開口一番「エー」とやる。結婚披露宴などで、来賓がスピーチをはじめるときである。
とたんに、
「長くなりそうだな」
という予感がする。案の定、長い。
そこで、
「この�エー�をやめたら、どうだ?」
と考えた。この�エー�さえなければ、来賓のスピーチも、かなり短縮されるのではなかろうか。
ところが、話術のプロである落語家に言わせると、この�エー�が大切なんだそうだ。落語家は、高座に上がって、
「エー、毎度バカバカしい……」
と喋り出す。この最初の�エー�が、客席の耳目を集め、ついでにざわめきも鎮めてしまう働きをするらしい。
それでも、聞く耳持たずに居眠りをしている人もいるようだ。そういう場合は、
「縁なき衆生は度し難し」
と諦める。
このことわざの「縁なき衆生」とは、仏教に関心のない人々のことである。仏教に関心のない人は仏教では救えない。
転じて、
「関心のない人を、いくら説得しても無駄だ」
という意味になった。スピーチの長い来賓に、いくら「スカートとスピーチは短いほうがよい」と忠告しても聞いてもらえないように。