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無花果少年と瓜売小僧68

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  68 榊原さんと、同じ大学の溝呂木《みぞろぎ》由梨ちゃんが、その頃六本木の「WAVE」というビルの中にいたことは、第三
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  68
 榊原さんと、同じ大学の溝呂木《みぞろぎ》由梨ちゃんが、その頃六本木の「WAVE」というビルの中にいたことは、第三部をお読みの皆さんなら既に御存知でしょう。
磯村くんと木川田くんは、そこに腕を組んでやって来ました。榊原さんと由梨ちゃんが階段を降りて来た時です。
 磯村くんは、その昔、木川田くんと一緒に六本木に来たことなんて、忘れていました。磯村くんの脳味噌の中では、それは三葉虫が生きていたのと同じぐらい遠い昔の出来事でした。「ふーん」と言っている磯村くんにとって、六本木はなんだかよく分らない町でした。いっそ田舎弁でも使ってやろうかと思って、「ここはなんというとこだんべ」なんてことを磯村くんは言いました。
それを聞いて、木川田くんはケラケラと笑いました。
磯村くんは、自分が何をしているのかが分らなかったのです。
「WAVE」に入って来ると、磯村くんは「あ、ヤな女」と思いました。暗闇の中に点《とも》った千メートル先の外灯のように、それだけが磯村くんの頭の中に点りました。
それぐらい磯村くんは、ぼんやりとしていたのです。
 磯村くんには、それが誰だかよく分りませんでした。顔の上に�ヤな女�っていう雨合羽《あまがつぱ》をかぶっているみたいで、その雨合羽が邪魔で、誰だか相手がよく分りませんでした。
「磯村くん」と言われて、「ああ……」と思いました。「ああ……、誰だっけ……」「ああ……、高校の……」
やっとそれが知ってる人だとは分りましたが、それが�榊原玲奈�という名前を持つ人だとはなかなか分りませんでした。
それどころか磯村くんは、自分の隣りに誰がいるのかもよく分りませんでした。
勿論その隣りにはさっきまで腕を組んでいて、そして榊原さんに会った途端、きまり悪そうにその手を離した木川田くんがいました。
 木川田くんははしゃいでいて、「何してんのォ?」と、久し振りに現実復帰の出来たヤングみたいな口のきき方をしました。
磯村くんに、まだ現実は帰って来ていません。
 エスカレーターに乗って、なんだか訳の分らないお店の中を歩いていて、気がつくと、木川田くんが自分の腕を握っていました。
「一体何してるんだろう」と思って、磯村くんは、自分が男と街を歩いてるんだってことに気がつきました。
男と腕を組んでて、男と一緒に寝ていた自分にも気がつきました。なんだか、おそろしくグロテスクなことをしていた自分も。
体をじんわりと包むような快感も覚えていて、うっかり声を出したりしたら、その全部が今この場所に飛び出して来てしまうような感じがしました。
公然と男と唇を合わせている自分が——。
 磯村くんは、ゆっくりと忍び足でその場から逃げようとしました。�その場�とは勿論、操り人形で、脱け殻になってしまった�自分自身�です。
磯村くんはゆっくりと、少しずつ冷静になって行きました。
「まずここを出て、それから腕を離して、それから——」って。
「そろそろ行かない?」
磯村くんはそう言いました。
「うん、行こうかァ」
木川田くんは、まだはしゃいでいました。
自分にはしっかりした現実があって、ちゃんとした家族があって、そして何よりも楽しい友達がいて、世界中のヤングのチャンピオンのような気がしていました。
まるでいつかの磯村くんです。
 木川田くんは磯村くんに凭《もた》れて、「WAVE」の丸い階段をグルグルと降りて行きました。一生懸命体を強張《こわば》らせている磯村くんは、木川田くんにとっては誰よりも頼もしい、誰よりも自分を守ってくれる神様のようでした。
相変らず木川田くんは、そういう発想しか出来なかったのです。
 階段を降りて、ドアを押して、誰も見つめるものがいないビルの外に出た時、ビルの外へ出て来て六本木の通りを右に曲った時、磯村くんは、低い声で言いました。
「もう、いいんじゃないの」
 木川田くんはちょっとビクッとしたみたいですけど、素直に「うん」と言いました。「見なくてもいい夢を見てたんだな」って、その時に木川田くんは思いました。
 木川田くんは手を離して、体を離して、黙って磯村くんのことを見ていました。
磯村くんはちょっと下を見て、「悪いけど」って言いました。
木川田くんは、もう何を言われるか分っていたので——そんな気がしたので——「うん」て言いました。
 磯村くんは顔を上げて、もう一遍「悪いけど」って言って、「もうこれっきりにしてほしいんだ」って言いました。
 木川田くんは、全部、分ったような気がしました。何が分ったのかはよく分らないけど、全部分ったような気がしました。それは�当り前のこと�で、それは当然のことで、それは泣いたり喚《わめ》いたりするようなことではなくって、そのまんま通り過ぎて行くものなんだって、そう思いました。
木川田くんは、そういう道を選んだのです。だって、木川田くんは男の子だから。
「うん」と木川田くんが言った時、もう磯村くんは、地下鉄の入り口の方へと歩いて行っていました。
「ごめんね」って言いかけて、「でももう自分は�ごめんね�って言わないんだ」って、木川田くんはそう思いました。
「だって、僕も君もおんなじ男の子だもの」——磯村くんの見えなくなる後ろ姿に向って、木川田くんはそう思いました。
口に出して言えれば絶対言っていたけど、でもまだ木川田くんは、自分にそれだけの自信がないと思っていたから、胸の中で呟《つぶや》いたのです。
「さよなら。いつかまた——。僕絶対、君みたいにカッコいい男の子になるからねッ!」
 木川田くんは、磯村くんの思い出に向って、一人でそう大声で囁《ささや》いていました。
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