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十二国記372

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示:「そんじゃ、行こうか」 楽俊《らくしゅん》に促《うなが》されて、祥瓊《しょうけい》はおとなしく荷を抱えた。 昨夜、泣き伏
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「そんじゃ、行こうか」
 楽俊《らくしゅん》に促《うなが》されて、祥瓊《しょうけい》はおとなしく荷を抱えた。
 昨夜、泣き伏した祥瓊を置いて席を外した彼は、結局そのまま戻ってこなかった。今朝になって泣き疲れて寝入っていたのを起こされ、冷えきった身体を食堂の粥《かゆ》で温めて、祥瓊たちは宿を出た。楽俊はなにも言わなかったので、祥瓊もなにも言わなかった。
 祥瓊たちは歩いて街を出、東へと向かった。柳《りゅう》は芳《ほう》に比べ、雪が少ない。そのかわり刺すような冷気が風になって吹いた。最も寒い季節になっていた。毛織物の肩布で鼻までを覆《おお》って歩かないと鼻先にはごく小さな氷柱が下がる。同じようにして髪を布で覆っていないと、髪までが凍《こお》った。旅人の多くは馬車を使う。厚い蔽《ほろ》をかけた荷台に藁《わら》と布を敷き詰め、火桶《ひおけ》を入れ、乗り合わせた客同士の体温で暖を取るものだ。近郊の農家の者が農閑期に荷馬車を使ってする商売だった。芳にも同じような制度があった。故国では馬車ではなく、馬橇《ばそり》だったけれども。
「——あんたたちはどこから来たの?」
 乗り合わせた客は女子供、老人が多い。健康な男は街道を歩く。その客のうち、祥瓊の隣に座った女が訊《き》いてきた。
 祥瓊は懐《ふところ》深く釿婆子《おんじゃく》を抱き寄せながら、芳、と答えた。釿婆子は金属でできた丸みのある箱、中に湯を入れる湯婆子《ゆたんぽ》に対して、炭を入れる。表面には小さな窪《くぼ》みが無数についている。その窪みの底に小さな穴があけてあり、釿婆子の中には石綿が敷いてあった。この平たい釿婆子を首から提《さ》げて、冬の旅人は街道をゆくのだ。
「芳も大変だねえ。王さまが斃《たお》れて」
「ええ……」
 厚い蔽に覆われた荷台は暗く、明かりがひとつ提がっている。
「——小童《ぼうや》はどこから?」
 女が楽俊に問いかけて、祥瓊は掻《か》き合わせた肩布の下で苦笑した。
「おいら、生まれは巧《こう》だ」
「あらまあ。巧の王さまが去年亡くなったんだって? ……三年前に芳で、一昨年には慶《けい》の王さまが死んで、戴《たい》はあの状態だし。このところ、落ちつかないことだわねえ」
「柳はいいなあ。ずいぶん長命の王だから」
 そうねえ、と女は笑った。
「雁《えん》には遠く及ばないけど。芳や巧よりもずっと長いから、まあ恵まれているわねえ」
 そのわりに、と祥瓊は街道の風景を思い出した。もっと豊かな国だろうと思っていたのに、風景は想像以上に寒々としていた。あまり高い建物もなく、地にしがみつくようにして街は広がっている。
 祥瓊がそう口をはさむと、女はもちろん、他の乗客たちも笑った。
「柳の家はね、地下にあるのさ。——冬は暖かいし、夏には涼しいから人はどんどん地下に潜《もぐ》る。だからどの家でも上より下が大きいのさ」
 雨の多い北東部や虚海《きょかい》沿岸を除き、柳の家は地下室が大きいのだと女は言う。寒冷のためにこれといった産業に恵まれない国だが、石材は豊富にある。石を切り出し、地下に家を造り、地下では地下室同士が繋《つな》がって、小さな街路を作っている場所もあるという。
「へえ……」
 祥瓊は他国のことをほとんど知らない。芳《ほう》を出たこともなかった。他国の者との付き合いもなく、宮中はほぼ自国のことだけで閉塞《へいそく》している。特に他国に興味を持ったこともなかったので、地下街の話はひどくもの珍しかった。
「空気が悪くならないのかしら。においが籠《こ》もったりしない?」
「ちゃんと換気ができるからね」
「でも、陽《ひ》は射さないでしょ? 真っ暗じゃないの?」
「天井《てんせい》があるよ。柳《りゅう》じゃ家の院子《なかにわ》が地下まで縦穴みたいに続いてる。光はそこから入ってくるから、少しも暗くなんかないね。天井のまわりの房間《へや》は気持ちいいよ」
「でも、街は?」
「街も同じだ。——見たことがないかい? 大きな街じゃ、広途《おおどおり》の真ん中に細長い建物がある」
 祥瓊はそれを思い出した。広途の中央に、まるで厩《うまや》のような建物が細長く続いていて、建物にしては屋根がない。なんだろうかと思っていた。
「ああ——あれが、天井? でも、雨は? 水が溜《た》まったりしない?」
 女は笑った。
「そこは雨が少ないから」
 なるほど、と祥瓊はうなずく。隣の楽俊を見やった。
「宿には地下はなかったわよね? それとも探せば地下に房間のある宿があるのかしら」
「地下は人を泊めるとこじゃなくて、宿の者が住むところだな。柳じゃ地下が広いほど、うんと税を取られる。商売なんかするとさらに税がかかって莫大《ばくだい》になるんだ。だから」
 女はにっこりと目を細めた。
「小童《ぼうや》、詳《くわ》しいねえ」
 楽俊は決まり悪げに耳の下を掻《か》いた。女はその表情には気づかない様子で笑顔を見せる。
「柳はいいところだよ。そりゃあ麦のできは悪いけど、鉱山と石と玉泉《ぎょくせん》、あとは材木かね。たっぷり恵みを落としてくれる」
「芳にも鉱山はあったわ。——柳では家畜は飼わないの?」
「飼うけどね。いい莨《まぐさ》が少ないからねえ。芳にはいい馬がいるんだって?」
「あとは牛と羊かしら。たくさんいたわ」
「柳でも飼うけど、多くないね。夏に莨が伸びないからね。——それでもまあ、あたしたちは恵まれてる。王もとてもいい方だし、そりゃあ、冬は厳しいけど」
「本当に寒いんで、驚いた」
「戴《たい》に比べればましらしいけどね。戴じゃ夜、外に出ると鼻の中まで凍《こお》るというから。昼間でも鼻をこすっていないと、凍傷になるんだってさ」
「へえ……」
 祥瓊は少し息を吐《は》く。
「いろんな国があるのね。……知らなかった」
 どこも芳《ほお》のようだと思っていた。冬には雪に閉ざされ、夏には牧草が緑の海を作るものだと。
「本当にねえ。——南の国じゃ、冬でも外で寝られるっていうじゃないか。麦だって二度も取れるんだって?」
 女が楽俊を見て、楽俊は小さな手を振った。
「麦は二度取れるけど、冬に外に寝るわけにゃいかねえよ。奏国《そうこく》のうんと南なら大丈夫かもしれねえけど」
 祥瓊はぽつりとこぼす。
「慶《けい》の冬も暖かいかしら……」
「どうだろうねえ」
 言って女は息を吐く。
「慶は新しい王さまが登極《とうきょく》なすったんだってねえ。早く国が落ちつくといいけど」
 祥瓊はこれには答えなかった。
「国が荒れると辛《つら》いだろうよ。戴の荒民《なんみん》はみんな辛そうだ。家が焼けたら、冬にはもう凍《こご》え死ぬしかないからねえ」
「そうね……」
「戴がすっかり荒れたんで、近頃では柳《りゅう》にまで妖魔《ようま》が出る。——あたしは遭《あ》ったことはないけど、そういう噂《うわさ》だ」
 祥瓊は思わず楽俊の顔を見る。
「——おまけに近頃、天候も落ちつかないしね。こないだ北のほうで大雪が降ったそうだよ。小さい里《まち》が閉じこめられて、飢《う》え死《じ》にしようかって騒ぎだったらしいからねえ。——いい王さまなのに、どうしてだろうね」
 馬車がきしんだ。祥瓊はその音をこの国のきしみのように感じた。国は上から順に荒れていくのだ。県正《けんせい》があれだけ腐敗していれば、上の腐敗はそれ以上だろう。本当にこの国は傾こうとしているのかもしれない。
 王が玉座《ぎょくざ》にいなければ国は荒れる。天災が続く、妖魔が跋扈《ばっこ》する。火災や水害で家を失えば、人は冬に生きる術《すべ》を失う。——祥瓊は里家《りけ》の寒い冬を思い出した。夏の気候がましでも、実った麦を蝗《いなご》が襲えば民は食べるものを失う。冷害と水害、どれも飢えに直結していた。
 ——芳《ほう》もそんなふうに荒れてしまうんだろうか。
 祥瓊はそれを思う。——やっと、思った。
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