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国盗り物語83

时间: 2020-05-25    进入日语论坛
核心提示:森の怪異 光秀は、明神の石段をのぼった。森の梢《こずえ》にキラリと片鎌月《かたかまづき》がかかっている。(はて)と、光秀
(单词翻译:双击或拖选)
森の怪異

 光秀は、明神の石段をのぼった。
森の梢《こずえ》にキラリと片鎌月《かたかまづき》がかかっている。
(はて)
と、光秀は石段の途中で身をかがめた。たいした理由もない。わらじのひもがゆるんだのである。
ごう、とその背を風が吹きすぎた。そのつど樹々《きぎ》の枯葉が夜空にまきあげられ、それがふたたび森にたたきつけられるときは、まるで大粒の雨でもふりはじめたかと思われるような音をたてた。
(ご苦労なことだ)
この夜ふけに無人の森のなかに入ってゆく自分が、である。
(運よく妖怪《ようかい》がおってくれればよいが)
光秀は再び石段をのぼりはじめた。妖怪を見つけ、その正体をあばくか、退治することによって、光秀はこの朽木谷の館《やかた》にいる流亡の足利将軍に接近することができる、いや接近できずとも、その機会をつかむことができる、と思っていた。
(素牢人には、そういうてだて《・・・》しかない)
ともかくも若い間は行動することだ。めったやたらと行動しているうちに機会というものはつかめる——と、亡《な》き道三は光秀に語ったことがある。光秀はその教訓を信じたればこそこの朽木谷へきた。ここには将軍がいる。それに近づくがために妖怪退治という奇妙な行動を開始した。
(将軍の日常には話題がすくないにちがいない。旅の牢人が妖怪を退治した——ということになればきっと明智十兵衛光秀という名がお耳にとどくにちがいない)
(妖怪よ、出よかし)と、光秀は、石段を踏んでゆく。妖怪といえども、光秀の人生を決定する得がたき機縁にならぬともかぎらぬ。
社頭に入った。
一穂《いっすい》の神燈が、社殿から洩《も》れている。
光秀は苔《こけ》を踏んで社前にちかづき、しばらく剣を撫《ぶ》しつつあたりの気配をうかがっていたが、やがて、
(出そうには、ないな)
と、剣《けん》 《ぱ》から手をはなし、つかつかと社殿に進み、ぬれ縁にとびあがって格《こう》子戸《しど》をあけた。
灯が、ゆらめいている。
(今夜は、ここで寝るか)
何様が祀《まつ》られているかは知らぬが、光秀は祭壇の背後にまわり、むしろを敷いて横になった。
うとうととまどろむうちに夜があけた。
朝、志乃の家にもどった。
「いかがでございました」
と志乃は、この物好きな牢人に結果をきいた。出ぬさ、と光秀はやさしい微笑をうかべて、
「あれは毎晩出るのか」
「ほとんど毎晩だと申しますけど。そりゃあ、御神燈の油をなめにくるのでございますから、あの者にしても一日も欠かせられぬはずではありませぬか」
「なぜだ」
「お腹がすくではありませぬか」
光秀は笑った。志乃は、体は大人でも心はまだ子供であるようだ。
「そりゃ、妖怪でも腹がへるだろうな」
「だと思いますけど」
志乃は、まじめにうなずいた。
「今夜も出かけてみる」
「えっ」
志乃はうらめしそうな顔をした。今夜も自分と寝てはくれぬのか、と言いたいのであろう。
「そんなに物怪《もののけ》がお好きでございますか」
「いまは好きだな」
「なぜでございます」
「おれは国を追われた天涯《てんがい》の孤客だ。世間を踏みはずしたこのような素牢人を相手にしてくれるのは妖怪だけかもしれぬ」
「志乃もおりまするのに」
「なるほど」
あごの下に、ちょっと掌をあててやった。
「まことに志乃も、おれを厭《いと》わずに相手にしてくれる。しかし男は夜だけでは生きられぬ」
その夜も、光秀は社殿に入った。
(今夜は寝入らぬぞ)
と思って祭壇の背後ですわった。やがて、初更《しょこう》の鐘がきこえてきて、それが鳴りおわったころ、カサコソと落葉を踏む音がきこえた。
(きたか)
と、息をこらし、剣を抱きよせた。
ぎいっ、と格子戸が持ちあげられ、どん、と踏みこむ足音がした。やがてそのもの《・・・・》はあらあらしく入ってきた。
(思ったより大きい)
物音、気配、気づかいの柄《がら》がよほど大きいのである。カチカチと物音がするのは、油皿《あぶらざら》に手を触れているのであろう。
やがて、蔀《しとみ》の格子戸がばたりと落ちて、妖怪は社殿を出たようであった。
光秀はすばやく祭壇の前に出、格子ごしに去ってゆく妖怪を見すかした。
妖怪の背を見た。
その背は、侍の風をしていた。ずいぶんの大兵《だいひょう》である。
「待った」
と光秀は叫んだ。
侍は、ぎょっ、とふりむいた。
「そこを動くな」
光秀は言いつつ、格子戸をはねあげ、そとへとびだした。
「夜な夜な社殿にて油を舐《な》めるという妖怪はそのほうか」
「そちは何者である」
と妖怪らしい者が言い、油皿を用心ぶかく地上に置き、スラリと剣をぬいた。
光秀も縁の上で剣をぬき、トンと地上にとびおりた。
斬《き》るつもりであった。
光秀は、度胸がある。剣尖《けんさき》を天にあげ、八《はっ》双《そう》にかまえつつジリジリと進み、やがて跳躍し、
びゅっ
と、相手の首すじをめがけて振った。その太刀行きのすさまじさ、ただ者ならそのまま首を天空に刎《は》ねとばされていたであろう。
が、妖怪はかわしもせずそれを剣で受けとめた。戞《かつ》と火花が飛んだ。
鍔《つば》ぜりあいになっている。相手はよほど膂《りょ》力《りょく》に自信があるのか、そのまま退《ひ》きもせず、刀をもって光秀の刀を押し、そのまま押し斬ろうという勢いをみせた。
相手はのしかかろうとした。上背はあり、膂力はあり、あきらかに光秀の不利であった。光秀は退こうとした。が、相手の刀に圧せられて身動きもできない。
法は一つある。
相手の手元を、左斜めに押しあげてみることだ。光秀はそれをした。相手は不覚にも——おそらく兵法《ひょうほう》では光秀に劣るのであろう——それに応じて右斜めに強く押しかえしてきた。光秀にとって思う壺《つぼ》といっていい。光秀はその相手の力を利用しつつ利用しざま、自分の体を左に躱《かわ》し、躱しつつぱっと離れて左斜めから相手の面を短切《たんせつ》に襲った。
相手も、ぬかりはない。剣を立ててそれを受けたが、光秀をば逃がしている。
光秀は、六尺の間合いのそとへ脱した。そこで正眼《せいがん》に太刀を構えた。
と同時に、
(待てよ)
と、自分に問いかけた。鍔競合《つばぜりあ》いのときちらりと見た相手の容貌《ようぼう》が、ひどく人間臭く思えたのである。
「おぬしは、人間か」
と、光秀にしては間のぬけた問いを発してしまった。
「人間だ」
相手は落ちついて、その愚問に答えた。人間とすればよほど出来た男であろう。
「里には妖怪のうわさが立っている」
と、光秀はいそいで言った。
「妖怪は、神前で油をなめるという。思いあわせてみれば最前おぬしは」
「左様、油を盗んだ」
武士は、答えた。
「なぜ盗む」
光秀はさらに問いかけたが、語気ががらりと変わって弱い。すでに自分の愚行に気づいた声である。
相手にもそれがわかったのであろう。剣尖をしずしずと下におろした。
光秀も機敏にそれを察し、自分から刀を鞘《さや》におさめ、
「申しわけなかった」
と、かるく頭をさげた。そのときは相手も刀をおさめている。

「いや、わかった」
と相手は光秀から事情をきいて、淡泊に諒《りょう》解《かい》してくれた。
こうなれば過失をおかした側の光秀から名乗らざるをえない。
美濃の名家の出だけに、それを相手にわからせるために荘重な名乗りをおこなおうとした。そこは天涯の素牢人である。自分の存在を誇示するのは彼の場合、家系だけであった。
明智氏はむろん土岐氏の支族である。上は清和天皇より出ている。源頼光《よりみつ》からかぞえて十世の孫土岐頼基の子彦九郎という者が美濃明智郷に住んではじめて明智姓を名乗った。その彦九郎からかぞえて四代目が光秀であった。
ところが光秀が、
「美濃明智郷の住人にて明智十兵衛光秀」
といっただけで、
「ああ、土岐の明智か」
相手は、うなずいた。明智氏がどんな家系であるかをよく知っているのである。
「このたびは道三殿が没落して気の毒であったな」
とまで、この男はいった。諸国の武家の家系や盛衰に通じているとは、いったい何者であろう。
「されば貴殿は?」
「将軍のおそばに仕えている者で、細川兵部《ひょうぶ》大輔《だゆう》藤孝《ふじたか》という者だ」
「これは左様なお方とは存ぜず、ご無礼つかまつった」
(よい者に出会った)
と、光秀は思った。
「しかし、なぜ将軍御側近ともあろうお方がかかる田舎社の油などをお盗みあそばす」
「夜分、燈火の料《しろ》乏しゅうてな」
と、細川藤孝は若々しい声で笑った。
「盗んでいる。それにて書物を読み、後日なすところあらば、神明もゆるしたまわるであろうが」
「いかにも」
よほどの読書家らしい。
二人は、石段をくだりはじめた。
聞けば、細川藤孝は昼間は将軍のお側用《そばよう》でいそがしく読書もできないため、将軍が寝《しん》につかれてから書見するのだという。
「夜の書見は金が要る」
細川藤孝は屈託なげに笑った。その費用がないため明神の燈油をぬすむのだというのである。
(将軍は想像以上の窮迫ぶりらしい)
この一事でもわかることであった。将軍をかくまっている朽木家も、さほど力のある豪族でもないため、潤沢《じゅんたく》な生活費も出していないのであろう。
光秀は多感な男だ。
もうそれだけで涙ぐみ、
「申すも畏《おそ》れ多きことでござるな」
といった。
「それがし、将軍家が朽木谷に難を避けておられるときき、そのお館を遠《とお》見《み》ながらも拝みたいと思って参ったのでござるが、そこまで御窮迫なされているとは思いませなんだ」
「なげかわしいことだ」
細川藤孝はいった。
「まことに」
光秀はうなずいた。
「征夷大将軍と申せば、われわれ日本の武士の御頭領《おんとうりょう》におわします。その御頭領がかほどまでの御窮状におわすこと、聞くだに胸のふさがる思いがいたしまする」
「乱世なのだ」
「その世の乱れを、なんとかおさめて将軍家の御栄《おんさか》えを昔日にもどし、下《しも》万民が鼓《こ》腹撃壌《ふくげきじょう》できる太平の世を将来したいものでありまするな」
「めずらしいことをきくものだ」
細川藤孝は、真実驚いたらしい。光秀の顔をのぞきこむようにして三嘆した。この戦国の世で、こうも烈々と将軍家の復興をこいねがっている者が居ようとは思わなかったのである。 
それにただの田舎武士ではなく、よほどの教養があるらしいことが、言葉のはしばしで察せられる。
(ただ者ではない)
と、細川藤孝はおもった。
山を降りて往還に出たとき、
「なにやら、同志を得たような気がする」
と、細川藤孝は言い、
「どうであろう、あす、わしがもとに訪ねてきて賜《たまわ》らぬか。よもやまの物語など聞かせていただきたい」
「いや、それはこちらこそ望むところ、ぜひ参上つかまつりまする」
と約して別れた。
志乃の家まで帰る途上、光秀は大げさにいえば天にものぼる気持であった。
(とんだ妖怪退治になった)
と思い、さらにはこの二人の結びつきがそもそも油であったことに思い至り、
(ふしぎな縁であるな。道三殿もはじめは油商奈良屋に婿《むこ》入《い》りして山崎屋を興し、その油を売りつつ美濃へ来られたという。義理の叔父甥《おい》の仲とはいえ、おなじ油がとりもつ縁でなにやら妙なことになったわい)
ただ道三とは野望の方向がちがっている。道三は古びてどうにもならなかった足利的秩序をこわそうとし、事実美濃で実力によるあたらしい国家を築きあげたが、光秀はこれとは逆に衰弱して見るかげもない足利幕府をこの乱世のなかで再興しようというのである。
宿の戸をたたくと、志乃があけてくれた。光秀の意外に早かった帰りをいぶかしみ、
「どうなさいました」
ときくや、いやさ出るか出ぬかわかりもせぬ妖怪などを待っていては寒さで凍《こご》え死ぬわいと思い直し、あきらめて帰ってきたよ——と笑いながらいった。
ひどく上機嫌《じょうきげん》である。
(おかしなひと)
と志乃には、男というものがまだふしぎな生きものとしかみえない。
光秀は志乃に湯をわかしてもらい手足を洗って、寝所に入った。
ほどなく志乃が入ってきて、臥《ふし》床《ど》のはしをめくり身を差し入れてきた。
「足が、冷とうございましょう?」
と、先夜とおなじことをいった。なるほど志乃の足はつめたい。光秀は先夜とはちがいひどく気さくに、
「わしが温めて進ぜよう」
と、その足を自分の足ではさんでやった。べつに卑《ひ》猥《わい》な情でそうしたのではなく、光秀という男は、そういう優しみがある。
「将軍《くぼう》様の側近衆のなかで、細川兵部大輔藤孝という仁を存じておるか」
と、光秀は、志乃を抱くよりもむしろそのことで頭がいっぱいであった。
「若いお人?」
「そう、若い。大柄《おおがら》だな」
ああ、と、志乃には思いあたったらしい。
大層な歌人で学者で、しかも大力無双の人物だという。
「ある日」
と、志乃は小さな事件を話した。ある日、将軍が五人の近習とともに山歩きをなされ、その帰路、牛が路上に寝そべっていた。近習が牛を立たせようとしてさまざまに操ったがどうしたことか牛が動かない。
「それをあの殿が」
牛の左右の角をつかみ、ずるずると腹《はら》這《ば》わせたままひきずって田のふちまで移し、そのあとぱんぱんと袴《ほこり》のちりをはらって息切れもしていなかったという。
「面白《おもしろ》いな」
と、光秀がいったのは、大力に感心したわけではない。牛を腹這いのまま引きずるといういわばはしたない、奇矯《ききょう》な、おっちょこちょいとでもいうべき行動を人前でやるあの男の精神がおもしろいと思ったのである。そういう精神がなければ、細川藤孝はただの学問好きな武士というだけで、光秀にとって語るに足りない男であった。
(生涯つきあってもよさそうな男だな)
と、光秀は、昂奮《こうふん》しきった気持のなかで、それを思った。
細川藤孝。
のち、幽斎《ゆうさい》と号し、その子忠興《ただおき》とともに、江戸時代肥後《ひご》熊本《くまもと》で五十四万石を食《は》む細川家を興すにいたる。その忠興の妻が光秀の娘で、洗礼名ガラシャと言い、のちに別の事件で世に知られるにいたるのだが、いまの光秀にはこのときの因縁が遠い将来《さき》にどう発展するかまでは、むろんわからない。
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