イタリアでは一九世紀の末に民族学者や文学者によって多くの資料集が編纂されました。
カルヴィーノがグリムにならって『イタリア民話集』(一九五六年)を出版した時も、ほとんどをそれらの資料集から再話しています。「プレッツェモリーナ」もカルヴィーノが資料として使った話の一つで、インブリアーニ編の『フィレンツェの昔話』に収められているものです。その頃の多くの編者と同様、語り手の名を記録していませんが、語り手の口調を生かしてていねいに記録しています。
カルヴィーノはこの話の再話にあたって、くどいと思われる原文をすっきりと整理してしまいました。くらべてみると面白いでしょう。「プレッツェモリーナ」はグリムの「ラプンツェル」と同じ型の話ですが、口伝えの話としては魔女から逃げ出すことに重点を置いたこの話のほうが一般的です。