フランス式の拷問で、「ブーツ」という足かせ刑がある。有名なところでは、フランス国王アンリ四世の暗殺者、ラヴァイヤクがこの拷問にかけられている。
足かせ刑のなかでも、一般的なのはつぎのようなものだ。まず囚人を椅子《いす》にすわらせ、きっちりくっつけた両脚を、膝《ひざ》からかかとまで、二枚の板ではさみ、板の両端を鉄の枠組《わくぐみ》でしっかりと止める。
こうして両脚を締めつけてから、木のくさびを槌《つち》で叩《たた》きこむのだが、一つのくさびは板の内側と両脚のあいだに、もう一つのくさびは板の外側と周囲の枠組のあいだに打ちこまれた。
槌で打たれるたびに、囚人の顔は激しい苦痛でゆがむ。ものすごい力で締めつけられるので、しまいに両脚はグニャグニャに砕けてしまうのだ。
このバリエーションに、つぎのようなものもある。腰かけに後ろ手に縛った囚人をすわらせ、両脚の内外に木片をあて、縄でしっかりくくりつける。そしてまん中の板のあいだに、ふつうは四個、特別なときは八個のくさびを槌で打ちこむのだが、八個もくさびを打つと、文字どおり脚の肉が炸裂《さくれつ》し、骨までとびだしたという。
囚人の両脚に、羊革の長靴下をはかせるという拷問もあった。靴下が濡《ぬ》れているうちに脚にはかせるのだが、これを火であぶると、羊革がギュッと縮んで脚を締めつけ、それこそ耐えがたい苦しさになる。
フランスのオウトゥンで用いられた足かせ刑で、こんなものもある。まず囚人を椅子に縛りつけ、小さな穴がいくつもあいた革靴を足にはかせる。そのうえから大量の熱湯をそそぐと、靴のなかにしみとおって、それこそ肉をふやかし骨まで溶かしたという。
スペインでは「スペイン式ブーツ」なる足かせ刑があった。ふくらはぎまでの長さの金属製ブーツを囚人にはかせ、沸騰した熱湯、どろどろのコールタール、あるいは煮えかえった油をそのなかに注ぎこむ。
このバリエーションに、内側に鉄のこぶしが突きだした木製ブーツもある。捩子《ねじ》を締めると、鉄のこぶしが脚に深く食いこんで壮絶な苦しみを与え、しまいには完全に骨をくだいてしまうという具合である。
主に中国でおこなわれた拷問の一つに、�親指ねじりの刑�というのがある。二つの鉄の小穴の中に親指をいれ、捩子で締めあげて、親指の骨を粉砕させる方法である。
スコットランドの聖職者で、一六八二年に、ライ家陰謀事件に関与したかどで逮捕されたウィリアム・カーステアズは、一時間半にわたってこの親指ねじりの刑に処されている。
カーステアズはオレンジ公ウィリアム(のちのウィリアム三世)の友人だったから、革命後、その親指ねじり器はカーステアズにプレゼントされた。
ウィリアム三世は、自分もぜひそれを見せてくれとねだり、面白半分に自分の親指を入れて試してみたが、すぐにウウッと呻《うめ》いて止めてしまい、「オレだったら、一|捩《ねじ》りされただけで、何もかも吐いちまうだろうな」と、つくづく嘆息したと伝えられる。