はた迷惑な酔っぱらいのためには、「飲んだくれのマント」なる刑罰があった。底をぶちぬいた大樽《おおだる》で、上に穴があいている。この樽をかぶらされ、上の穴から頭だけを出して、罪人は町中を引きまわされるわけである。一七世紀イギリスで、庶民に大変人気のあった刑罰だそうだ。
「飲んだくれのマント」は、時おり酔っぱらい以外の罪人に用いられることもある。イギリスの日記作家ジョン・イーブリンは一六三四年に、浮気妻が重そうな木製の樽をすっぽりかぶらされ、上の穴から頭だけをのぞかせて、町中を引きまわされ、皆からやんやはやしたてられるのを目撃している。
中国でも、強盗や賭博《とばく》などの犯罪者に、同じような刑罰があった。カンゲ(首かせ)という大きな四角い木の板で、まんなかに首を出す穴があいている。被告は犯罪の程度によって、これを一定期間のあいだ首にはめていなければならなかった。
借金をふみたおした債務者も、債権者がよしというまで、このカンゲをつけていなければならない。カンゲを首にかけられているあいだは、被告は誰かが食べさせてくれないかぎり何も食べることが出来ない。人気のある罪人は、それでも誰かが物を食べさせてくれることもあるが、人気のない罪人は飢えと渇きで死んでしまうのはしょっちゅうだった。
やはり見せしめの刑の一種で、「さらし台」というのもある。地上から数フィートの高さの木柱の上のほうに、長方形の木板がついている。被告は木柱の後ろに立ち、木板に開いた三つの穴に、頭と両手をはめられて、みせものにされる。
ときにはさらし台がもっと大規模になって、複数の罪人を同時にさらし者にすることも出来た。罪人が嫌われ者のときは、群衆がてんでに石や瓦礫《がれき》を投げつけ、なぶりものにして殺してしまうようなことも起こる。
さらにひどいものになると、罪人をさらし台にさらすとき、両の耳を木板に釘《くぎ》で打ちつけて、釈放する直前に切断したり、あるいは鼻をそいだり、顔に烙印《らくいん》をおしたりすることもあった。