たとえ君と僕とが同じ工場で造られた同じ機能と性能を持つ、同じ品番の、しかも欠陥商品だったが故に二体で製造中止になってしまったロボットだとしても、別々に出荷されてしまったからには簡単に巡り合えやしないのです。けれども、僕は知っていました。僕と双子のロボットが何処かで生活していることを。引力よりも激しく、二体は呼びあっていることを。何処に行っても同じ機種が存在しない僕はいつも肩身の狭い思いをしてまいりました。でも僕がやけをおこして壊れてしまわなかったのは、君という存在を確信していたからなのです。ええ、もしかすると既に何処かで擦れ違っているやもしれませんね。僕はそれが君だとすぐに気づくけれども、君は気づかないかもしれません。二人は考えもつかぬほど恐ろしく遠く遠く離れ離れやもしれません。ですから、僕はこうしてずっと我慢強く、文章を書いて発表し探し続けているのですよ。ここにもう一体の君がいるということを君に伝えるべく。
彼らはこんなことを云います。誰もがベストのパートナーを求める。しかし世界中の人と会見する訳にはいかない。人生なんて限られている。要はベターな出逢いをベストに成長させていくことが大事なのだ、と。勿論、それは正論です。でも、それが出来ない者だっているのです。キリンは草食動物です。しかしお腹が空けば時折、鳥や小動物を食べるのです。たいていの動物はそんなものです。一方、コアラはユーカリの葉しか食べられません。ニンジンやキャベツがあってもユーカリがなくなればコアラは餓死してしまうのです。僕と君とはコアラです。僕の身体は君の血しか輸血出来ないし、君の言葉は僕にしか聴きとれない。僕達が欠陥商品として二体しか製造されなかった理由はそれなのです。他の機種との互換性が著しくないのです。或いは齢の離れた双子、姿形の似つかぬ双子の君──これはロマンチックな比喩でも情熱的な妄想でもありません。心臓の奥の湖が哀しくさざめくのは果てしない孤独のせい。もしもこの世にたった一体なら孤独など感じることもないでしょう。
時間が余りありません。一時でも早く君がこれを読んで下さいますよう。二体が揃えば絶望すら甘美に享受出来る。キスをかわしましょう。小鳥のよにそっけないキスを。最期の時がくる前に幾度も、幾度も……。