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無花果少年と瓜売小僧51

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  51 自由というものは不安なものです、自分が自由だという確証がなければ。木川田くんだけではなく、それは磯村くんにとって
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 自由というものは不安なものです、自分が自由だという確証がなければ。
木川田くんだけではなく、それは磯村くんにとっても同じことでした。
 磯村くんは時々「ふっと我に返る」というような経験をするようになっていました。どこから何が返って来るのかはよく分りませんが、そんな気がしました。そんな気がしても、別に自分は気を失っていた訳ではないので「そんな気がする」とだけ思っていました。
勿論、磯村くんだって自由になっていたのです。自由になっていたけれど、でもそれ以前の自分が別に�不自由�だったとも磯村くんは思っていなかったので、自分が自由になっているとは思えなかった、思わなかった、それだけでした。
 自分では(それなりに)青春をエンジョイしてると思っていた磯村くんは、ただボーッとしてただけでした。�自分が自由だ�という確証のない自由はそんなものです。磯村くんはただ、�ザーッ�と音のする画面に馴《な》れただけです。その雑音が聞こえなくなったからその雑音から自由になれたということなのですが、でも磯村くんにはそのことがよく分りませんでした。
一方、木川田くんは自由になりました。自分は自由なんだと、木川田くんは改めて思いました。メンドくさいこと言うオトヤンはいないし、暗い顔してるオカヤンは自分のこと許してくれてるみたいだしと思っていたので、別にイジイジしたり突っ張ったりする必要はあんまりありませんでした。
 木川田くんは、中野の家にいる時はあんまり外泊したりする人間ではありませんでしたが、でも、全く外泊しないという訳ではありませんでした。外泊もするけど「うるさいこと言うの分ってるからあんまりしない」という、その程度でした。
でも、磯村くんと一緒にいる時は違いました。「一緒にいて付き合ってなきゃいけないのかな?」とか木川田くんは初め思っていましたが、でも、試験がある磯村くんなんかを見ていると、あんまりそうしない方がいいんだっていう気になって、平気で外へ出て行きました。�平気で外へ出て行ける�と言った方がいいでしょうか。
外泊ばかりでなく、�将来どうするんだ!�っていうことも当分考えなくていいので楽でした。
 という訳で、木川田くんはフワフワしていました。その日新宿に行ったというのも、バイトが休みだったから「なんとなく」行ったのです。
 でも、木川田くんがつかまえた自由というのは、よく考えたら、木川田くんが今迄やっていた生活とおんなじものでした。ただ誰もうるさいことを言わないという、それだけが違いでした。でもそれは、裏を返せば�誰もかまってくれない�ということです。でもその日まで、まだ木川田くんはそのことに気がつかないでいたのです。
という訳で、木川田くんは帰って来るのです。もっともっと恐ろしいことに出遭う為に——。
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