みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。
人はわがはいの事を『カモ狩りの名人』と言うが、それにはこんなわけがある。
ある日の事、明くる日のパーティーに大勢のお客を呼んでいるわがはいは、狩りに出かけて料理に出す獲物をたくさんしとめた。
その帰り道、わがはいは湖にたくさんのカモが泳いでいるのを見つけたのだ。
「よし、明日の料理のメインは、カモ料理にしよう」
わがはいはさっそく鉄砲を構えたが、なんと言うことか、先ほどの狩りで鉄砲の玉は全て撃ちつくし、一発も残っていなかった。
「うーん、これだけのカモをみすみす見逃すのもな。・・・そうだ、良い物がある」
わがはいは弁当の残りに、ハムのあぶらみがある事を思い出した。
わがはいは犬のつなをほどいて細長いひもを作り、それにあぶらみをくくりつけた。
そしてあぶらみをつけたひものはしを湖に投げ込むと、アシのしげみに隠れて様子をうかがった。
「よしよし、来たぞ、来たぞ!」
やがてカモがやって来て、ハムのあぶらみをパクリと飲み込んだ。
ここで一つ、良い事を教えてやろう。
ハムのあぶらみは消化が悪いので、カモが飲み込んでもすぐにお尻から出てくるのじゃ。
こうしてカモのお尻から出てきたハムのあぶらみを、後ろにいた別のカモが飲み込んだ。
そして二番目のカモのお尻からあぶらみが出てくると、それを三番目のカモが飲み込み、四番目、五番目と次々と飲み込んで、とうとう湖にいた百羽のカモ全部がひもにつながったのじゃ。
「これは、大量じゃ!」
わがはいはカモが飲み込んだひもを体にグルグルと六回まきつけると、そのまま家に帰ろうとした。
ところがカモたちが勢い良くはばたいたので、わがはいはカモたちと一緒に大空高くまい上がったのだ。
だが、わがはいは少しもあわてず、上着のすそを広げてかじを取ると、カモたちをうまく我が家の方へ飛ぶように調整した。
だが、このままでは家に降りる事が出来ず、カモと一緒に飛び続けなければならない。
そこでわがはいはつなを引き寄せると、カモの頭を次々となでてやった。
カモという生き物は、頭をなでてやるとおとなしくなる。
おとなしくなったカモが多くなると、カモたちはわがはいの体重をささえることが出来ずにフワリフワリと下りはじめたのじゃ。
そしてそのままわがはいはカモたちを誘導して、屋根のえんとつから家へと入ったのだ。
それからというもの、わがはいは『カモ狩りの名人』と呼ばれるようになった。
『頭を使えば、鉄砲の玉がなくても狩りは出来る』
これが、今日の教訓だ。
もっとも、鉄砲の玉を多く持って行く方が簡単だが。
では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。