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磯村くんは大学へ行くのがいやでした。いやでしたけど、でも磯村くんは他にすることがなかったので大学へ行きました。
部屋を出て高幡不動の駅まで行きましたが、磯村くんは、電車に乗りたくないと思いました。
改札口の向うは細い柱が何本も立っていて、日陰になっているホームの屋根の下にいる男の子達がまるで、田舎の露天風呂にいるおじいさん達のように見えたので、磯村くんはそこに行きたくなかったのです。
磯村くんはそこで電車に乗るのをやめて、多摩動物公園行きのバスが来るのを待ちました。
日の当る駅前でバスが来るのを待っていると、磯村くんの目の前は真っ暗になって行きます。「なんで真っ暗なんだろう?」って、磯村くんは考えました。
分りきったことを考え直すのは力のいることなのです。
部屋を出て高幡不動の駅まで行きましたが、磯村くんは、電車に乗りたくないと思いました。
改札口の向うは細い柱が何本も立っていて、日陰になっているホームの屋根の下にいる男の子達がまるで、田舎の露天風呂にいるおじいさん達のように見えたので、磯村くんはそこに行きたくなかったのです。
磯村くんはそこで電車に乗るのをやめて、多摩動物公園行きのバスが来るのを待ちました。
日の当る駅前でバスが来るのを待っていると、磯村くんの目の前は真っ暗になって行きます。「なんで真っ暗なんだろう?」って、磯村くんは考えました。
分りきったことを考え直すのは力のいることなのです。
磯村くんは、坂道を上って行くガラ空《す》きの多摩動物公園行きのバスの中で、なんにも物を考えてはいませんでした。
だって、外は天気がいいけど、バスの中は暗かったからです。
だって、外は天気がいいけど、バスの中は暗かったからです。
磯村くんは、�マゾのおじさん�のことを思い出していました。