返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

無花果少年と瓜売小僧52

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  52 木川田くんが部屋に入ると、磯村くんはもう帰っていました。そんなことは部屋に入る前から灯りが点《つ》いていることで
(单词翻译:双击或拖选)
 
  52
 木川田くんが部屋に入ると、磯村くんはもう帰っていました。そんなことは部屋に入る前から灯りが点《つ》いていることで分ることですが、木川田くんは戸を開けて、「やっぱり……」と思いました。
 電車に乗って高幡不動の駅に降りた時、木川田くんはどうしたらいいのか分らなくなっていました。
ついうっかり電車に乗ってしまいましたが�家�に帰ったら磯村くんがいるのです。
どんな顔をしていいのか、木川田くんにはよく分りませんでした。
木川田くんはもう、お酒を飲みたいとも思いませんでした。男の人と寝たいとも思いませんでした。木川田くんが悲しくなった時に逃げ込む場所は、もう滝上くんが出入りするような場所になっているのです。もう、逃げるところはありませんでした。
中野の家にも帰れません。あそこではもう、絶望が当り前になりすぎています。自分が今迄ズーッと貯めて来た絶望と、今更木川田くんは対面したいとは思いませんでした。ひょっとしたらお母さんが慰めてくれるかもしれないと、一瞬だけそんなことも思いましたが、思って吐き気がしました。自分はもうそんな�子供�じゃないんだっていうことは、木川田くんにはよく分っていましたから。
木川田くんのお母さんは、木川田くんを赤ちゃんにして可愛がることしか出来ない人でしたから。
木川田くんは、ちゃんとした誰かにかまってもらいたかったのです。
「そういうのひどいね」って、誰かに言ってもらいたかったのです。
電車に乗り込む時、木川田くんは別にそんなにはっきりしたことを考えていた訳じゃありません。瞬間瞬間に通り過ぎて飛び去って行った木川田くんの考えをまとめればそんな風になるというだけです。
 駅を降りて、木川田くんはお酒の自動販売機を見つけました。お金を入れて、機械をガタガタ言わせて、木川田くんはお酒を飲みました。一口グッと飲んで、�フーッ�と思ったら、もう、飲めなくなりました。なんだか分らない、それだけでもうお酒が体の中に入らないのです。円筒形の透明なグラスの中には、まだ日本酒が七割がた残っています。木川田くんは胸からお腹の中がカーッと熱くなって来るのを感じて、「そうだ、自分てあったかくなりたかったんだ」って思いました。あんまり寒くって寒さを感じられなくなってたんだって思ったら、なんだか、急に寒くなって来ました。しばらく収っていた震えがまた戻って来て、ガタガタ震えながら、木川田くんはお酒のグラスを道端にそっと置きました。「下手すると吐いちゃうかもしれない」って、木川田くんはそう思ったんです。
「吐いちゃってメチャクチャになっちゃえばいい」と木川田くんが思っていたのなら、それはそれで簡単だったかもしれません。でも、「下手すると吐いちゃうかもしれない」と思ってそっと道端に空き壜《びん》を置く木川田くんは違いました。時として、希望とか前向きとかやさしさとかいうものは、絶望よりも厄介な事態を惹き起こすのです。
木川田くんだってそんな気がしたのかもしれません。でも木川田くんは、それでもやっぱり、生きていたいと思ったのです。
「どうしたの?」
部屋に入ったら磯村くんは言いました。少し大人っぽくなったけど、磯村くんは、いつもとおんなじ磯村くんでした。磯村くんはなんにも言わないけど、「でもひょっとしたら、磯村最近、女と付き合ってんじゃないかな」なんてことを、さすがに鈍い木川田くんも感じていました。
日曜日の晩に電話で話している磯村くんの受話器の向うから、女の人の声が洩れて来ることもあったからです。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

[查看全部]  相关评论