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十二国記137

时间: 2020-08-26    进入日语论坛
核心提示: 建物に入って男女の召し使いらしい人間に取り囲まれた陽子たちは、延《えん》と引き離されて奥まった部屋に押しこまれてしまっ
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 建物に入って男女の召し使いらしい人間に取り囲まれた陽子たちは、延《えん》と引き離されて奥まった部屋に押しこまれてしまった。
「あの……」
「ええと」
 狼狽する陽子と楽俊に女官が無感動な顔を向ける。
「こちらで、お召し替えを。今お湯をお持ちします」
 どうやら汚い格好で宮内をうろつくなということらしい。困惑しながらもうなずいて、運ばれた桶《おけ》で体を洗う。楽俊と交互に衝立《ついたて》の陰で湯を使って次の部屋に行くと、広い部屋の広いテーブルの上に新しい着物が用意されていた。
「これを着るのか……?」
 いやな顔をしてつまみあげた華やかな織地の着物を楽俊が検分する。
「こりゃ男物だなぁ。陽子が男だと思ったのか、女だとわかって延王が命じたんならしゃれた方だな」
「楽俊の分もあるみたいだな」
 陽子が言うと楽俊は肩を落とす。
「いまさらとも思うけど、貴人に会うのにこのナリじゃ失礼だろうなぁ」
 そりゃあ、いわば裸《はだか》だもんね、と思いながら陽子は着がえを渡す。街道で出合った獣の姿が目に蘇《よみがえ》る。服を着た獣の数は少なくなかった。楽俊はいやそうだが、想像するとほほえましい。
 肩を落とし、尻尾《しっぽ》を引きずって衝立の陰に入った楽俊を見送って陽子も用意されたものに着がえた。寛《ひろ》い柔らかな薄布のズボン、薄いブラウスと同じく薄い着物、鮮やかな模様を織りこんだ長い上着で一揃いだった。
 素材はぜんぶ絹だろう、滑らかな感触が粗末な服になれた肌にはくすぐったい。刺繍《ししゅう》のある帯を結んだところに扉を開けて老人が姿を現した。
「お召し替えはおすみですか」
「わたしは。……連れは」
 もうすこし、と言いかけたところに衝立が動いた。
「だいじようぶだ、すんだ」
 答えた声が低い。陽子はぽかんとする。衝立の陰から現れた姿を見てしばらく声が出なかった。
「どうした」
「……楽俊……だよね」
「そうだ」
 うなずいてから、彼は破顔する。
「ああ、この格好は初めてか。おいらはまちがいなく楽俊だ」
 陽子は頭を抱えた。以前楽俊を抱きしめたとき、慎《つつしみ》みがないと言われたわけがようやくわかった。
「ここが、常識を越えたところだって忘れてた」
「そのようだな」
 彼は笑った。年のころなら二十とすこしの、立派な人間の若者だった。中背でどちらかというと痩《や》せぎすだが、いかにも健康そうな体つきの男。「正丁」とはそういえば、成年男子の意味だった。
「ただの獣ならしゃべるかい。半獣だといっただろうが」
「……たしかに」
 顔から火が出るとはこのことだ。半獣だ、正丁だと何度も言われたにもかかわらず。抱きついただけでなく、宿だって同室だった。はるか昔に寝間着に着がえさせてもらったこともあったような気がする。
「陽子はしっかりしているようで、ウカツだなぁ」
「自分でもそう思う。……どうしていつも人間形でいないわけ」
 思わずうらみをこめて言うと、楽俊は朱の着物を着た肩を落とした。
「着飾っているようで、肩が凝《こ》る。おまけにほんとうに着飾らされた日にゃ……」
 ぶつぶつ言う声がほんとうに情けなさそうで、陽子はかるく笑った。
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