを言わなければならないのです。
「好きなんだけど——」——そう言おうとはするんですが、でもいつも、その言葉は宇宙空間に漂う木の葉みたいな感じがして、なんの意味もなくたよりもないような感じにしか思えないのです。
「好きなんだけど——」
木川田くんにそう言って、ニッと笑われてキスなんかされちゃったら、それでおしまいです。
「お前も好きだなァ」って言われちゃったら……。
 やっぱりそれはいやでした。
でも、やっぱりそれだけだったらいやなので、それは、ちっともいやではありませんでした——。
 困ってしまいますね。
 だから磯村くんも、困っていました。
 それはほとんど、人前で裸になりたい訳でもないのに、でも、人前で服を着ている自分を意識した途端「人前で裸になりたいのかもしれない……」と思ってしまうような、人類が始まって以来続いている矛盾の上に乗っかっているような困惑でした。
「木川田がなんか言ってくれれば楽なんだけどなァ……」
磯村くんはそう思っていました。
でも、木川田くんはなんにも言ってはくれませんでした。
「お前が好きだからやるんだぜ」
「お前が好きならやってやるよ」
「お前が好きでもそればっかりはヤなの」
「なんだよ変態、俺は別に好きじゃないんだよ」
�好き�ということに関しての木川田くんの答は、この四通りしかありませんでした。
「そういう�好き�なんじゃないの!」と言っても、木川田くんは「じゃ、どういう�好き�なんだよ?」としか言ってくれないのは目に見えていました。
磯村くんが問題にしたいような�好き�は全部、木川田くんは�先輩�という質屋さんに預けていたからです。
勿論、木川田くんが預けっ放しにしていた質屋さんは、火事に遭ってとうの昔になくなってはいましたが——。
 磯村くんは時々、「一体僕はなんだってこいつと付き合ってるんだろう」と、木川田くんのいる前で考えることがありました。一人で考えなくちゃいけないほど、その二人の会話には沈黙が多かったということでもありますが——。
 磯村くんの答は明らかでした。一つは、「木川田が可哀想だから」、二つは、「木川田に負けたくない」でした。
 木川田くんが孤《ひと》りで可哀想で、磯村くんのことを必要としてるんだって思うのとは別に、「自分は木川田に勝ってない」という悔しさが、磯村くんを木川田くんとの退屈なデートに縛りつけていたのでした。
だって、木川田くんに「じゃァな」と言われたらもう�お別れ�が来るのは確実だけど、磯村くんが「じゃァね」とおんなじことを言っても、「なんだよ、お前、もう帰るのかよ」と言い返されて、磯村くんは「ゴメン」とあやまるか、そのまんまデートを続けるか、どっちかしかなかったのです。
なんだかんだ言ったって、結局、磯村くんより木川田くんの方が威張ってたんですから、それで�付き合い�をやめたら磯村くんの方が捨てられたことになってしまいます。
その理由がなんだかは分りませんが、ともかく磯村くんはそう思って、木川田くんに引きずられていたのです。
そして勿論、木川田くんだってそのことは知っていました。
というより、さすがに木川田くんは、そのことだけをしっかりとつかまえてはいたのです。
 磯村くんにプライドがあるのと同様、木川田くんにだってプライドはありました。
プライドがあって、磯村くんのことを、木川田くんは斥《しりぞ》けていたのです。
すべては明らかでした。「だって、こいつは�先輩�じゃないもん」——そのことだけを木川田くんは知っていました。
「�先輩�にだけは嫌われたくないけど、それ以外の人間になんか別に嫌われたっていいもん」と、木川田くんはさすがに(と言おうか�相変らず�と言おうか)この期《ご》に及んでも思っていました。
「だって磯村は�先輩�じゃないじゃん」——そう思えばいつだって「バーカ」と磯村くんのことを見下すことが出来たのです。そういうことが出来る状態になってるって、そのことだけは木川田くんに分っていました。
状況がそうなってしまったら、もう木川田くんにはこわいものはありません。悠然と構えていれば、ほしいものはみんな向うからやって来るのです。
木川田くんはだから、磯村くんにはなんにも言いませんでした。
「�先輩�じゃない人間に、なんか言ってもしょうがない」って、そのことだけは分っていました。
そして、木川田くんは、もっと重要なことを分っていました。
「だって、お前、恋愛なんて口でするもんじゃないんだぜ——。あ、口でもするけどよ、ヒッヒッヒッ」って。
「何つまんないこと言ってんだ、お前は」って、だから木川田くんは、磯村くんにいつだって言い出すことは出来たのです。(もっとも、そんなことを簡単に口にするようなバカじゃありませんけどね、木川田くんは)
�恋愛�のことなんかなんにも知らない磯村くんは、こうして、�恋愛�のことならなんでも——そのくせそれ以外のことはなんにも知らない——知っている木川田くんに捕まってしまっていたのです。
可哀想に、磯村くんが木川田くんに勝てる筈はありませんね。
そして可哀想に、木川田くんだってそんなことをしていて、ちっとも幸福ではなかったのです。
可哀想に、だからといってどうすればいいのか、この若い二人には一向に気がつくことが出来なかったのです。
「ねェ、木川田さァ、僕、一人で住みたくって」
だから磯村くんがいくらそう持ちかけても無駄でした。
「勝手にすればァ」
そう木川田くんは思っていたからです。
木川田くんが待っていたとすれば、それは「一緒に住もうよ」という言葉だけで、磯村くんにしてみれば、それはあまりにも唐突で、階段を十八段ぐらい一挙に飛び越した挙句のような�提案�だったからです。
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