春先を過ぎると「お友達がいないんです。どうすればいいでしょう」という悩みの相談がよくきます。四月になってクラス替えなどで環境が変化し、知らない人達の中でボォーッとしているといつのまにかグループが出来ていて、気がつけば一人ぼっち。初夏になると殆《ほとん》どはこの悩みから解放されて、遅蒔きながらお友達と楽しい夏休みを過ごせてしまうものですが、中にはこの季節になってもお友達の出来ない人もいます。こういう人はもう諦めるしかありません。一人で強く生きていくのです。
乙女にお友達なんていりません。乙女は気高く孤高なものなのです。男のコのヒーローは徒党を組んで行動します。トム・ソーヤにはハックル・ベリー、ゲッターロボは三人で合体、『十五少年漂流記』なんて十五人もいなけりゃ一人前じゃないんです。だけども少女は違います。アリスは一人で不思議の国を冒険するし、安寿は弟の厨子王を山椒大夫から逃がして自分は一人残ります。メグちゃんだって「何でも出来ると人はいうけれど/魔女っ子メグは一人ぼっち」って歌っています。乙女とは「絶対的存在」です。「絶対」とは他とは比較することの出来ない「唯一性」のものなのですから、仲間なんていらないのです。ヤクザ映画の健さんのように、乙女はカッコよく孤独です。「心を開けば友達は出来る」なんていいますが、他人に心を開くなんて勿体なくて出来ません。キラキラ輝く乙女の宝石は、滅多やたらに人に見せるものではないのです。
触れれば壊れそうな硝子細工に固い殻を被り凜《りん》として立つ乙女、みつあみを固く結び一人彼方を見つめる少女の何と可憐なことでしょう。無理に世俗に迎合する必要なんてありません。「高慢な子」「陰気な子」といわれても平気です。一人でランチをとるのが耐えられないから作るお友達なんて、バカみたいですもの。お蝶夫人のようにゴージャスに貴族、孤独は女王様にはつきものです。僕だって、テレビと観葉植物が親友です。