妖艶な外観をしているが話しているうちに意外に女らしさを感じたのは瑳峨三智子さんである。ミーハーの一人である私と彼女との対談の一部を抜すいするので読者もそれを感じて頂きたい。
遠藤「一般のファンには女優さんがイワシ食べるのもふしぎな気がするミーハー的気持があります」
瑳峨「どうしてイワシ食べるのがふしぎなんですの」
遠藤「もったいない。おそれ多い。女房がイワシ食べてるのはいいが、あなたがイワシたべるのはふしぎだ」
瑳峨「わたしイワシ好きです」
遠藤「わからないかなあ。一般のファンにはねえ、あなたがたが便所に行くことさえふしぎな気持がするものなんです」
瑳峨「便所で出さなかったら、どこへ行くでしょう」
遠藤「ファンにとってはあなた方が出すということが、あり得べからざることです」
瑳峨「そんなの困りますよ。分りません」
遠藤「それ分りませんかなあ。そうかなあ」
瑳峨「そうですよ」
遠藤「ぼくの家に、ある有名な女優さんが遊びに来てトイレを使ったのでぼくはトイレに貼紙をしました。『このトイレはもったいなくも女優の××さんが御使用されました。皆さん、慎んで使って下さい』。家人にも大切に使用するよう命じてあります」
瑳峨「へーえ」(キョトンとした表情)
遠藤「しかし家に来る若い者の十人中、三人ぐらいはこの便所を使って『ぼ、ぼく、光栄でしたッ』と言っていますよ。もっとも、そういうことを言う奴は話せるけど、出世しないねえ」
瑳峨「はア」(浮かぬ顔)
遠藤「ところで瑳峨さんは道でトイレに行きたくなったらどうします」
瑳峨「行きません。女優って商売をしていると行かないという訓練ではなく行けないという習慣が身につくんです。だから水分もあまり採りません」
遠藤「体が悪くならないかなア。しかしそれでは便所に行かれた時、すごいでしょう」
瑳峨「出ますねえ。生きているってことを痛感いたします」
遠藤「いい話だなあ。あなたのお話で多くのファンも、女優また人間であると認識したでしょう。有難うございました」