乙女の究極の目標とは何でございましょう。アハハ、それはやっぱり結婚(ゴシック体で)に尽きますね。
しかし、結婚するからには旦那様に身も心も捧げ、永遠の忠誠を誓う下僕になりたいものです。朝から晩まで旦那様一人のことを考え、夢の中でも一緒、時々は不安になって会社に電話を掛け彼がこの世に存在するかどうかを確かめてみたりして、無理矢理不味い愛妻弁当を持たせてあげるのです。彼が嫌だといっても承知しません。だって貴方は彼の妻、彼の従順な奴隷なのですもの、お弁当を作るのは当然の義務(またもやゴシック体で)ではありませんか。嗚呼、めくるめく新婚生活。親と同居はいけません。結婚したからには彼は貴方だけのもの、お母様なんて半径三メートル以上近づける必要なんてあるものですか。彼のお友達からの電話は取り次がない、手紙は破って捨てる、テレビの女優を熱心に観ていると思ったなら泣き叫ぶ。これは妻として当然の権利です。そして、一生、変わらぬ愛情を互いに抱き続けなければならないのです。以上のことに自信が持てないならば、結婚なんてする必要がありません。だって別にする必要がない契約を神様の前でわざわざ交わすのです。これくらいの覚悟がなければ意味ないではありませんか。
ですから、結婚相手は慎重に慎重を重ね、充分に吟味し、完璧な王子様を手に入れる必要があります。昔から結婚相手は好きというだけで選んではならないといいますが、それは完全無欠の相手を探せという意味なのです。よくこの意味を取り違え、理想の人はカッコ良くてお金持ちで頭が良くて……と云っていた人が、不細工で貧乏でおバカさんな人と結婚してしまい「理想とはほど遠かったけど彼の優しさに感じ入りました」などと仰せになりますが、こんな愚の骨頂はありません。自分の大切な一生を優しさなんて安易な感情に捧げられるもんですか。挫折した自分を正当化するにも程があります。
さぁ、誇り高き乙女よ。結婚とは人生を賭けて大いなる野望を成就させる最大のイベントです。妥協は赦されません。玉姫殿のゴンドラの上で勝利の雄叫びをあげようではありませんか! ウェディングドレスを革命の血で染めましょう。世界で一番、幸せになるのです。