女友達が浮かぬ顔をしている。どうしたのかと聞いたら、彼女はため息まじりに話し始めた。
「彼が私の誕生日を忘れていたのよ。別にプレゼントを催促する気じゃなかったの。ただ、覚えていてくれたら嬉しいなァって思ってたけど、遠回しに匂わせるみたら「アツ」って思い出してくれて「何かプレゼントするよ」って言うの」
「なら問題ないじゃない」
「大ありよ。その後なんて言ったと思う?」
「さあ??????」
「何でも好きな物買っとけよ、後で金渡すからだって」
私はしばらく息ができないほど笑い、涙でアイラインがとけてタヌキになっていた。いかにも男の人が言いそうなセリフである。これは女の脚本家が机でひねり出そうとしても書けるセリフではない。
女はプレゼントも欲しいけれど、やっぱり彼の心が欲しいのである。誕生日や結婚記念日を覚えていてくれて、忙しい合間に彼が自分で選んだ何かがほしいのである。それは多少センスが合わなくても、高価なものでなくてもいい。女が自分一人で好きな物を買い、後で、
「消費税込みで二万三千五百六十円だったわ」
とレシートを渡し、彼が二万四千円出して、
「ホラ、釣りはいらないよ」
では多くの女は悲しくなるはずである。
逆にプレゼントに頬をゆるめていた女友達もいる、彼女はきれいな小さなイヤリングを見せてくれた。
「出張の帰りにね、飛行機に乗る寸前に空港の売店で買ったんだって。やっと東京に戻れると思ったとたんに私のこと思い出したんだって」
心が緩むと同時に彼女を思い出した、という言葉に加えて、空港の売店に駆け込んだ彼の姿がダブルからそのイヤリングは三倍輝く。
プレゼントにはやっぱり「甘さ」が欲しい。