日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

十二国記048

时间: 2020-08-18    进入日语论坛
核心提示: 陽子は道をさまよっていた。拓丘《たっきゅう》を出て何日がたったのか、そもそも家を出て何日がたったのか数えようとしてもも
(单词翻译:双击或拖选)
 陽子は道をさまよっていた。拓丘《たっきゅう》を出て何日がたったのか、そもそも家を出て何日がたったのか数えようとしてももう思い出すことができなかった。
 陽子がいるのがどこで、そしてどこへ向かっているのか、それは陽子自身にもわからなかったし、すでに興味を無くしていた。
 日が暮れるから剣をにぎって立つ。敵が来るから戦う。朝が来るから寝場所を探して寝る。それだけがただ続いていく。
 珠《たま》をにぎり、剣を杖にして立ちあがるのが当たり前になった。敵がいなければ座りこむ。間合いが遠ければ足は引きずる。人の気配がなければしゃべるかわりに始終うめく。
 飢餓は身内に張りついてすでに体の一部になった。飢《う》えに負けて妖魔の死体を切り刻んでもみたが、異常な臭気があってとうてい口に持っていけない。たまに出会う野獣をしとめ、それを口にしたときにはすでに身体が固形物を受けつけなくなっていた。
 
 幾度目かの夜を乗り切って、夜明けを迎えた。街道から山に踏み込もうとして木の根に足を取られ、長い斜面を転がり落ちて、投げやりな気分でそこで眠った。眠る前に周囲を見回すことさえしなかった。
 夢も見ずに眠って、目が覚めるとどうしても立ちあがることができなかった。周囲は樹影の薄い林のなかのくぼ地、すでに陽《ひ》はかたむいてじきに夜がやってくる。このままこんなところで身動きできなくなったら、妖魔の餌食《えじき》になるだけだ。一度や二度の襲撃なら、ジョウユウがむりにも戦わせてくれるだろうが、それ以上になればもはや身体がいうことをきかないだろう。
 陽子は地に爪をたてる。なんとしてもせめて、街道まで出なくては。
 せめて街道へ出て誰かの助けを求めなければ、ここで死ぬだけだと想像がついた。首に下げた珠を探る。それを必死でにぎりこんでも、剣を杖のかわりに地に突き立てることさえできなかった。
「助けなんて来やしないサァ」
 とつぜん声がして、陽子は視線を向けた。光のあるうちにその声を聞いたのははじめてだった。
「これでとうとう楽になれるなァ」
 陽子はただ粉を吹いたように見える猿の毛並みを見つめる。なぜこんな時間に現れたのか、とそれだけボンヤリ考えた。
「これで街道に這《は》って出ても、どうせ誰かにつかまるだけサァ。助けといえば助けかもしれねえなぁ。そいつがひと思いに殺してくれるかもしれないからヨォ」
 たしかにそうだ、とそう思う。
 誰かに助けを求めなければ、と思う。その願いが切実だから、助けなどあるはずがないという気がする。街道に出ても助けは来ない。もしも誰かが通りがかったとしても、その誰かは陽子をふり向きもしないだろう。汚い、浮浪者のような姿に顔さえしかめていくのかもしれない。
 そうでなければ、追いはぎだろう。彼は陽子に近づき、盗めるほどのものがないのを見てとって剣を奪っていく。ひょっとしたらごていねいにとどめを刺していってくれるかもしれない。
 この国はそういうところだ、とそう思って、陽子は唐突に気づいた。
 この猿は陽子の絶望を喰いにやってくるのだ。サトリの妖怪のように陽子の心に隠れた不安を言い暴《あば》いて、陽子をくじけさせるために現れる。
 小さな謎をといたことが嬉しくて、陽子はかるく微笑んだ。それに力を得て寝返りを打つ。腕に力をこめて体を起こした。
「あきらめたほうが良くはないかい」
「……うるさい」
「もう楽になりたいだろう」
「うるさい」
 陽子は剣を地に突き立てた。崩《くず》れそうになる膝を緊張させ、悲鳴をあげる手で柄《つか》にすがりついて身体を支える。立ちあがろうとしたが、バランスを崩した。こんなに体は重かったのか。まるで地面を這《は》うべくして生まれてきた生き物のようだ。
「そこまでして生きたいのかい。生きてなんの得があるんだ、え?」
「……戻る」
「そんな苦しい思いをしてよォ、それで生きのびたって戻れやしねえよ」
「わたしは、帰るんだ」
「帰れねえよ。虚海を渡る方法はねえのさ。おまえはこの国で、裏切られて死んでいくんだ」
「うそだ」
 この剣だけが頼りだ。陽子は柄《つか》をにぎった手に力をこめる。頼るものもすがるものもない。ただこれだけが、陽子を守ってくれる。
 ──そして、と陽子は思う。
 これだけが希望だ。これを陽子に渡してくれたケイキは、二度と帰れないとは言わなかった。ケイキに会えさえすれば、戻る方法が見つかるかもしれない。
「ケイキが敵じゃねえと言えるのかい」
 ──それを考えてはいけない。
「ほんとうに助けてもらえるのかい?」
 ──それでも。
 このままなんの手がかりもなくさまよっているよりも、ケイキが敵であれ味方であれ、彼に会ってみること以上のことがあるはずがない。ケイキに会ってなぜ彼が陽子をこちらにつれて来たのか、帰る方法があるのかないのか、聞きたかったことをぜんぶ聞いてみる。
「帰って、それでどうなるんだい、えェ? 戻ればそれで、大団円になるのかい?」
「……黙れ」
 わかっている。戻ったからといって、陽子はこの国を悪夢だと忘れてしまうことはできないだろう。なにもかもなかったふりで、以前のとおりに生きていくことなどできるはずがない。ましてや、戻ったからといってこの姿が元に戻るという保証があるのか。そうでなければ「中嶋陽子」のいた場所に戻ることはできないのだ。
「浅ましいこったなァ。あきれたバカ者だよ、おまえはナァ」
 きゃらきゃらと遠ざかっていく哄笑《こうしょう》を聞きながら、陽子はもう一度身を起こした。
 どうしてなのか自分でもわからない。バカだと思うし浅ましいとも思う。それでもここであきらめるぐらいなら、もっと前にあきらめてしまえばよかったのだ。
 陽子は自分の身体を思い出す。怪我《けが》だらけで血と泥によごれたままで、ボロ布のようなありさまになりつつある服からは、身動きするたびにいやな臭気がする。それでもこうしてなりふりかまわず守ってきた命だから、簡単に手放す気にはなれなかった。死んでいたほうがましだったというなら、そもそもの最初、学校の屋上で蠱雕《こちょう》に襲われたときに死んでいればよかったのだ。
 死にたくないのでは、きっとない。生きたいわけでもたぶんない。ただ陽子はあきらめたくないのだ。
 帰る。かならずあのなつかしい場所に帰る。そこでなにが待っているか、それはそのときに考えればいいことだ。帰るためには生きていることが必要だから、守る。こんな所で死にたくない。
 陽子は剣にすがって立ち上がった。斜面に突き立て、藪《やぶ》におおわれた坂を上がり始める。これほどゆるくこれほど短いのに、これほどつらい坂を陽子は知らない。
 何度も足をすべらせ、くじけそうになる自分を励まして、上を目指す。苦吟《くぎん》の果てにようやく伸ばした手の先に街道の縁がかかった。
 爪を立てて道に這《は》いあがる。うめきながら街道に身体を引きあげて、平坦な地面の上につっぷしたとき小さな音が聞こえた。
 山道の向こうから聞こえる声に、陽子は思わず苦い微笑《わら》いを浮かべた。
 ──よくできている。
 この世界はどこまでも陽子がにくいらしい。
 山道を近づいてくるその声は、赤ん坊の泣き声にひどく似ていた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%