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無花果少年と瓜売小僧71

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  71 磯村くんはなんにも考えられないまんま夜を過して、なんにも考えていない瞳に朝日を受けて、目を覚しました。目を覚して
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  71
 磯村くんはなんにも考えられないまんま夜を過して、なんにも考えていない瞳に朝日を受けて、目を覚しました。
目を覚して�はッ�となって、自分は昨日、なんかとんでもないことをしでかしたんだって、磯村くんは気づきました。なんかとんでもないことをしでかしたんだけどそれがなんだかよく分らないので、磯村くんは、緑色になってしまった強い光の当る部屋の中で、パチパチと目をしばたたかせました。
 気がつくと頭の中はボロボロになっていて、何がなんだかよく分りません。「よく分らないのは、よくないことがこの中にあって、だから頭はボロボロになっているんだ」って、磯村くんは思いました。
ボロボロになった頭を誰かにガンガン叩いてもらって、バラバラになった色んなことをもう一遍一つにしてもらいたいと思いました。
何がなんだかよく分らないって。
 磯村くんは突然、ピンクのレオタードのことを思いました。射しこむ光の中で緑色になってしまっている部屋の景色がまぶしくって、目を閉じた途端、瞼《まぶた》の裏がピンクになったのです。
ピンクのレオタードが飾ってあって、ピンクのバラが飾ってあって、って、磯村くんは思いました。
白いビニール・コーティングの金網《ネツト》が吊ってあって、そこにアディダスのジョギング・シューズとピンクのレオタードが飾ってあって、そこは花屋さんの向い側でした。
「そうだ、真理ちゃんはやらせてくれなかったんだ」って、磯村くんは布団の中で思いました。起き上って、掛け布団の上に手をついて、磯村くんはそう思いました。
「真理ちゃんはやらせてくれなかったし、でも僕は別にそんなこといいと思ってたんだ」って、磯村くんは思いました。
真っ白い薔薇の花の飾ってあるショーケースのそばにレジスターが置いてあって、花束用に切り落した葉っぱや羊歯《しだ》や、生け花用の緑色の灌木が缶に差してあって、その中にレジ係の�佐藤さん�がいました。いつも白いブラウスをすっきりと着こなしていて、「磯村さん、そこ片付けて頂戴」って、バイト先の花屋さんで、佐藤さんにいつもそう言われていたことを磯村くんは思い出していました。
佐藤さんはきれいな人で近寄り難くって、真理ちゃんと会って部屋に帰って来た後で、いつも磯村くんは佐藤さんのことを考えてオナニーをしていました。
「あーあ」
磯村くんはうんざりして起き上りました。
五月の朝は天気がよくて、風が強くて、カーテンを開けると隣りの畑から土埃《つちぼこり》がビュービュー上っているのが見えました。
土埃が窓を開けちゃいけないと言っているので、磯村くんはパジャマ姿のまんま、体臭のこもった部屋の中に坐りこんで、�ポリポリ�と頭をかきました。
「�真理ちゃんがやらしてくれなくてもいいや、僕には佐藤さんがいるから�なんてことを考えてたんだなァ、イッパシぶっちゃって……」なんてことを、磯村くんは考えました。
磯村くんは、はずみのつかない限り、なんにもものを考えられない人だったのです。
 頭の中がシーンとしていて、シーンとしているのに疲れて来ると、磯村くんは頭の中で喋り始めました。
「佐藤さんは好きだったけど、相手にしてもらえないの分ってたからな」って、磯村くんは思いました。
自分のいやなことをほじくり返すのなんて、誰だっていやですから。
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