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きれいなお城の怖い話01

时间: 2020-06-30    进入日语论坛
核心提示:奇妙な噂《うわさ》どこまでもどこまでも続く、荒涼たる不毛の荒野。吹きわたる風、遠くから聞こえてくる狼《おおかみ》の遠吠《
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奇妙な噂《うわさ》

どこまでもどこまでも続く、荒涼たる不毛の荒野。吹きわたる風、遠くから聞こえてくる狼《おおかみ》の遠吠《とおぼ》え、舞い上がる土煙……。チェイテの城は、そんな荒野の上にそびえていました。通る人々を威嚇《いかく》するように、城というより砦《とりで》のような居丈高な天守閣を高くかかげながら……。
その下を通りかかるたび、村人たちは噂したものでした。城に一人住んでいるという伯爵夫人の話。とても美しい女だといいます。四人の子を持ったあと、偉大な英雄だった夫ナダスディ伯爵と死に別れ、まだ衰えていない美貌《びぼう》を、あたらこの田舎の古城でうもれさせているのだとか……。
それだけでも興味をそそるのに、もっと奇妙な噂がたっていました。実はこのお城に侍女としてやとわれてくる村娘たちが、つぎつぎと行方不明になっているというのです。「お城には吸血鬼が住んでいるのだ。恐ろしい魔物が住んでいるのだ。娘たちはそれに食われてしまったのだ……」村人たちは顔をつきあわせると、声をひそめ身を震わせながら噂したものでした。けれど真相は分からずじまいでした。その娘たちがどうなってしまったか。どこに行ってしまったか。生きているのか。死んでいるのか……。
不審に思っていたのは、村人だけではありませんでした。もう一人、チェイテ城の伯爵夫人に疑いの目を向けている人間がいたのです。村の神父、ポニケヌスでした。彼はしばしば伯爵夫人から、奇怪な夜の埋葬に立ちあうよう呼び出されました。着くと庭や畑の隅に土饅頭《どまんじゆう》ができていて、土まみれの手に鍬《くわ》をもった男女が数人、闇《やみ》のなかに立っています。誰が死んだのだろうと思いつつも、神父は命じられた通りその土饅頭に祈りの文句を唱えます。「この娘たちは疫病で死んだのです。村中に騒ぎを起こしたくないので、誰にも内緒にしておいて下さい」伯爵夫人の使用人たちの言いわけに、初めは神父も別におかしいとは思いませんでした。が、それにしては死体の数が多すぎます。それに死体の外観をひた隠しにしようとする用心深さ、死体の異常な若さ、死者が女ばかりなこと、埋葬場所の異常さも……。
これは何かある。そう睨《にら》んだ神父は、ある日、自分の目で真相を確かめることを決意しました。その晩、彼は従者といっしょに松明《たいまつ》を持ち、城と教会をつなぐ地下道につづく薄暗い石段を降りていきました。カビ臭い臭《におい》がただよう狭く長い地下道は、やがて割石が敷かれた丸い部屋に通じました。ここにはチェイテの歴代の城主の墓があるのです。
二人は忍び足で、薄暗い石壁のあいだを進みます。しじまのなかで物音が大きく拡大されて響くので、そのたびに身がちぢむ思いがしました。さらに数歩進むと、むっと刺すような悪臭が二人を襲いました。そして……、神父は発見したのです。床の上に山積みされた、蓋《ふた》に釘《くぎ》もうたれていない、ごく簡素な木柩《もつきゆう》。蓋を開けると、腐りかけた若い娘の死体がつぎつぎと見つかり、そのどれにも明らかに拷問のあとがありました。まだ腐っていない部分には何か鋭い刃物による無数の刻み跡があり、炭のように真っ黒な血が乾いてこびりついていました。
神父は吐き気を耐えるため、口に手をあて、恐怖にわななきながら、あとずさりしてつぶやきました。「やっぱり、やっぱり私の思っていたとおりだ……」
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