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十二国記221

时间: 2020-08-27    进入日语论坛
核心提示:「さすがに戴国《たいこく》は風が冷たい」 内殿《ないでん》の庭にある、広大な池のほとりに立った景麒《けいき》はひとりごち
(单词翻译:双击或拖选)
「さすがに戴国《たいこく》は風が冷たい」
 内殿《ないでん》の庭にある、広大な池のほとりに立った景麒《けいき》はひとりごちた。
「すこし、座りますか?」
 言って、背後で身をすくめるようにして立っている泰麒《たいき》を振りかえる。
 すぐ近くに、呆《あき》れるほど華麗な四阿《あずまや》が建っていた。
 それは先の泰王《たいおう》が建てたもので、床も柱も水晶でできている。池の周囲にはこのほかに、煙水晶、黄水晶、紅水晶、紫水晶で同様の意匠の四阿が設けられる予定だったが、四亭はまだ建設途中で、先王の崩御《ほうぎょ》とともに工事も中断され、そのまま放置されていた。
「戴国は玉《ぎょく》の産地だが……これでは内乱が絶《た》えなかったはずだ」
 景麒は巨大な水晶を積み上げた柱をなでる。
 戴国は気候が悪い。作物の実りには見放されていたが、代わりに玉泉《ぎょくせん》が無数にあって本来ならば豊かなはずの国だった。玉泉とはその名の通り宝玉を産出する泉で、ここに種になる玉を沈めておけば種は育って巨大な結晶になる。金泉、銀泉も同様に多い。
「この大きさなら、三十年かそこらはかかろう」
 国中の倉という倉が空《から》になったといわれるはずだ。
 そんな王の治世がそれでも百年以上続いたのは、ひとえに彼が遊びと政治を混同しなかったためによる。彼はともに遊興にふける相手を侍従・女官《にょかん》に召しあげたが、けっして冠位を与えて政治に参加させることをしなかった。
「おかけにならないのか?」
 景麒は黙《だま》って立っている子供に目をやる。
「……けっこうです」
「泰台輔《たいたいほ》には、なにをお悩みか?」
「……なにも」
 つぶやくように答えた表情がどこまでも堅《かた》い。それで信じられるはずがなかった。
「使令《しれい》を下されたと泰王《たいおう》にお聞きしました」
「はい」
「転変《てんぺん》なさったとも」
「……はい」
「残念です」
 泰麒はいぶかしんで景麒を見返した。景麒は皮肉めいたとも自嘲《じちょう》めいたともつかぬ笑みをうかべる。
「わたしはお約束どおりに泰麒をお訪ねした。もっと喜んでいただけると思っていた」
 泰麒はうなだれる。
「本当に残念です」
 静かな声が泰麒の臓腑《ぞうふ》をえぐった。
 会いたいと思っていた人に会って、少しも喜べない自分のみじめさを思う。
 誰に対しても──それこそ女官に対してさえ──申しわけなく、すまなく、まっすぐに相手を見ることができない。最後に安らかに眠ったのはいつだったろう。良心の呵責《かしゃく》なしに人に会ったのはいつだったろう。
 ──これは罰《ばつ》だ。罪があきらかにされるまで、未来永劫《みらいえいごう》続くのだ。
 泣く権利などないとわかっていたが、涙がこぼれた。
「泰麒……」
 さしだされた景麒の手をとって膝《ひざ》をついた。頭をなでてくれたので、そのまま景麒の膝に頭をのせた。
「どうなされた?」
 景麒の声は抑揚《よくよう》にとぼしいぶん、しみるほど静かだった。
「……台輔は……麒麟《きりん》に生まれたことを後悔なさることはありませんか?」
「ありません」
「……王を選んだことを後悔なさることは?」
「ありません」
 泰麒は顔をあげる。
「でも、景台輔はあまり王とうまくいっておられないと、お聞きしました」
「誰がそんなことを」
「女仙《にょせん》たちが、そう──」
 景麒は息をつく。
 景王は完全に政務を放擲《ほうてき》している。要石を失って、国政は大きく乱れるきざしを見せていた。諸侯は王を軽んじ、官吏は専横する。
「わたしは御前《ごぜん》を離れず、詔命《しょうめい》に背《そむ》かぬという誓約をしました。たとえ王がどこへ向かわれようと、ついてくるなと命じられぬかぎり、お供をする所存です」
 ──ただ、それにどれだけの苦しみを伴《ともな》うか、それだけの問題だと思っている。
 泰麒は深い色の瞳《ひとみ》でじっと景麒を見返し、やがて目を伏せた。
「……そんなふうに言い切れたらどんなにいいでしょう」
「泰麒は後悔しておいでか?」
 淡々と問われて、泰麒は少し迷った。
「……はい」
 景麒は首をかしげただけで、なにも言わずどんな表情も見せなかった。
 それでもう、泰麒には口を閉ざしていることができなかった。
「ぼくは、とりかえしのつかないことをしました」
 景麒は無言で続く言葉を待つ。
「これほどの裏切りはありません」
 小さな麒麟は目を上げた。必死の色が浮かんでいた。
「……王には……天啓《てんけい》がなかったのです」
 愕然《がくぜん》とした。
 それは景麒の想像をはるかに超《こ》えた告白だった。
「天啓が……ない?」
 泰麒はうなずく。
「なんの啓示もありませんでした。王気も見えませんでした。ぼくは一度、ご無事で、と申しあげました──」
「……なぜ」
「ぼくはただ……驍宗さまがお帰りになるのが嫌《いや》だったんです」
 伏せた目を上げて、子供は景麒を見上げる。
「どう……すればいいんでしょう」
 景麒の膝《ひざ》をつかんだ手が震《ふる》えていた。
「どうすれば、この過《あやま》ちをただすことができますか? どう償《つぐな》えばいいんでしょうか」
「……泰麒」
「全部が嘘なんです。どうなりますか? 戴は滅《ほろ》びますか? 王は罰されるのでしょうか? もしもこれを知ったら、天は、民はどうするのでしょう」
 点々と涙をこぼす。
 景麒は口を開きかけ、けっきょく閉ざした。膝をつかんだ小さな手を軽く叩《たた》き、そうして立ち上がる。
 四阿《あずまや》の床に座って見上げてくる泰麒に一礼をした。
「わたしはなにも申しあげますまい。……今日のところは、おいとま申しあげます」
 
 四阿のすみで膝を抱えて、泰麒は金色の髪が遠ざかっていくのを見ていた。
 景麒はさぞかし軽蔑《けいべつ》しただろう。二度と会ってはもらえないかもしれない。
 噂になるだろうか。泰麒の欺瞞《ぎまん》はばれるだろうか。
 ──驍宗は泰麒の裏切りをどう受けとめるだろうか。
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