その村では初めの日に小麦粉が降ってくると、その次の日は、お砂糖がたくさん降ってくるのです。
お砂糖と小麦粉がかわりばんこに空から降ってくる、そんな日が十日も十五日も続くのです。
「やあ、今年も降ってきたぞ、白い粉が」
小麦粉の白い粉が降り出すと、村の人たちはおけや水がめや、そのほかいろんな入れ物を持ち出してせっせと粉を集めます。
そしてそれを袋に入れて、大きな蔵にいっぱい粉の入った袋をつめこみます。
「やあ、今日は甘い砂糖だぞ」
お砂糖も小麦粉と同じで、砂や土がまじらないように、きれいに集めておきます。
こうして一年分のお砂糖と小麦粉をたくわえてしまうと、村の人たちは遊んで暮らせばいいのです。
「やあ、けっこう、けっこう。今年も働かなくていいわけだ」
「ほんとうに、ありがたいねえ。毎日寝ころがっていればいいんだから」
この村の人たちは、ほかの村のように、畑をたがやして麦やマメをつくろうとしません。
お腹が空いたら、おだんごや砂糖がしをつくって食ベればいいわけですから。
ところが、前の年の小麦粉やお砂糖が蔵にたくさん残っているうえに、今年の分が集まるものですから、入れる所がなくてはみ出してしまいます。
そうなると村の人たちの心の中にありがたいという気持ちはすっかりなくなって、小麦粉やお砂糖をそまつにするようになりました。
子どもたちまで小麦粉をおだんごにして石のように投げてみたり、池にお砂糖を流して遊んだりしました。
やがて、今年も冬がやってきました。
けれども村の人たちは、空からの贈り物を待ってはいません。
もうあり余るほど、前の年の分が残っていたからです。
そのうちに、また白い粉が降ってきました。
みるみるうちに、あたり一面まっ白につもりました。
その時、外で遊んでいた子どもたちがさけびました。
「あれー! 砂糖じゃないぞー!」
「小麦粉でもないぞー!」
「冷たい、冷たい、冷たい!」
「口の中へ入れたら、とけてなくなるよー!」
それを聞いて、大人たちも外へ飛び出してきました。
「本当だ。冷たくて、口に入れるととけてしまうぞ!」
空から降ってきた白い粉、それはふつうの雪だったのです。
そしてその次の年も、また次の年も、お砂糖や小麦粉は降ってきませんでした。
やがてたくわえてあったお砂糖や小麦粉もついになくなり、すっかりなまけ者になってしまった人たちは、大変困ったという事です。