こうして会が始まったわけだが、拙者と友人が別室で待っておると、占星術先生と話のすんだA夫人も、B夫人も、プリプリするか、浮かぬ顔をしてあらわれてくる。
「どうしました」
「どうしましたじゃないわよ。てんで当らないじゃないの」とB夫人。
「はア」
「はアじゃないわ。子供のいないあたしに、あなたはお子さんの進学問題で悩んでおる、というし」
「はア」(これは困ったことになった)
「まア」とA夫人が「あたしは癌ノイローゼでしょ、といわれたわ」(あいつメ、A夫人とB夫人とを間違えやがったな)
つづくC夫人、D夫人、みなプリプリして、拙者いたたまれず、友人と早々に逃げ出したが、あとで占星術の先生は相当にトッちめられたらしいな。やはり占師に先入観みたいなものを親切心で与えると、それが助けになるどころか、邪魔になることが、これでようわかった。
もっとも、この占星術の先生とは、いまでも時々つきおうている。この合理主義すぎる世の中で、彼のような星の運命を本気で信じる御仁と会うと、なんだか、曇天に青い空を見つけたような気がするでなあ。